5-1 潜入

文字数 1,259文字

 次の日曜日。

 皓矢(こうや)が一日出張であると星弥(せいや)からの情報があったため、四人は決行することにした。

 こっちこっち
 皓矢(こうや)は出かけた?
 うん、今朝早くに
 家の方から倉庫に行けるのか?
 ええ。もともと研究員は立ち入り禁止の場所ですから、こちらから回れるようになっているんです
 じゃあ、レッツゴー
 (はるか)の囁きによる音頭とともに一同はゆっくりと静かに移動を開始した。
 周防(すおう)くんが剣道やってるとは知らなかったな
 (はるか)が背負ってきた竹刀入りの布袋を見上げて、星弥(せいや)は初めて見る物々しさに驚いていた。
 まあ、武将の生まれ変わりとしては基本だからね


 ちなみに弓道も習ってるよ

 (はるか)に武器持たせたら、俺も簡単には勝てない
 あのね、それ武器持ってる僕にも負けたことないっていう自慢だからね、ライくん
 そうなのか?
 ふふ、いつかの逆だね
 おしゃべりはそこまでです。見えてきました
 目の前には一軒家ほどの大きさの真四角な建物が立っていた。コンクリートで固められた、窓一つない丈夫な外見の周りには頑強な鉄のフェンス。さらにその上には忍び返しの有刺鉄線が伸びていた。
 なるほど、一般的なやつだね
 どうする?ぶち破るのは簡単だけど
(簡単なんだ……)
 それだと派手だなあ。どこかの面に入口があるんじゃない?
 ハル様、こちらです
 フェンスの一区画が扉になっている箇所があり、大きな南京錠がかかっていた。
 この錠前、随分錆びています
 ここから出入りしてる訳ではなさそうだね
 兄さんはどうやって入ってるんだろう……
 ま、それについては考えても無駄なので──うん、思った通りの形だ


 じゃあ、ライくん、これ壊しちゃっていいよ

おう
 蕾生(らいお)はその南京錠を掴むと、上部の曲がった鉄を引っ張った。するとすぐに南京錠は二つに分かれ、フェンスの入り口が開いた。
 すご……
 壊してしまってよかったんですか?ハル様
 ああ、帰りにこの錠前下げていくから


 付け焼き刃かもしれないけど、ないよりいいでしょ?

 (はるか)はウエストポーチから別の南京錠を取り出して見せた。蕾生(らいお)が壊したものにはあまり似ていないが、古くて錆びている点は共通している。
 さすが(はるか)、用意がいい
(流れるような連携だあ……)
 星弥(せいや)

 行きますよ

 あ、はい
 四人は倉庫の入口までの侵入に成功した。入口は重そうな鉄の扉で閉じられている。閂などの原始的な鍵はない。周りの有刺鉄線などというアナログな雰囲気とは逆に、近代的な電子ロックがかかっていた。
 最初にして最大の難関だね
 蹴破る──わけにもいかねえよな
 暗証番号……か
 言いながら星弥(せいや)は四桁の番号を押した。するとカチリという音ともに扉が開く。
 ──え!?
 あ、開いちゃった……
 星弥、何を入力したんです?
 冗談のつもりで兄さんの誕生日を……
 ──
 オウ……
 なんかごめん……
 まあいい、入口でまごまごしてる訳にもいかねえだろ。入ろうぜ
 そうだね、行こう
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登場人物紹介

唯 蕾生(ただ らいお)


15歳。男子高校生

怪力なのが悩みの種

九百年前の武将、英治親の郎党・雷郷の転生した姿


周防 永(すおう はるか)


15歳。男子高校生

蕾生の幼馴染

九百年前の武将・英治親の転生した姿


御堂 鈴心(みどう すずね)


13歳。銀騎家に居候している少女

英治親の郎党・リンの転生した姿

永と蕾生には非協力

銀騎 星弥(しらき せいや)


16歳。高校一年生

銀騎詮充郎の孫で、銀騎皓矢の妹

鈴心を実の妹のように可愛がっている

永と蕾生に協力して鈴心を仲間に入れようとする


銀騎 皓矢(しらき こうや)


28歳。銀騎研究所副所長

詮充郎の孫

銀騎 詮充郎(しらき せんじゅうろう)


74歳。銀騎研究所所長

およそ30年前、長らく未確認生物と思われていたツチノコを発見、その生態を研究し、新種生物として登録することに成功した


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