第58話

文字数 444文字

 氷のような冷たすぎる空気の洞穴を、提灯片手に歩いていると、シロが先頭へ歩いてきた。焦熱地獄まで、シロが道案内をしてくれているかのようだ。

 ああ。また今度は来た道を戻るのですね。

 ビュウビュウと前方から、吹雪く粉雪の道をひたすら歩くと、洞穴を抜けた後には、今度は恐ろしいまでの高熱が襲う。

 炎で身を焦がれるかのようだ。
 汗が滝のように体中から流れていく。

「シロ?」

 砂浜へ戻ると、シロが既に渡し船へ乗っていた。
 だが、シロが向く方向は、大焦熱地獄があるはずの洞穴がある崖の窪みの方ではなく。更に灼熱の海を進むような形だ。

「シロやい。シロは、どこかでもう一つの洞穴を見つけたのですね。確かにこの灼熱の中では、元来た道を戻るのはよくない……」
 
 私はオールを握ると、シロを信じた。

 火柱がまた上がった。
 
 今度のは更に更に大きい。

 熱もさぞかし酷いのだろう……。



 シロが向く。海に浮かんだ。まだ一度も来たことがない小島の沖には、確かに洞穴があった。

 殊更に大きい口を開いた。巨大な地への穴だ。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み