第35話 アンタの従兄弟って膳所高やんな?

文字数 1,338文字

※本話には私の個人的な意見が含まれます。全ての京都府民、滋賀県民、大津市民がそう思っているわけではありませんのでご了承ください。

「アンタの従兄弟って膳所高やんな?」

妻が私に言った。手には『成瀬は……』を持っている。

意味が分かった。
成瀬は大津の膳所高に通っていた。

ちなみに、膳所(ぜぜ)高とは滋賀県立膳所高等学校のことだ。

私は従兄弟がどこの高校を出ているのかを知らない。というより、あまり興味がない。
「へー、そうなん?」
「そうやって! 前にチェホンマンが言ってたでー」

チェホンマンとは滋賀県大津市出身の私の従兄弟のことだ。
年齢を正確に覚えていないけど、私よりも10歳くらい下だったと思う。

叔父の家(大船)で飲んでいた時に寝てしまい、チェホンマンが負ぶって電車に乗せてくれた。
※ややこしいのだが、チェホンマンは大船の叔父の息子ではない。

身長は190センチくらいあって、学生時代にアメフトをやっていたからガタイがいい。
だから、うちの妻は彼のことをチェホンマンと呼んでいる。

ちなみに、うちの妻も滋賀出身。
大津市ではなく高島市(以前は高島町だった)の出身だ。
だから、滋賀県の高校については私よりも詳しい。

私は「滋賀の話で良かったやん!」と『成瀬は……』を読んでいる妻に言った。
妻は「そやな」とだけ言った。

当然喜ぶだろうと思っていたのに意外な反応だ。私は妻に尋ねた。

「嬉しくないん?」
「滋賀っていうか……大津やん」

私は理解した。
妻は、滋賀の話ではあるものの実際には大津の話であることが気にくわないのだ。

どういうことか説明しよう。

まず、この話を理解するためには「京都と滋賀の関係性」から説明しなければならない。

この地図を見てほしい。




古都である京都は滋賀県の隣にある。
地理的に近いにも関わらず、京都と滋賀には大きな隔たりがある。

・京都人は滋賀を「ゲジゲジ」と呼ぶ
・京都人は滋賀県人をバカにしている
・滋賀県人は京都人にバカにされて悔しいから「琵琶湖の水止めたろか!」となる

※滋賀の「滋」の字が「ゲジゲジ」を連想させるから

滋賀県人は京都人にバカにされるから、京都人のいる飲み会には行きたくない。
滋賀県人は京都人に「出身どこ?」と聞かれたら滋賀であることを隠そうとする。

つまり、京都と滋賀の力関係からいえば京都の力が圧倒的に強いのだ。

次に、京都市と大津市の位置関係を見てほしい。
JR京都駅とJR大津駅は琵琶湖線で9分だ。ほぼ近所と言ってもいい位置関係にある。

つまり、京都には頭が上がらない滋賀ではあるが、滋賀の中では大津市が最強なのだ。

理由は大津市が京都に近いから。
ジャイアンの威を借るスネ夫をイメージすると理解しやすいだろう。

だから、滋賀県人の集まりにおいて大津市民(スネ夫)は他の市民(のび太)をバカにする。

高島市は大津市から北に位置しており、滋賀の中でも京都から遠い部類に入る。
高島市民は大津市民からバカにされるのだ。

うちの妻は滋賀県高島市の出身だ。

つまり、うちの妻は京都人が嫌いだ。
そして、大津市民も嫌いだ。

だから、うちの妻は『成瀬は……』を複雑な気分で読んでいる。
難しいものである。

頑張れ、自称ユーチューバー!
京都人、大津市民を見返すため!

我が家の戦いは今日も続くのであった。

<つづく>
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