6-6 鵺化の条件

文字数 1,023文字

 銀騎(しらき)詮充郎(せんじゅうろう)の執務室
 お祖父様、皓矢(こうや)です
 ノックをするとすぐに掠れた声で返事が聞こえた。
 入りなさい
 あの……他にも連れが──
 わかっている、みな入りなさい
 よお、クソジジイ
 ──三日ぶりだな
 なあに、指折り数えて


 そんなに僕らに会いたかった?

 もちろん。私は何十年と待っていたのでね
 ぬかせ
 (はるか)、口喧嘩してる場合じゃないだろ
 お祖父様、お願いがあって来ました
 ああ、わかっている


 星弥(せいや)のことだろう?

 ご存知だったんですか?
 報告はきておるよ。お前がどう対処するか見定めていた


 その様子ではできなかったのだな?

 申し訳……ありません
 当主になる者が情けないぞ。外部から助けを呼んだ挙句、失敗するとは
 ……
 星弥(せいや)を連れてきなさい
 ですが、お祖父様──
 星弥(せいや)を、ここに、連れてきなさい
 はい……
 お嬢様をお連れしました
 !!
 秘書の佐藤が軽く会釈をした後、移動式ベッドを押しながら部屋に入ってくる。そこには星弥(せいや)が寝かされていた。
 佐藤さん!あなた、家に行ったんですか!?いくらあなたでもこれは過干渉だ!
 申し訳ありません。博士のお時間の無駄を省くために出過ぎた真似をいたしました
 ああ、いい。手間が省けた


 皓矢(こうや)も落ち着きなさい

 ……
 佐藤はその場から離れて部屋のドア付近で待機している。足音も聞こえず、一瞬の出来事だった。


 昏睡を続ける星弥(せいや)の側まで来て、その顔をしげしげと見つめながら詮充郎(せんじゅうろう)は笑った。

 なるほど。とうに諦めていたこの子に発現するとはな……


 やはり奥が深い

 お祖父様、星弥(せいや)は──
 周防(すおう)よ、そちらの相棒が(ぬえ)化する条件はなんだったかな?
 それは、ライが精神的に、あるいは肉体的に大きな衝撃を受けた時に……
 そうだな、まあ、間違ってはいない


 星弥(せいや)にも同じことが起こったのだろうよ

 ……?
 星弥(せいや)はお前達をお友達と言った


「お友達」を欺いて私に会わせた精神的ストレス、ここで(ぬえ)の遺骸を目の当たりにし、(ただ)の運命を知った衝撃……

 まさか……
 条件が揃っているだろう?
 銀騎(しらき)さんは、やっぱり……
 お祖父様、それ以上は──
 そう、星弥(せいや)(ぬえ)化しようとしている!


 素晴らしい!ついに私は(ぬえ)を作り出すことに王手をかけたのだ!

 こ、の──
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登場人物紹介

唯 蕾生(ただ らいお)


15歳。男子高校生

怪力なのが悩みの種

九百年前の武将、英治親の郎党・雷郷の転生した姿


周防 永(すおう はるか)


15歳。男子高校生

蕾生の幼馴染

九百年前の武将・英治親の転生した姿


御堂 鈴心(みどう すずね)


13歳。銀騎家に居候している少女

英治親の郎党・リンの転生した姿

永と蕾生には非協力

銀騎 星弥(しらき せいや)


16歳。高校一年生

銀騎詮充郎の孫で、銀騎皓矢の妹

鈴心を実の妹のように可愛がっている

永と蕾生に協力して鈴心を仲間に入れようとする


銀騎 皓矢(しらき こうや)


28歳。銀騎研究所副所長

詮充郎の孫

銀騎 詮充郎(しらき せんじゅうろう)


74歳。銀騎研究所所長

およそ30年前、長らく未確認生物と思われていたツチノコを発見、その生態を研究し、新種生物として登録することに成功した


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