不思議の国のアリス
文字数 9,865文字
「教えてやるよ。首をはねるってのはなあ。首をはねるってのはなぁあ……」
「こう言うことだ!」
※
ある日、おとぎ話が『歪 み』に汚染 された。
歪みはまたたくまに世界中に広がり、勝手に話を書き換 える。
やがては現実をも。
これは、歪んだおとぎ話を浄化 する不思議な双子 のお話 。
※
落ちる落ちる、アリスが落ちる。
底なし、きり無し、限り無し、がらんどうのうさぎ穴。壁にはぎっしりならんだ本棚、戸棚、画びょうで貼られたうす気味悪い落書き。試しにひょいと手をのばしてとったガラス瓶 、ラベルを読むと……
「オレンジマーマレード?」
「……中味は白い粉だけどね」
「わあ、がっかり」
ぐいと押し込む空 の棚。
落ちる落ちる、アリスが落ちる。赤いドレスと白いドレス、うり二つの双子のアリス。
長い黒髪なびかせて、ぼすんと落ちたよ、穴の底。
「よっと」
何かカサカサしたものが穴の底にふりつもって山になっていて、アリスはケガひとつしませんでした。
「おお、本の通り」
「……じゃ、ない」
「うわぁ」
顏をしかめる双子のアリス。
穴の底に積もっていたのは「枯 れ枝 と枯 れ草 」なんかじゃなかった。
どぎついピンクと黄色と緑のポップな色彩 。目がちかちかしそうな甘いにおい。お菓子の包 み紙、『空 き袋 。そして子どもの靴 。
「何これ」
「気持ち悪い」
「これ履 いてた子たち、どうなったんだろう」
「たぶんカナが想像したとおりだよ」
靴には点々と、赤い血が飛び散っていた。
「まだ本格的な汚染 は始まってないね」
「うん。だけど歪 みが出てる」
「あいつが通った直後だからね」
「歪みを追いかけよう」
「そうだね、追いかけよう」
「追いかければ」
「あいつにたどりつく」
長い長い通路を抜けて、たどりついたのは大広間 。
ぴかぴかに磨 かれた市松模様 の床 。びろうどのカーテンの向こうのちっちゃな扉 。ガラスのテーブル、上に鍵 。
「ここは原本 通りなんだ」
「あった、あの小瓶 」
『私を飲んで』と書かれた札 をまきつけた、ちっちゃなガラス瓶 。中味は…………
「びゃあ」
銀色子猫が耳をふせる。
「んびぃ」
白いちっちゃな牙をむく。
「やっぱりね」
「使い道はある」
ここから先に進むには、ちっちゃくなったり大きくなったり、わんわん泣いて涙の海であっぷあっぷしなきゃいけないんだけれど。
「時間がないから」
「手っ取り早く行こう」
ブローチに触れるルナとカナ。するとみるみる縮 む、体が縮む。人形ぐらいに小さくなって、小さなドアから、らくらく脱出。
「さすがおネェちゃん」
「いい仕事してる」
ドアの向こうはいちめんのお花畑。白に紫、ピンクがかった赤い花。ひらひら薄いクレープ紙 のような花びら。見てるとなんだか、胸がざわつく、おちつかない。何やら見てはいけないものを見ているような。
「これもしかして」
「もしかしなくても」
「ケシの花」
「ケシの花」
いけないお薬 採 れる花。
「ドードーめぐり、ドードーめぐりぃいい」
ケシの花畑の周 りをぐるぐる走る鳥一羽。ずんぐりむっくり変な顏、ハイテンションで叫 んでる。
「ドードーめぐり、ドードーめぐりぃい」
「あ、ドードー鳥」
「本屋さんの中庭に来た子かな」
「目つきがヤバいよ」
「別のお薬キメたかな」
「いくらでも材料生えてそうだよね、ここ」
気配に気づいたドードー鳥、鼻息荒く急停止 。
「おめでとう、おめでとう! あなたの健闘 をたたえて賞品を。この指ぬきを授 けます!」
「指、入ってる」
「いらない……」
指ぬき(指入り)。
※
しっちゃかめっちゃか不思議の国 。
イモムシは謎の葉っぱをスパスパ吸ってバッドトリップ。侯爵夫人 は赤ん坊を殴 り倒 してお鍋 にどぼん。コックは鼻から粉を吸いこみわめきちらす。
「コショウだよ、これはコショウだよ!」
「ぜったいちがう」
「ロクでもないことになってる」
「すごくロクでもないことになってる」
「話の順番もでたらめだ」
セイウチと大工がカキを言いくるめ、残らずぺろりとのみこんだ。
「これは正 しい」
「本がちがうけど」
「めちゃくちゃだね」
「めちゃくちゃだ」
魚男が手を振った。
「やあアリス、焼き菓子はいかが?」
「いらない」
カエル男がへろへろ手招 き。
「ごきげんようアリス、シロップはいかが?」
「いらない」
「キャンディは」
「いらない」
「ぶどう味だよ」
「けっこうです」
「キノコをめしあがれ」
「それ露骨 にヤバいやつじゃん!」
「タルトにパイにチョコレート」
「いらないっつってんだろ!」
