第5話

文字数 953文字

「ああ……そうなんだね。……俺は死んでしまった妹を探すためさ。ずっと昔から地獄の入り口を探しているんだ。今じゃ、ちょっとした地獄マニアさ。妹を助けるためなら何だってする! そして、本物の地獄へやっと来れたんだ! やったぜーー!! あはははは……何故か……なあ……妹は……冤罪の感じがするんだ。優しい子だったんだ」
「はあ、それはお辛そうですね。ここは八大地獄と呼ばれているところです。死者はその罪の大きさによって、それぞれ最下層へと向かうところなんです」
「はっ、八大地獄ー?! うっひゃーー! こええけど! やっっったぜーー! 八大地獄ならよく知っているよ! 等活地獄。黒縄地獄。衆合地獄。叫喚地獄。大叫喚地獄。焦熱地獄。大焦熱地獄。それに阿鼻地獄とあるんだよな」
「ええ、良くご存知で」

 音星がハッとして。、急に俺の後ろの方へ目を向けてから、口をキュッと結んだ。

 そして、口を開き静かに言った。

「あの火端さん。走れますか? それもかなり速く?」
「え??」

 俺は自分の真後ろを見た。
 途端に、驚いた。

「また、あいつか?!」
「逃げましょう!」

 八天街にいた。
 魑魅魍魎のろくろ首だ。

 激しい強風の中だというのに、物凄く長い大蛇のような首を円を描くように、洞窟の上下左右の壁面に素早く這わせてきた。そして、俺たちを追い掛け出した。ろくろ首の体自体の走りはあまり速くはないが。それでも、俺と音星は全速力で洞窟の風の中を奥の方へと走った。

「風! 強すぎないか! 足が鈍くなってくる! このままじゃ喰われてしまうぞ!」
「平気です! あっち! もうすぐ出口ですから!」

 その音星の言葉通りに、洞窟の行き止まりに差し掛かると。ちょうど、T字路になっていた。左手の道へ音星は走った。俺もそっちへと走ると、この洞窟の出入り口が見えた。でも、なんだか洞窟の出口が真っ赤になっている。

「この先は等活地獄です! 熱いですので、気を付けて下さい!」
「ああ、あの殺生をした人が堕ちる最初の地獄か! 針山とかがあるんだっけ!」
「そうです! よくご存知ですね!」

 等活地獄は、針山を歩かされる刑に、真っ赤に焼けた鉄岩の上で体を切断される刑がある。そして、それらの刑は一度ではない。死んでも蘇生させられ、それが繰り返されるといわれるている。
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