1-10 呪われた転生者

文字数 745文字

 (はるか)は少しだけ不安そうな顔をした後、小さく頷いてから蕾生(らいお)に優しく語りかけた。
 ライくん、これから話すこと──驚くなって方が無理だと思うけど、出来るだけ落ち着いて聞いてくれる?
 ……わかった
 途中でなんか変な感じがするとか、具合が悪くなったら絶対言って
 あ、ああ……?
 ええっと、どこから話そうかな……
 あの子は一体誰なんだよ?
 そうだね、まずはそこからだ

 彼女はリン、今の名前は知らない

 今の名前?

 どういう意味だ?

 そのままの意味だよ、僕はまだあの子の今回の生については何も知らない


 けど、リンはずっと前から僕たちの仲間なんだ

(今回の生?)

 ずっと、って?

 うーんと、900年……くらい?
 は?
 僕ら三人は、ずーっと昔から何度も転生を繰り返してる仲間なんだ
 ええー……?

(漫画の話か、な?)


 よく知らんけど、それって仏教とかの考えだろ

 それで言うと、人間は皆生まれ変わってるってことじゃねえの?

 ああ、うん、まあそうだね

 

 だけど僕らの場合はその転生の回数が尋常じゃない

 ええー……?
 僕が知覚できてるだけでも、

僕らが転生したのは約900年間で34回

 ちょ、っと待てよ

 人の一生って昔でも50年くらいはあるだろ


 900年で34回ってことは単純に割っても……

 そうだよ、ライ


 冷静で嬉しいよ

 ──
 僕らは若く死んで、すぐ生まれ変わる


 そういう運命をずっと繰り返してる

 ──何故?
 (ぬえ)に呪われているから

 ヌエ

 ぬえ?

 ──鵺


  

 初めて聞くはずの単語なのに、蕾生はその言葉の意味を知っていた。

 

 何か、黒い、闇の中からやってくる、化物。奇妙な声。その獣を確かに知っている。

 

 辺りが急に曇り始めた。冷たい風が吹く。それに煽られて羽ばたく鳥の、哀しい声が響いていた。

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登場人物紹介

唯 蕾生(ただ らいお)


15歳。男子高校生

怪力なのが悩みの種

九百年前の武将、英治親の郎党・雷郷の転生した姿


周防 永(すおう はるか)


15歳。男子高校生

蕾生の幼馴染

九百年前の武将・英治親の転生した姿


御堂 鈴心(みどう すずね)


13歳。銀騎家に居候している少女

英治親の郎党・リンの転生した姿

永と蕾生には非協力

銀騎 星弥(しらき せいや)


16歳。高校一年生

銀騎詮充郎の孫で、銀騎皓矢の妹

鈴心を実の妹のように可愛がっている

永と蕾生に協力して鈴心を仲間に入れようとする


銀騎 皓矢(しらき こうや)


28歳。銀騎研究所副所長

詮充郎の孫

銀騎 詮充郎(しらき せんじゅうろう)


74歳。銀騎研究所所長

およそ30年前、長らく未確認生物と思われていたツチノコを発見、その生態を研究し、新種生物として登録することに成功した


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