ルナさんとうとうキレちゃった。ハサミでちょっきんちょっきんな。舞い散るトランプ紙吹雪 。
「だれも彼 もやたらとお菓子食べさせようとしてくるね」
「つまり何か入ってる」
お菓子(ヤバい薬入り)。
「下手にゴシックとかマフィア風とかゾンビ風とか気の利 いたアレンジじゃなくて」
「ひたすらメルヘンな方向に歪んでるから余計 に不気味 」
アリス、アリス、双子のアリス。並 んで歩く森の中、ぽっかり宙 に浮かぶ猫。にやにやにやにや笑ってる。
「ハロー、赤いアリス。ハロー、白いアリス。」
「チェシャ猫は変わらないんだね」
「猫だからねぇん」
「そうか、猫だから」
「ぴゃあ」
「ぴゃああ」
「やあごきげんよう、銀色の兄弟」
「ぴぃ」
「ぴぃう」
お鼻くっつけ、ごあいさつ。
猫は自由。いつでもどこでも。
「チェシャ猫さん、チェシャ猫さん、教えて。僕たち、イカレ帽子屋 を探してるんだ」
「マッドハッターを探してる? ならば簡単、あっちだよ」
「あっちってどっち?」
「こっちじゃないそっち」
話すうちにどんどんチェシャ猫の体が薄れてく。体がすっかり空気に溶け込んで、おしまいにはにやにや笑う顏だけ残って。
「こっちじゃないのが、そっちだよ」
それもぽんっと消えちゃった。
「消えちゃった」
「意味わかんないし」
「意味なんてないんだよルナ」
「そうか、カナ」
赤と白、二人のアリス。たがいに背中合わせで立つ。
「こっちじゃない」
「そっち」
同時に走り出す。
何たる不条理 、正反対の方向に走り出したはずなのに、二人並んで走ってる!
走る、走る、アリスが走る。
ドレスとリボンをなびかせて、赤白、二人のアリスが走る。
ぽんと開 けた森の中、だらだら続く狂 ったお茶会 。三月うさぎに眠たいヤマネ、お茶にひたった止まった時計。
マッドハッター、バターを塗 る手をはたと止め、脱兎 の勢い走り出す。
「待て、マッドハッター」
「止まれ!」
テーブル飛び越えアリスが走る。
マッドハッターが走る。
ヤクを決めたか、ぐんにゃり倒 れて眠るグリフォンの、尻尾をふみつけ海辺 をひらり。
呼ばれてないのに女王陛下 のクロッケー大会に乱入 、紅 ヅル、ハリネズミ、腰をまげたトランプ兵、もろともまとめて蹴飛 ばした。
「ぎゃっ痛い」
「何しやがるか」
「ごめんそこどいて」
「失礼」
ぴょいと飛び越すルナとカナ。
「早いな」
「早いな」
「気をそらそう」
ペンキでべっとり白から赤へ、塗りたくったバラの花園 駆け抜けて、やって来たのはキノコの森。
「おーいマッドハッター! 帽子に値札 つけたまんまだよ」
「おっとこれはうっかり」
立ち止まるマッドハッター。
「えい」
ルナはすかさずポッケから、懐中時計 を引き出して、ぶんぶん回して投げつける。
ほっそりきらきら金時計。ひゅうんと飛んでく空中で、ぼおん。
ふくれあがった太ぉい鎖 。ぐるぐるぐるぐるからみつく。
「ぎゃーっ」
マッドハッター、ぐるぐる巻き。ばったり倒 れる苔 の上。
がしゃがしゃがしゃーん。いくつもの錠前 がかかる。
「こっ、これしきの鎖で私を縛 ったおつもりですか?」
顏をしかめて力を入れるが、鎖はぴくともゆるまない。
「い、今のはリハーサルです。こんどこそ……ふんぬっ!」
ぱちーんと錠前一つ弾 け飛ぶ。だけど直後にもっと大きな錠前が、がしゃがしゃんっと二
つ増えた。
「うっそぉおおっ」
「それ、つかまえた奴の悪行 に合わせて錠前が増えるんだって」
「まだ増えてる」
がしゃがしゃがしゃがしゃ錠前増える。おしゃれなハンドバッグくらいの錠前が、太い鎖にびっしり鈴 なり。まるでクリスマスのイルミネーション。
「そのうち錠前でつぶれるかもね」
「どっから持ってきたんですか、こんな物騒 なもん!」
「クリスマス・キャロル」
「それはキャロルはキャロルでもちがうキャロルでしょーっ!」
「お前、骨だろ」
びっくんとすくみあがったマッドハッター。
ぽろりと落ちた帽子の下から、飛び出す銀髪 、赤い瞳、貴族 めいた品 のある顏だちの男。
「何故バレた! 私の擬態 は完ぺきだったのに!」
「本物なら値札はつけたまま、気にしない」
「しぃまったぁあ!」
「かっこつけてるから」
「スタイル重視 なんですよ我々は!」
「本物ならまず、お茶をすすめなきゃね」
「うぐぐ」
「僕らの顔を見るなり逃げ出したものね」
「それ以前に言動 がいつものまんまだよね」
「隠す気ないよね」
話す間もずっしりみっしり。鎖がどんどん太くなる。
「じゃあそろそろ答えてもらおうか。だれに歪みをとり憑かせた?」
腕組 みする白アリスことルナ。じとーっとにらむ赤アリスことカナ。
しゃきーんっと爪 出す銀色子猫。
その時だ。
どしゅうっ!
