第７話：引越しと京都議定書

　こうして５月中に和泉智則が引っ越して、古い畳の一部を交換し家具も購入し、いつでも入居できるようにした。そして５月３０日、奥さんと子供達が和泉一家の３ＤＫの借家に帰ってきた。その後、長男に和泉和彦、次男に和泉真二と名付けた。そして、彼女の母が奥さんと子供達の面倒を見てくれ、和泉は、金沢農協で働きに出かけた。

　１２月６日、乱脈経営で破たんした東京協和、安全両信用組合の不正融資に絡み、東京地検が山口敏夫元労相を背任容疑で逮捕した。１９９６年が明けると２月１４日、将棋の羽生善治名人が谷川浩司王将からタイトルを奪取した。こうして、史上初の7冠独占を達成した。４月1日、東京三菱銀行が発足した。

　６月１８日、住専処理のため６８５０億円の財政支出を実行に移す住専処理法と金融４法が参院本会議で成立した。１１月２１日、大蔵省が多額の債務超過に陥った阪和銀行「和歌山市」に業務停止を命令した。銀行への業務停止命令は戦後初めてだった。１９９７年が明けると３月６日、野村証券が総会屋親族企業への利益提供を認めた。３月１４日、野村証券の酒巻英雄社長が辞任した。

　その後、５月３０日、酒巻前社長を逮捕。４月２５日、大蔵省が日産生命保険に業務停止を命令した。生保の経営破たんは初めてであった。７月１日、香港が英国から中国に返還される。１１月１７日、北海道拓殖銀行が営業権を北洋銀行に譲渡すると発表した。これが都銀初の経営破たんとなった。

　１１月２４日、農協に就職の時、世話になった鮫島勘吉が和泉智則の勤める横浜市の金沢農協に会議のためやってきた。そして、挨拶すると和泉に１９９７年１２月の京都で開催された気候変動枠組条約第３回締約国会議「ＣＯＰ３、京都会議」出てくれないと言われた。なぜですかと聞くと鮫島さんの体調が悪く、とても出張に出られないと言った。

　鮫島さんは、さらに「ＣＯＰ３、京都会議」での感想文を書いて私のところへ送って欲しいと言われた。あまりに突然のことに驚き、和泉智則が僕なんかで良いのですかと聞き返した。すると、特に要人に面会することもないし、会議の内容と感想だけ書いて提出するだけさと言われ、和泉は、世話になっているので了解した。

　会議で採択された京都議定書で先進国に２００８～２０１２年までに二酸化炭素「ＣＯ２］を中心とした温室効果ガスの排出量を全体で１９９０年比５.２％減ことを定めた「先進各国の目標は日本６％、アメリカ合衆国７％、ＥＵ８％など」が発展途上国には排出量の削減を求めていなかった。この会議では２０００年代最初の１０年「２０００～２００９年」は１９９０年代よりさらに温暖だったことが判明。

　２００９年は北米を除く全大陸で通常より気温が高く、南アジア・中央アフリカの大部分では史上最高を記録した。大規模な干ばつや熱波、洪水、寒波といった異常気象も世界各地で発生した。また、２００９年６月にはラニーニャ現象が温暖な方向であるエルニーニョ現象に変わり北極の夏季の海氷面積も２００７年及び２００８年に続いて史上３番目に少ない年となった。

　和泉智則は、聞いてきた会議での内容を報告書にまとめて、すぐに和泉智則さん宛に速達で送った。すると、数日後、お礼の電話が和泉智則のところに入った。１９９８年が明けると４月５日、明石海峡大橋が開通し本四連絡橋神戸～鳴門ルートの全線が開通した。これには、奥さんが本当にありがとうございますと涙を流した。

９月２７日、日本長期信用銀行系のノンバンクの日本リースが負債総額２兆４千億円で最大の企業倒産となり１０月２３日、特別公的管理、国有化された。１９９９年が明けると１月１日、欧州連合「ＥＵ」の単一通貨「ユーロ」がイギリス以外のフランス、ドイツなど１１カ国に導入された。