第41話 それも罪悪感?

文字数 1,108文字

 休憩が終わり、俺は坂道をその先にある地獄へと歩いていくことにした。音星も一緒に来てくれるそうだ。

 それにしても……。
 う、うっぷ……。
 腹がはち切れそうだった。

「火端さん。そんなに食べるからですよ。大丈夫ですか? まだ休憩していた方がいいですよ」
「いや、大丈夫だ。おじさんの特性大盛りご飯にはもう慣れたよ……うっぷ」
「もうー、そんなに頑張って全部食べなくても」
「ははっ、う……うー。うっぷ……」

 殺風景な坂道を大勢の死者たちと歩いた。
 閻魔大王が台座から、こちらをチラっと見たので、俺と音星は頭を下げた。
 延々と続く坂道は、そのまま門を潜り抜けると、今度は急な下り坂になっていた。

 下り坂をひたすらに降りていくと、それぞれの地獄へ行く巨大な洞穴があった。洞穴には細長い立札が、まるでお墓の塔婆のようにあって、等活地獄、黒縄地獄、衆合地獄と書いてあった。

 叫喚地獄。

 大叫喚地獄。

 あったぞ。

 延々とした下り坂を降りていくと、大叫喚地獄の入り口の洞穴を見つけた。
 空は相変わらず鳥もなく。風もなく。
 殺風景なところだ。

 そんな中に、洞穴が大口を開けている。
 妹はこんなところから、大叫喚地獄に再び戻って行ってしまった。

 罪悪感?

 そんなに大したものだろうか?
 確かに罪悪感は恐ろしいものだ。
 けれども、俺はどうしても妹を救いだしたかった。

 音星も来てくれているんだし。
 これは……ひっぱたいても妹を地獄から救いだしてみせるよ。

 あの世のことだ。

 後はあの世に任せてみようと思う。
 運が良ければ仏様が何とかしてくれるかもしれないからな! 

 大勢の死者と共に音のしない洞穴をくぐると、そこは意外にも明るかった。人魂が洞穴の天井に所狭しと浮かんでいたからだ。

「あ、そこ大きな石があるから足元に気をつけて」
「はい。こんなに明るいのに気づきませんでした」

 洞穴は、外と同じく下りの坂道になっていて、先に進むと、段々と坂が急になってきた。両脇を音もなく歩いて行く死者たちも、殊の外歩く速度が速くなって来る。

 俺も音星も半ば早歩きで、下り坂を降りていくと、広い空間にでた。

「あれ? ここは? また坂道だ」
「ええ、それにしても、とても広いところですね」

 俺たちは、そこで坂道を進んでいくと遥か向こう側に、巨大な扉がそびえ立っているのを見つけた。

 その扉の両側には、恐ろしい形相の大きな鬼の銅像が二つ置かれてあった。

 鬼の銅像は、どうやら右が青い色の身体をしていて、左は赤い色の身体をしていた。扉よりも大きな二つの鬼の銅像は、両腕を上げ、扉を通って行く大勢の死者たちに向かって、威嚇しているような何かに怒っているような姿勢をしていた。
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