「わっ」
「うわわっ」
震動 、爆音 、衝撃波 。走り抜けた直後に、極彩色 のきのこの森が色を失う。
青い空、ぎらつく緑の苔、赤と青と紫のキノコ。みんなみんな、白と黒と灰色に沈 む。
「はじまったね、ルナ」
「はじまったね、カナ」
「ふがふがふが」
錠前びっしり増えすぎて、もはや男の顏が見えない。
「行こう、ルナ」
「うん、行こう、カナ」
ごきばきべきょりっ。
錠前の塊 の向こうから、何かいろいろ折れる音が聞こえてくる。
「こいつはこのまま放置ってことで」
「おっけー、このまま放置ってことで」
「むがーっ」
※
しっちゃかめっちゃか不思議の国 。歪んでいるのはいったいだぁれ?
黒く蠢 く歪みの塊 。宿 したまんま。いそいそぴょんぴょん。
不思議の国全体を走り抜け、汚染をまき散らした者。
もともとおかしな登場人物の中で、唯一 律義 でまともな者。
規則 正しく、時間と約束を守っていた者。
「たいへんだぁ、たいへんだ、ぐずぐずしてたら遅れちゃう!」
いつもいつもいつもいつも。
時間に追われてこき使われてののしられ、まにあったことは一度もない。いや、ほんとはまにあってるはずなのに、誉 められたことはいちどもない。いつもいつもいつもいつも怒鳴 られる。
「このまぬけ、この無能 ! さっさとしろこのグズ! のろま!」
いつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつも。
「首をはねておしまい!」
ああ、もうたくさんだ。
もうたくさんだ。
「聞き飽 きた」
懐中時計をひきちぎり、力任 せにたたきつける。
「お前がいなけりゃいいんだ!」
女王様。
首をはねてしまえと言うだけで、すぐに忘れる女王様。
言葉は刃 。聞く者の中味を切り刻む。
言葉は刃。一度言ったら戻せない。あやまったって消せやしない。言った事実は残る。永遠に。
「教えてやるよ。首をはねるってのはなあ。首をはねるってのはなぁあ……」
女王様。
後のことなどてんでわからぬ女王様。かんしゃく玉を破裂 させ、ぎゃんと叫べばそれで満足 。
ほんとに首をはねたことなんか一度も無い。
言ってることの意味だって、自分じゃちっとも理解しない。
「こう言うことだ!」
斧 でばっさり白ウサギ、ハートの女王の首をはねた。
真っ赤な血潮 が飛び散って、白いバラを赤く染める。
「どうだ! どうだどうだどうだ! ざまぁみろ、見かけ倒 しの口先女 。クソやかましいクソ女王め! クソ、クソ、クソ! ふは、ふは、ふははははーっ!」
赤く染まった白いバラ、バラバラの女王。
言葉で人を刻 んだ分 、そっくり自分に返った女王。
「あーあーあー」
「あーあ」
「やっちゃった」
「やっちゃった」
「アリス……お前、ウザいんだよ! どこまでもどこまでもどこまでも、俺の後 ばっか追いかけやがって! ほんと何なんだよこのストーカー!」
「あっ、それはぼくも思った」
「僕も思った」
「ほっといてくれよ! もう俺のことはほっといてくれよーっ!」
血まみれの白ウサギ。斧を振り上げ斬りかかる。
「クソうざったいクソガキがーっ! 刻んでやる、刻んでやる、もう二度と俺について来れないようにっ」
「おあいにくさま」
カチリとアリスが靴のかかとを打ちあわせる。途端 にひゅんっと姿が消えて、斧がすかっと宙を切る。
「あぁっ? どこだ。どこ行ったアリスぅっ! クソっクソっクソっ!」
目標 消失 白ウサギ、ぶちギレキレ芸、やつあたり。斧をふりあげずんばらりん、手当たり次第に切り刻む。
一方、ルナとカナはウサギのはるか後方 、バラの木陰 。
「おお、こんな風になるんだ」
「すごいすごい」
「さすがおネェちゃん」
「いい仕事してる」
「どこだぁああ、アリス、どこだぁああっ!」
血走 った目で白ウサギ、目に付くものを片 っ端 からばっさりずっぱりずんばらりん。
ハートのキングが真っ二つ。
裁判官が真っ二つ。
ハートのジャックも、トランプ兵も、みーんなみーんな真っ二つ。
「全部全部壊れてしまえーっ」
ぐんにゃり、ぐにょぉん。
白ウサギの首が伸びる。足が伸びる。腹はぶっくりに膨 れ上がり、赤い目玉はらんらんと燃える。長い耳は角に変わる。唇がめくれあがって上下の鋭い歯が剥 き出しに。のびきった上着は腕にはりつき鱗 となり、背中にぱちんとコウモリみたいな翼が開 く。
ヒゲがねじれてたれ下がり、指と爪がぐにょりとのびる。
がくがくのびて、ごきょっと曲がる。
「うぼっ、うぼぼっ、ごぼがぼげぼびっ」
くらいつく顎 。
かきむしる爪。
そいつはもう、白ウサギじゃない。
そいつは今や、ひとごろしき怪物、ジャバウォックだ。
怪獣 ! 狂獣 ! 巨大 !
