第44話
文字数 1,463文字
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「どっわー、ここもあっついなあ!」
「ええ……良かった……間一髪でしたね。危うく熱でやられてしまうところでしたね」
真夏の八天街のちょうど昼下がりに、交差点の電信柱の傍に俺たちはいた。
赤信号の交差点から八天駅前のロータリーは、何故か自動車で混雑している。大通りを行く通行人の雑踏も殊の外いそいそとしているような錯覚を覚えた。
何もかも夏のうだるような暑さが包んでいた。
「火端さん? さすがにこうも暑さが続くと辛くなりますよね。アイスでも食べませんか?」
「お、おう」
音星の誘いで、俺は交差点を突き進み裏通りにある民宿の近くにあるコンビニへと向かった。街路樹の日陰ばかりを歩いて、コンビニでアイスクリームを買ってレジを済ましていると、店のガラス製の自動扉前にシロが座っていた。
「お! シロ!」
「私たちを、わざわざ迎えに来てくれたようですね」
ニャー……?
シロは俺たちの周囲を嗅ぎ回してきた。フンフンと鼻を鳴らして、小首をかしげる。それから、シロはフーッ、と威嚇した。
「うん? シロ?」
「どうしたのでしょう?」
シロの行動を疑問に思っていると、後ろにいるコンビニの店員もこちらを怪訝に見ていた。
うん??
……クンクン。
俺は自分の腕の臭いをかいだ。
「あー!!」
そういえば、俺たちは地獄で血の池に頭から突っ込んだんだった。そのせいで、身体中から血の臭いが強烈になっているんだろう。
「音星! おじさんとおばさんの民宿まで全力ダッシュだ!」
「はい?」
俺はシロを抱えると、買ったばかりのアイスをクーラーバッグに入れ、音星の手を引っ張って全速力で民宿まで走った。
裏通りをグングンと走ると、民宿の玄関で霧木さんがガムを噛んでいた。なんだか、その姿はタバコを外で吸っている不良みたいだった。でも、どこか霧木さんはなんだか学校の先生なんだよな。
「あ。お帰りなさい」
「ただいま!」
「ただいま戻りました!」
俺は急いで民宿の玄関先で靴を脱いだ。隣の音星も草履を脱いでいた。
「あれれ?? 火端くん? それと音星さん? 何か臭いんだけど……まるで、超リアルなホラー映画館からの帰りみたいな……」
「え?! ごめんよ! 急いでるんだ!!」
「火端さん! すぐにお風呂へ行きましょう!」
俺は民宿の中に入ると、一目散に風呂場へと走った。
俺の後に音星も続く。
おじさんとおばさんに今の俺たちの身体の臭いをかがれると、確実に仰天して卒倒でもしてしまうだろうな。
「あ、二人共もうそんな仲なのね。お熱いのねー……ごちそうさま」
「ちがーう!!」
俺は赤面して叫んだ。
俺は廊下で風呂場の順番待ちをしていた。
今は音星が入っている。
廊下の掛け時計を見ると、現世では昼の14時20分だった。
玄関口でガムをかみ終えたのだろう。霧木さんが廊下を通って行く。
俺の目の前にくると、なにやら霧木さんはこちらを見つめてはしばらくクスクスと笑っていた。
俺は顔が更に真っ赤になった気がした。
「二人ともどうしたの? 喧嘩でもしたの?」
「あ、いや。実は……」
「ちょっと地獄という別世界へ行っていたのです」
音星が風呂場のガラス窓から顔を覗かせて、話に入ってきた。
「地獄? 地獄ねえ……地獄……?」
「あ、いや。実は……」
「あの。火端さんの妹さんが冤罪で地獄へ落ちてしまって……それから、妹さんを救うために八大地獄巡りをしているんですよ」
俺が触れてしまいそうなほど、接近している霧木さんから漂う香水の香りに、ひどくドギマギしていると、音星が助け舟をいれてくれる。
「どっわー、ここもあっついなあ!」
「ええ……良かった……間一髪でしたね。危うく熱でやられてしまうところでしたね」
真夏の八天街のちょうど昼下がりに、交差点の電信柱の傍に俺たちはいた。
赤信号の交差点から八天駅前のロータリーは、何故か自動車で混雑している。大通りを行く通行人の雑踏も殊の外いそいそとしているような錯覚を覚えた。
何もかも夏のうだるような暑さが包んでいた。
「火端さん? さすがにこうも暑さが続くと辛くなりますよね。アイスでも食べませんか?」
「お、おう」
音星の誘いで、俺は交差点を突き進み裏通りにある民宿の近くにあるコンビニへと向かった。街路樹の日陰ばかりを歩いて、コンビニでアイスクリームを買ってレジを済ましていると、店のガラス製の自動扉前にシロが座っていた。
「お! シロ!」
「私たちを、わざわざ迎えに来てくれたようですね」
ニャー……?
