第23話 アイヌ語のフィールドワーク
文字数 759文字
「雪が降って、その後晴れたある日に、セレブロさんが雪の女王みたいに現れたんです」
と中川先生は説明してくれた。セレブロは話した。
「ちょっと昔のロシア帝国から、フィンランドの言語学者とその助手が、ことばを旅しています。彼らはシベリアの先住民族チュクチのチュクチ語から始めて、アラスカのユピックエスキモー語を訪ねました。それからカナダのイヌクティトゥット語とグリーンランドのカラーリット語の話者に会っています。その弧は、西で北海道に繋がっていると思ったのです」
「セレブロさんの話を聞いて、僕はあなた方二人をお迎えすることにしました。ようこそ北海道へ、ようこそ日本へ」
彼らは温かいジンギスカン鍋を囲んでいた。
「お忙しい中、突然の訪問をお受けいただきありがとうございます」
ネストリ・ミクライネンは言った。スヴェン・イルマリネンも黙って頭を下げた。
「いえいえ、僕はまだ駆け出しの若造で、そんなに忙しくないんです。将来は忙しくなるかも知れませんが…」
白いアノラックを脱ぐと、白い半袖Tシャツの中川先生は答えた。
「それより今夜はジンギスカンをどんどん召し上がってください。明日から北海道内のアイヌ語話者にご紹介しますから」