めきめきばきばきごきょぎょきょり。
際限 なく膨れ上がり、もはやお城の尖塔 に手が届きそう。
それでもチョッキは着たまんま。何故 か破れず着たまんま。
「これ鏡の国だ」
「セイウチと大工もそうだった」
「本が混じってる」
「骨がいるからだ」
「骨がいるからだ」
「まじってるならユニコーン呼べるね」
「そうだ、鏡の国にはユニコーンがいる」
ぐるるるがおう、ぐるるるがおう。
のっそりもったり、ぶぅうん、ずしぃいん。
いびつな腕を振り回し、ジャバウォックがお城を壊す。
ばらばらばらばら破片が落ちる。
カナは白いエプロンのポケットから、折紙を出す。
「来て、ぼくのユニコーン」
ひゅうん!
銀の星くず引き連 れて、真珠の角 、ダイヤの蹄 、雪の体、鋼 の足。
乙女の守護者、ユニコーンが実体化する。
「乗せて、ねえさん」
『喜んで!』
走る。走る。
赤と白、二人のアリスと銀色子猫が二匹。軽々乗せて、ユニコーンが走る。
ぐるるるがぉう、ぐるるるがぉう。
吠える吠えるよジャバウォック。生気の失 せた灰色の空。どすぐろく立ちこめるおどろおどろの雲 裂 いて、翼ひろげて風切 って、ひゅんひゅん飛ぶよ、ジャバウォック。
「あいつに追いつく」
『おおせのままに、プリンセス』
ユニコーン蹴 った。お城の壁、森の木、モノクロのきのこ、風にちぎれる黒い雲、色を無くした灰色の星、何でもかんでも足がかりにして、空 へ空 へと駆 け登 る。
「ぞごにいだがぁああ、あーりーずぅうううう」
『遅い!』
なぐりかかりたる鉤爪 を、ひらりとかわして蹴り飛ばし、駆け登るよ肩の上。だらりとのびた首の上。
走る走るよユニコーン。
おおっと点滅 、体が、足が。
「あ、いけない、そろそろ制限時間が」
赤いアリスのリボンが震える。
「がんばって姉さん、もう少し!」
カナはしがみつく、ユニコーンの首に。
『カナちゃん……』
震えるユニコーン。かっと輝く白銀 の角 。
「あいつの上に。口の上に!」
『おおせのままに、マイプリンセス!』
腐った魚のような顏踏みつけて、高々と飛ぶユニコーン。がばっと口を開いてジャバウォック、首をのばして追いすがる。
「めしあがれ」
ルナがポケットから出したのは、広間で見つけた「飲んで」の小瓶 。生臭 い息 吐 き散らかす怪物の、お口めがけてぽいっと投げる。
白ウサギはアリスの登場キャラクター。
『自分の所属 する本に出てくる物』には、逆らえない、逃げられない。
しゅわしゅわ泡立 つガラス瓶。
ぱくり、飲み込むジャバウォック。
「うぐ?」
一瞬だった。
ジャバウォック。
大きな大きなジャバウォック。
お城の塔より巨大な大怪獣 。
圧縮 、縮 んでごとっと落ちる。
荒 れ果 てた芝生 に転 がった、かっちかちのミートボール。
どっすん、ぼすっとめり込んだ。
「なるほど確かに縮んだね」
「縮んだね」
ふわりと降り立つユニコーン。
「ありがと、ねえさん」
カナのなでる手のひらの下、ぺらりと戻る、元の折紙。
「歌ってよ、カナ」
「わかったよ、ルナ」
ルナが歌う。折紙のユニコーンを胸に抱いて。
ライオンとユニコーン
ぐるぐる戦う、王冠 めぐって
ユニコーンがガツンと一撃
ライオン追いかけ町中 ぐるぐる
「逆じゃない?」
「いいんだ、ぼくのユニコーンは強いから」
「そうだね、強いね」
乙女 のためなら、最強。
町の人たちおおあわて
黒パン、白パン、プラムのケーキ
太鼓 たたいて追い出した
モノクロの世界が鮮 やかな色を取り戻す。コックはコショウをまき散らし、侯爵夫人は赤ん坊をぶちのめし、イモムシは水煙草 をぷっかぷか、ドードー鳥がぐるぐる走る。だらだら続く、狂ったお茶会。
「そやつの首をはねよ!」
おかえり、正 しくイカれた不思議の国。
そして、アリスが穴に飛び込む。
※
ぽんっと本から飛び出すルナとカナ。いつものように銀色子猫を腕に抱き……
「おかえり、カナちゃん!」
「おかえり、ルナ」
「ただいま、姉さん」
「はい、お土産 」
ごとり。
鎖と錠前でぎっちぎちに押しつぶされた、赤目 の男をお持ち帰り。
「さっきより増えたかな」
「何かすっごい形になってるんですけどぉ」
大仕事をやり遂 げて、よれよれの姉さん。それでも立っているのは多分、根性。
「なぁに、この程度でくたばるタマじゃああるまい」