シロは俺たちの周囲を嗅ぎ回してきた。フンフンと鼻を鳴らして、小首をかしげる。それから、シロはフーッ、と威嚇した。
「うん? シロ?」
「どうしたのでしょう?」
シロの行動を疑問に思っていると、後ろにいるコンビニの店員もこちらを怪訝に見ていた。
うん??
……クンクン。
俺は自分の腕の臭いをかいだ。
「あー!!」
そういえば、俺たちは地獄で血の池に頭から突っ込んだんだった。そのせいで、身体中から血の臭いが強烈になっているんだろう。
「音星! おじさんとおばさんの民宿まで全力ダッシュだ!」
「はい?」
俺はシロを抱えると、買ったばかりのアイスをクーラーバッグに入れ、音星の手を引っ張って全速力で民宿まで走った。
裏通りをグングンと走ると、民宿の玄関で霧木さんがガムを噛んでいた。なんだか、その姿はタバコを外で吸っている不良みたいだった。でも、どこか霧木さんはなんだか学校の先生なんだよな。
「あ。お帰りなさい」
「ただいま!」
「ただいま戻りました!」
俺は急いで民宿の玄関先で靴を脱いだ。隣の音星も草履を脱いでいた。
「あれれ?? 火端くん? それと音星さん? 何か臭いんだけど……まるで、超リアルなホラー映画館からの帰りみたいな……」
「え?! ごめんよ! 急いでるんだ!!」
「火端さん! すぐにお風呂へ行きましょう!」
俺は民宿の中に入ると、一目散に風呂場へと走った。
俺の後に音星も続く。
おじさんとおばさんに今の俺たちの身体の臭いをかがれると、確実に仰天して卒倒でもしてしまうだろうな。
「あ、二人共もうそんな仲なのね。お熱いのねー……ごちそうさま」
「ちがーう!!」
俺は赤面して叫んだ。
俺は廊下で風呂場の順番待ちをしていた。
今は音星が入っている。
廊下の掛け時計を見ると、現世では昼の14時20分だった。
玄関口でガムをかみ終えたのだろう。霧木さんが廊下を通って行く。
俺の目の前にくると、なにやら霧木さんはこちらを見つめてはしばらくクスクスと笑っていた。
俺は顔が更に真っ赤になった気がした。
「二人ともどうしたの? 喧嘩でもしたの?」
「あ、いや。実は……」
「ちょっと地獄という別世界へ行っていたのです」
音星が風呂場のガラス窓から顔を覗かせて、話に入ってきた。
「地獄? 地獄ねえ……地獄……?」
「あ、いや。実は……」
「あの。火端さんの妹さんが冤罪で地獄へ落ちてしまって……それから、妹さんを救うために八大地獄巡りをしているんですよ」
俺が触れてしまいそうなほど、接近している霧木さんから漂う香水の香りに、ひどくドギマギしていると、音星が助け舟をいれてくれる。