第40話

文字数 850文字

…………

 閻魔大王がこちらへと来てくれて、弥生とのさっきの話を親切に伝えてくれた。とても忙しい身だと言うのに、俺は閻魔大王に頭が上がらなくなった。

「妹の火端 弥生はその罪悪感から、やはり地獄にいるといいだしたぞ。兄のお前はどうするんだ?」
「え?! 弥生が?!」
「えーっと、火端さん。どうしますか? 私はここまで死者たちを弔うための旅の途中で、その一環でもあるので、一緒にいますが、大事な妹さんのことは決めるのは火端さんですよ」

 そうだよな。
 音星はただの旅の道連れなんだ。
 今まで一緒に旅をしていただけなんだ。

 うーん?

 罪悪感か……。

 このまま地獄へいるのか? それとも地獄から脱出するのか?

 弥生……歩いて行く道を、お前はどちらにしようとしているんだ?
  
 そこで、俺のお腹がグウ―と鳴った。
 音星はクスリと笑うと、またあの坂道の角を指さして肩にぶら下げた布袋を降ろした。

「火端さん。もうそろそろ休憩にしませんか? お食事にしましょう。弥生さんは空腹になりませんが、肉体のある私たちは違うので」
「お、おう」
「むう、そうか。それは不便だな。だが、都合もいい。ゆっくりと妹の事を考えることだ。私は仕事がまだあるから行くが、お前の妹はここから大叫喚地獄へ戻ったぞ」
「はい! 色々とありがとうございました!」
「はい! とても助かりました! ありがとうございます!」

 俺と音星は閻魔大王と別れると、坂道の角へと歩いて行った。
 殺風景な角へ戻ると、立っている木が少し風で凪いだ気がした。

 木の根もそこかしこにあるので、ちょうど二つの座れる根に腰掛け、俺はクーラーバッグからおじさんが作ってくれた……特大塩おにぎりを取り出した。音星はいつもの梅干し入りおにぎりだ。

 それにしても、妹よ……お前は……俺が……。
 
 あ! そうだ! 答えはもう決まっているんだった。
 
 休憩が終わったら、大叫喚地獄へ妹を探しに行こう。
 弥生は必ず地獄から救いだす。
 兄のわがままだ。
 罪悪感もわかるが、その辺は本当に許してほしいな。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み