おじさん、げしっと鎖の塊、蹴りつける。いつもの優しさ穏やかさはいったいどこに? 暴力全開、容赦なし。
「ふがふがーっ」
「ほらな」
しゅわわわわ。
赤い革表紙の本から黒い蠢 く斑点 が消失 、元の美しさを取り戻す。金文字で刻印 されたタイトルは、みなさまごぞんじ「不思議の国のアリス」。
「さぁてどうしてくれましょうか……」
本屋は笑う。上品に、口角 をつり上げて。
「散々 、私の本を汚染 してくれたこの男を」
「とりあえず、あれだ。質問しようか」
べきばきとおじさん、指を鳴らして腕まくり。
「拷問 のまちがいじゃあありませんよねっ」
「それは、貴様の返答次第だ」
「ぎゃー」
※
「僕たちの出番はなさそうだね」
「うん。おじさんたちにまかせよう」
「ささ、ルナちゃんもカナちゃんもおつかれさま。お茶とケーキを用意したわよ」
「わぁ、いいにおい!」
「ありがとう、おネェちゃん」
「プラムのケーキよ」
「これが」
「これが」
新鮮なプラムとレーズンをぎっしり乗せた、バターたっぷりおいしいケーキと本物のお茶でほっとひといき。
「んー、おいしい」
「甘さと、さっぱり感 のバランスが絶妙 !」
「ふふっ、ありがと」
「ほら姉さん、お茶飲んで」
「ありがとう……ふわぁ……染みるぅう」
女子会の隣では、尋問 が着々 と進む。
「何故、私の本にもぐり込んだんですか?」
「きりきり白状 せい!」
「ノーノーノー、ブレイク! ブレイク!」
「あいにくでしたね、これはプロレスではないんですよ」
食べ終わる頃 には、きっと謎もとけるでしょう。
めでたし、めでたし。
(おとぎ探偵ルナカナ〜不思議の国のアリス/了)
※本文中に使用した画像は、らいら@denbu3 さんの「趣味丸出しメーカー https://picrew.me/image_maker/17569 」で風牙さんが作成した立ち絵に背景を加えて加工したものです。
ここにいる奴ぁみぃんなおかしい。でなきゃ、ここには来てないさ。
「こう言うことだ!」
さあ塗りかえろ。女王様は赤い花がだーい好き。
※
ある日、おとぎ話が『
歪みはまたたくまに世界中に広がり、勝手に話を書き
やがては現実をも。
これは、歪んだおとぎ話を
※
落ちる落ちる、アリスが落ちる。
底なし、きり無し、限り無し、がらんどうのうさぎ穴。壁にはぎっしりならんだ本棚、戸棚、画びょうで貼られたうす気味悪い落書き。試しにひょいと手をのばしてとったガラス
「オレンジマーマレード?」
「……中味は白い粉だけどね」
「わあ、がっかり」
ぐいと押し込む
落ちる落ちる、アリスが落ちる。赤いドレスと白いドレス、うり二つの双子のアリス。
長い黒髪なびかせて、ぼすんと落ちたよ、穴の底。
「よっと」
何かカサカサしたものが穴の底にふりつもって山になっていて、アリスはケガひとつしませんでした。
「おお、本の通り」
「……じゃ、ない」
「うわぁ」
顏をしかめる双子のアリス。
穴の底に積もっていたのは「
どぎついピンクと黄色と緑のポップな
「何これ」
「気持ち悪い」
「これ
「たぶんカナが想像したとおりだよ」
靴には点々と、赤い血が飛び散っていた。
「まだ本格的な
「うん。だけど
「あいつが通った直後だからね」
「歪みを追いかけよう」
「そうだね、追いかけよう」
「追いかければ」
「あいつにたどりつく」
長い長い通路を抜けて、たどりついたのは
ぴかぴかに
「ここは
「あった、あの
『私を飲んで』と書かれた
「びゃあ」
銀色子猫が耳をふせる。
「んびぃ」
白いちっちゃな牙をむく。
「やっぱりね」
「使い道はある」
ここから先に進むには、ちっちゃくなったり大きくなったり、わんわん泣いて涙の海であっぷあっぷしなきゃいけないんだけれど。
「時間がないから」
「手っ取り早く行こう」
ブローチに触れるルナとカナ。するとみるみる
「さすがおネェちゃん」
「いい仕事してる」
ドアの向こうはいちめんのお花畑。白に紫、ピンクがかった赤い花。ひらひら薄いクレープ
「これもしかして」
「もしかしなくても」
「ケシの花」
「ケシの花」
いけないお
「ドードーめぐり、ドードーめぐりぃいい」
ケシの花畑の
「ドードーめぐり、ドードーめぐりぃい」
「あ、ドードー鳥」
「本屋さんの中庭に来た子かな」
「目つきがヤバいよ」
「別のお薬キメたかな」
