第31話 勇者と新アイテム3
文字数 961文字
「黒いの……『残像』か? よく無事だったな」
「ざんぞー……? 生き物じゃないのか、あれ」
ハルが口にした響きは「残像」と聴こえたが、おれの知っている言葉の意味とは違うのでなんだかしっくりこなかった。もしかしたら別の表記かもしれない。どこかの三男坊っぽい三蔵とか、おしゃれブランドっぽいZANZOとか。
「生き物だったものの、成れの果てみたいな」
「怖……っ! それってつまり霊とか、怨念とか、そういう奴だろ?」
突然のホラー展開。どうせ異世界で出会うなら、手強くてもいいからもう少しファンシーな生き物であってほしかった。昨日からいろいろありすぎて、落胆のポイントが完全にバグってしまったおれは、今までにゲームやアニメで見た、狂暴ながらもどこか愛嬌のあるモンスターたちを思い出してため息をついた。
「銀の言ってるのがどんなものかは知らないが、まぁ、本体から切り離された思念の残り滓 ってとこだな」
ハルは欠伸を噛み殺すような声色でそう言った。ハルの様子と、与えられている情報との温度差に適応できない脳は、なかなか思うように働かない。
「なんか、ひどい言われようだな……。とりあえず、あれって捕まったらどうなんの?」
ハルの言う「本体から切り離された」ということがどういうことなのか、おれが想像する「幽霊」に近いものなのかはよくわからなかったが、お互いにお互いのイメージが掴めないのならこれ以上問答をしても仕方がない。この会話に対するハルの興味が完全に消え失せてしまわないうちに、一応の対処方法を探っておかなければ。
しかしハルは、そんなおれの問いかけにあっさりと首を傾げた。
「……さぁ?」
「さぁってなんだよ! おまえ名前知ってたじゃん! もうちょいこう……対処法とか、注意事項とか、なんかないの!?」
「いや、そう言われても……。あんなのに出会うことなんてあんまりないし、襲われたこともないし」
「そうなのか!? なんでハルは襲われないんだろ……やっぱ見た目で危険を察知すんのかな……」
「どういう意味だ」
余計な独り言はきっちり聞き取られた。それにしても、今日までのサポートぶりを振り返るに、おそらく(ちょっと変わってるけど)有能なサポーターであろうハルが、ここまで素で「わからない」というからには、昨日の現象はあまり一般的なものではないのだろうか。
「ざんぞー……? 生き物じゃないのか、あれ」
ハルが口にした響きは「残像」と聴こえたが、おれの知っている言葉の意味とは違うのでなんだかしっくりこなかった。もしかしたら別の表記かもしれない。どこかの三男坊っぽい三蔵とか、おしゃれブランドっぽいZANZOとか。
「生き物だったものの、成れの果てみたいな」
「怖……っ! それってつまり霊とか、怨念とか、そういう奴だろ?」
突然のホラー展開。どうせ異世界で出会うなら、手強くてもいいからもう少しファンシーな生き物であってほしかった。昨日からいろいろありすぎて、落胆のポイントが完全にバグってしまったおれは、今までにゲームやアニメで見た、狂暴ながらもどこか愛嬌のあるモンスターたちを思い出してため息をついた。
「銀の言ってるのがどんなものかは知らないが、まぁ、本体から切り離された思念の残り
ハルは欠伸を噛み殺すような声色でそう言った。ハルの様子と、与えられている情報との温度差に適応できない脳は、なかなか思うように働かない。
「なんか、ひどい言われようだな……。とりあえず、あれって捕まったらどうなんの?」
ハルの言う「本体から切り離された」ということがどういうことなのか、おれが想像する「幽霊」に近いものなのかはよくわからなかったが、お互いにお互いのイメージが掴めないのならこれ以上問答をしても仕方がない。この会話に対するハルの興味が完全に消え失せてしまわないうちに、一応の対処方法を探っておかなければ。
しかしハルは、そんなおれの問いかけにあっさりと首を傾げた。
「……さぁ?」
「さぁってなんだよ! おまえ名前知ってたじゃん! もうちょいこう……対処法とか、注意事項とか、なんかないの!?」
「いや、そう言われても……。あんなのに出会うことなんてあんまりないし、襲われたこともないし」
「そうなのか!? なんでハルは襲われないんだろ……やっぱ見た目で危険を察知すんのかな……」
「どういう意味だ」
余計な独り言はきっちり聞き取られた。それにしても、今日までのサポートぶりを振り返るに、おそらく(ちょっと変わってるけど)有能なサポーターであろうハルが、ここまで素で「わからない」というからには、昨日の現象はあまり一般的なものではないのだろうか。