最終話:未来シナリオと対策

文字数 1,834文字

 しかし、何も対策をせずに温室効果ガスを増加させるなど最悪のシナリオの場合にはさらに悪い結果が待っている。最も気温の上昇率が高い予測では、2040年までに1.9℃、2060年までには3.0℃、2100年には5.7℃上昇すると考えられており、もし現実となった場合は現在のような生活はできないだろう。そのため、SDGs13の達成は最低限であり、より早い課題の解決が求められている。

 SDGs13の目標達成に向けて、国際社会でも気候変動やその影響を軽減するための取り組みが行われている。国際社会の代表的な取り組みは、COP21でパリ協定が採択された事。COP21は、2015年にフランスのパリで開催された「気候変動枠組条約第21回締約国会議」のことである。

 この会議は、2020年以降の温暖化対策の枠組みを、すべての国連加盟国の合意のもとにつくることが目的で開催された。すべての国が参加したのは歴史上はじめてのことで、公平な合意が得られた会議である。そして、パリ協定が採択されて2016年に発効された。現在のパリ協定の概要には、以下のような内容が定められている。

1つ、すべての国の長期目標として、気温上昇は2℃より低く保つことを目指し、1.5℃に抑える努力を追求すること。
2つ、すべての国が、温室効果ガスの削減目標を5年ごとに提出し、目標を更新すること。
3つ、先進国による資金提供に加えて、途上国も自主的に資金を提供すること。
4つ、途上国と協力し合う「二国間クレジット制度『JCM』」も含めて市場メカニズムを活用すること。

 気候変動に対する日本の取り組みとしては、日本では、地球温暖化対策を総合的かつ計画的に推進するために「地球温暖化対策計画」が閣議決定され、それに基づく取り組みが行われている。「地球温暖化対策計画」における具体的な取り組みと目標は以下のとおりだ。

2030年時点で温室効果ガスの46%減「2013年比」を目指す。まず2030年度までの目標として、温室効果ガスを46%削減2013年度比」すること、さらに50%削減を目指して挑戦を続けていくことが定められた。これを中間的な目標とし、2050年までに温室効果ガスの排出ゼロを目指すのが最終的な目標である。つまり、「2050年カーボンニュートラル」の実現を目指している。

 日本では、「2050年カーボンニュートラル」の実現と2030年度温室効果ガス46%削減の目標達成に向けて部門別に対策を策定し、実施している。部門別の取り組みの実績と2030年削減目標を見ていく。産業部門では、日本国内の温室効果ガス排出量の約30%を占めている。産業部門では、2030年度までに温室効果ガスの排出量を38%削減「2013年度比」することを目標にしている。

 2013年度から2019年度までの6年間で産業部門は二酸化炭素の排出量を約10.9%削減させた。業務その他部門の温室効果ガス排出量は、2030年度までに51%削減「2013年度比」することを目標としている。電力消費にともなう二酸化炭素の排出量の減少、省エネの促進によるエネルギー消費量の削減などにより2019年度における二酸化炭素の排出量は2013年度比で18.8%減少した。

 とはいえ、目標達成に向けてさらなる努力が必要とされている。そのため、地球温暖化対策推進法や省エネ法、低炭素社会実行計画などに基づいた対策を進めている。家庭部門では2030年度までに温室効果ガス排出量を66%削減「2013年度」することを目指している。家庭部門の2019年度の二酸化炭素排出量は2013年度と比較して23.3%減少した。

 家庭部門における二酸化炭素排出量の約67%は電力由来であることから、電力分野におけるさらなる脱炭素化が求められる。加えて、家庭で使用する機器のエネルギー効率化、ライフスタイルにおける省エネ対策を行っていくことが大切だ。運輸部門においては温室効果ガス排出量を2030年度までに35%削減「2013年度比」することを目標としている。

 2013年度から2019年度までの6年間で運輸部門では、二酸化炭素の排出量8.2%減少を実現させた。エネルギー転換部門における目標は、2030年度までに温室効果ガス排出量を47%削減「2013年度比」することだ。エネルギー転換部門の2019年度二酸化炭素排出量は2013年度と比較して15.9%の減少を実現させている。「完結」
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