「いくらでも材料生えてそうだよね、ここ」
気配に気づいたドードー鳥、鼻息荒く
「おめでとう、おめでとう! あなたの
「指、入ってる」
「いらない……」
指ぬき(指入り)。
※
しっちゃかめっちゃか
イモムシは謎の葉っぱをスパスパ吸ってバッドトリップ。
「コショウだよ、これはコショウだよ!」
「ぜったいちがう」
「ロクでもないことになってる」
「すごくロクでもないことになってる」
「話の順番もでたらめだ」
セイウチと大工がカキを言いくるめ、残らずぺろりとのみこんだ。
「これは
「本がちがうけど」
「めちゃくちゃだね」
「めちゃくちゃだ」
魚男が手を振った。
「やあアリス、焼き菓子はいかが?」
「いらない」
カエル男がへろへろ
「ごきげんようアリス、シロップはいかが?」
「いらない」
「キャンディは」
「いらない」
「ぶどう味だよ」
「けっこうです」
「キノコをめしあがれ」
「それ
「タルトにパイにチョコレート」
「いらないっつってんだろ!」
ルナさんとうとうキレちゃった。ハサミでちょっきんちょっきんな。舞い散るトランプ
「だれも
「つまり何か入ってる」
お菓子(ヤバい薬入り)。
「下手にゴシックとかマフィア風とかゾンビ風とか気の
「ひたすらメルヘンな方向に歪んでるから
アリス、アリス、双子のアリス。
「ハロー、赤いアリス。ハロー、白いアリス。」
「チェシャ猫は変わらないんだね」
「猫だからねぇん」
「そうか、猫だから」
「ぴゃあ」
「ぴゃああ」
「やあごきげんよう、銀色の兄弟」
「ぴぃ」
「ぴぃう」
お鼻くっつけ、ごあいさつ。
猫は自由。いつでもどこでも。
「チェシャ猫さん、チェシャ猫さん、教えて。僕たち、
「マッドハッターを探してる? ならば簡単、あっちだよ」
「あっちってどっち?」
「こっちじゃないそっち」
話すうちにどんどんチェシャ猫の体が薄れてく。体がすっかり空気に溶け込んで、おしまいにはにやにや笑う顏だけ残って。
「こっちじゃないのが、そっちだよ」
それもぽんっと消えちゃった。
「消えちゃった」
「意味わかんないし」
「意味なんてないんだよルナ」
「そうか、カナ」
赤と白、二人のアリス。たがいに背中合わせで立つ。
「こっちじゃない」
「そっち」
同時に走り出す。
何たる
走る、走る、アリスが走る。
ドレスとリボンをなびかせて、赤白、二人のアリスが走る。
ぽんと
マッドハッター、バターを
「待て、マッドハッター」
「止まれ!」
テーブル飛び越えアリスが走る。
マッドハッターが走る。
ヤクを決めたか、ぐんにゃり
呼ばれてないのに
「ぎゃっ痛い」
「何しやがるか」
「ごめんそこどいて」
「失礼」
ぴょいと飛び越すルナとカナ。
「早いな」
「早いな」
「気をそらそう」
ペンキでべっとり白から赤へ、塗りたくったバラの
「おーいマッドハッター! 帽子に
「おっとこれはうっかり」
立ち止まるマッドハッター。
「えい」
ルナはすかさずポッケから、
ほっそりきらきら金時計。ひゅうんと飛んでく空中で、ぼおん。
ふくれあがった太ぉい
「ぎゃーっ」
マッドハッター、ぐるぐる巻き。ばったり
がしゃがしゃがしゃーん。いくつもの
「こっ、これしきの鎖で私を
顏をしかめて力を入れるが、鎖はぴくともゆるまない。
「い、今のはリハーサルです。こんどこそ……ふんぬっ!」
ぱちーんと錠前一つ
つ増えた。
「うっそぉおおっ」
「それ、つかまえた奴の
「まだ増えてる」
がしゃがしゃがしゃがしゃ錠前増える。おしゃれなハンドバッグくらいの錠前が、太い鎖にびっしり
「そのうち錠前でつぶれるかもね」
「どっから持ってきたんですか、こんな
「クリスマス・キャロル」
「それはキャロルはキャロルでもちがうキャロルでしょーっ!」
「お前、骨だろ」
びっくんとすくみあがったマッドハッター。
ぽろりと落ちた帽子の下から、飛び出す
「何故バレた! 私の
「本物なら値札はつけたまま、気にしない」
「しぃまったぁあ!」
「かっこつけてるから」
「スタイル
「本物ならまず、お茶をすすめなきゃね」
「うぐぐ」
「僕らの顔を見るなり逃げ出したものね」
「それ以前に
「隠す気ないよね」
話す間もずっしりみっしり。鎖がどんどん太くなる。
「じゃあそろそろ答えてもらおうか。だれに歪みをとり憑かせた?」
しゃきーんっと
その時だ。
どしゅうっ!
「わっ」
「うわわっ」
青い空、ぎらつく緑の苔、赤と青と紫のキノコ。みんなみんな、白と黒と灰色に
「はじまったね、ルナ」
「はじまったね、カナ」
「ふがふがふが」
錠前びっしり増えすぎて、もはや男の顏が見えない。
「行こう、ルナ」
「うん、行こう、カナ」
ごきばきべきょりっ。
錠前の
「こいつはこのまま放置ってことで」
「おっけー、このまま放置ってことで」
「むがーっ」
※
しっちゃかめっちゃか
黒く
不思議の国全体を走り抜け、汚染をまき散らした者。
もともとおかしな登場人物の中で、
「たいへんだぁ、たいへんだ、ぐずぐずしてたら遅れちゃう!」
いつもいつもいつもいつも。
時間に追われてこき使われてののしられ、まにあったことは一度もない。いや、ほんとはまにあってるはずなのに、
「このまぬけ、この
いつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつも。
「首をはねておしまい!」
ああ、もうたくさんだ。
もうたくさんだ。
「聞き
懐中時計をひきちぎり、
「お前がいなけりゃいいんだ!」
女王様。
首をはねてしまえと言うだけで、すぐに忘れる女王様。
言葉は
言葉は刃。一度言ったら戻せない。あやまったって消せやしない。言った事実は残る。永遠に。
「教えてやるよ。首をはねるってのはなあ。首をはねるってのはなぁあ……」
女王様。
後のことなどてんでわからぬ女王様。かんしゃく玉を
ほんとに首をはねたことなんか一度も無い。
言ってることの意味だって、自分じゃちっとも理解しない。
「こう言うことだ!」
真っ赤な
「どうだ! どうだどうだどうだ! ざまぁみろ、見かけ
赤く染まった白いバラ、バラバラの女王。
言葉で人を
「あーあーあー」
「あーあ」
「やっちゃった」
「やっちゃった」
「アリス……お前、ウザいんだよ! どこまでもどこまでもどこまでも、俺の
「あっ、それはぼくも思った」
「僕も思った」
「ほっといてくれよ! もう俺のことはほっといてくれよーっ!」
血まみれの白ウサギ。斧を振り上げ斬りかかる。
「クソうざったいクソガキがーっ! 刻んでやる、刻んでやる、もう二度と俺について来れないようにっ」
「おあいにくさま」
カチリとアリスが靴のかかとを打ちあわせる。
「あぁっ? どこだ。どこ行ったアリスぅっ! クソっクソっクソっ!」
一方、ルナとカナはウサギのはるか
「おお、こんな風になるんだ」
「すごいすごい」
「さすがおネェちゃん」
「いい仕事してる」
「どこだぁああ、アリス、どこだぁああっ!」
ハートのキングが真っ二つ。
裁判官が真っ二つ。
ハートのジャックも、トランプ兵も、みーんなみーんな真っ二つ。
「全部全部壊れてしまえーっ」
ぐんにゃり、ぐにょぉん。
白ウサギの首が伸びる。足が伸びる。腹はぶっくりに
ヒゲがねじれてたれ下がり、指と爪がぐにょりとのびる。
がくがくのびて、ごきょっと曲がる。
「うぼっ、うぼぼっ、ごぼがぼげぼびっ」
くらいつく
かきむしる爪。
そいつはもう、白ウサギじゃない。
そいつは今や、ひとごろしき怪物、ジャバウォックだ。
めきめきばきばきごきょぎょきょり。
それでもチョッキは着たまんま。
「これ鏡の国だ」
「セイウチと大工もそうだった」
「本が混じってる」
「骨がいるからだ」
「骨がいるからだ」
「まじってるならユニコーン呼べるね」
「そうだ、鏡の国にはユニコーンがいる」
ぐるるるがおう、ぐるるるがおう。
のっそりもったり、ぶぅうん、ずしぃいん。
いびつな腕を振り回し、ジャバウォックがお城を壊す。
ばらばらばらばら破片が落ちる。
カナは白いエプロンのポケットから、折紙を出す。
「来て、ぼくのユニコーン」
ひゅうん!
銀の星くず引き
乙女の守護者、ユニコーンが実体化する。
「乗せて、ねえさん」
『喜んで!』
走る。走る。
赤と白、二人のアリスと銀色子猫が二匹。軽々乗せて、ユニコーンが走る。
ぐるるるがぉう、ぐるるるがぉう。
吠える吠えるよジャバウォック。生気の
「あいつに追いつく」
『おおせのままに、プリンセス』
ユニコーン
「ぞごにいだがぁああ、あーりーずぅうううう」
『遅い!』
なぐりかかりたる
走る走るよユニコーン。
おおっと
「あ、いけない、そろそろ制限時間が」
赤いアリスのリボンが震える。
「がんばって姉さん、もう少し!」
カナはしがみつく、ユニコーンの首に。
『カナちゃん……』
震えるユニコーン。かっと輝く
「あいつの上に。口の上に!」
『おおせのままに、マイプリンセス!』
腐った魚のような顏踏みつけて、高々と飛ぶユニコーン。がばっと口を開いてジャバウォック、首をのばして追いすがる。
「めしあがれ」
ルナがポケットから出したのは、広間で見つけた「飲んで」の
白ウサギはアリスの登場キャラクター。
『自分の
しゅわしゅわ
ぱくり、飲み込むジャバウォック。
「うぐ?」
一瞬だった。
ジャバウォック。
大きな大きなジャバウォック。
お城の塔より巨大な
どっすん、ぼすっとめり込んだ。
「なるほど確かに縮んだね」
「縮んだね」
ふわりと降り立つユニコーン。
「ありがと、ねえさん」
カナのなでる手のひらの下、ぺらりと戻る、元の折紙。
「歌ってよ、カナ」
「わかったよ、ルナ」
ルナが歌う。折紙のユニコーンを胸に抱いて。
ライオンとユニコーン
ぐるぐる戦う、
ユニコーンがガツンと
ライオン追いかけ
「逆じゃない?」
「いいんだ、ぼくのユニコーンは強いから」
「そうだね、強いね」
町の人たちおおあわて
黒パン、白パン、プラムのケーキ
モノクロの世界が
「そやつの首をはねよ!」
おかえり、
そして、アリスが穴に飛び込む。
※
ぽんっと本から飛び出すルナとカナ。いつものように銀色子猫を腕に抱き……
「おかえり、カナちゃん!」
「おかえり、ルナ」
「ただいま、姉さん」
「はい、お
ごとり。
鎖と錠前でぎっちぎちに押しつぶされた、
「さっきより増えたかな」
「何かすっごい形になってるんですけどぉ」
大仕事をやり
「なぁに、この程度でくたばるタマじゃああるまい」
おじさん、げしっと鎖の塊、蹴りつける。いつもの優しさ穏やかさはいったいどこに? 暴力全開、容赦なし。
「ふがふがーっ」
「ほらな」
しゅわわわわ。
赤い革表紙の本から黒い
「さぁてどうしてくれましょうか……」
本屋は笑う。上品に、
「
「とりあえず、あれだ。質問しようか」
べきばきとおじさん、指を鳴らして腕まくり。
「
「それは、貴様の返答次第だ」
「ぎゃー」
※
「僕たちの出番はなさそうだね」
「うん。おじさんたちにまかせよう」
「ささ、ルナちゃんもカナちゃんもおつかれさま。お茶とケーキを用意したわよ」
「わぁ、いいにおい!」
「ありがとう、おネェちゃん」
「プラムのケーキよ」
「これが」
「これが」
新鮮なプラムとレーズンをぎっしり乗せた、バターたっぷりおいしいケーキと本物のお茶でほっとひといき。
「んー、おいしい」
「甘さと、さっぱり
「ふふっ、ありがと」
「ほら姉さん、お茶飲んで」
「ありがとう……ふわぁ……染みるぅう」
女子会の隣では、
「何故、私の本にもぐり込んだんですか?」
「きりきり
「ノーノーノー、ブレイク! ブレイク!」
「あいにくでしたね、これはプロレスではないんですよ」
食べ終わる
めでたし、めでたし。
(おとぎ探偵ルナカナ〜不思議の国のアリス/了)
※本文中に使用した画像は、らいら@denbu3 さんの「趣味丸出しメーカー https://picrew.me/image_maker/17569 」で風牙さんが作成した立ち絵に背景を加えて加工したものです。