2-11 御堂鈴心、13歳

文字数 1,044文字

 リン……、お前を巻き込んだことは本当にすまないと思ってる


 だけど、そのことは乗り越えたはずだろう?

 そう、ですね。そうだと思ってました


 でもやっぱり思ってしまったんです


 貴方達に会わなければ、もっと長く生きられるかもしれないって

 ──!!
 それは、言ってはいけない言葉だ。

 蕾生(らいお)は頭に血が昇っていくのを感じつつもぐっと堪えた。

 言われた(はるか)がとても衝撃を受けていたからだ。

 ……お前だけ2年遅れて生まれた理由について考えたことは?
 わかりません


 何度も転生を繰り返しているうちに歪みが生じたのかも

 御堂(みどう)の家に生まれた理由も?
 ──偶然でしょう


 偶々(たまたま)、縁があっただけです

 お前はこれが偶然だって言うのか?


 今までのおれ達の運命に偶然なんて一度だってあったか?

 私は偶然だと思っています
 『御堂(みどう)鈴心(すずね)、13歳』!


 こんなに短い自己紹介文の中に数えきれないほど謎がある!


 お前だってわかってるんだろう!?

 ──もう、考えたくないんです
 リン、お前が何か大変なことを背負ってるのはおれだって気づいてる!


 お前に聞きたくても聞けなかったことだってある!


 言ってくれよ、考えるから!


 おれがお前も助けるから!

 悲しい叫びだった。


 助ける、と言っているのに「助けて」と手を伸ばしているのは(はるか)の方だ。

 この表情を一度だけ蕾生(らいお)も見たことがある。

 

 「僕には君が必要なんだ」と笑って差し伸べた手は、本当は手をとってくれるのを待っている。

 ハル様、私にはもう何もないんです
 リン──どうしてだよ



 側に──いてくれよ

 懇願する(はるか)の言葉も、隠さずに見せた本音も、断ち切るように鈴心(すずね)は立ち上がった。

 顔を伏せたままなのでその表情は見えない。

 話は終わりです。もう(ぬえ)なんて忘れてください


 そして、できるだけ長く──生きてください

 ──待てよ、鈴心(すずね)
 ……
 いちいち記憶がリセットされる俺よりも、お前の方が(はるか)と濃い時間を過ごしてきたんだろ


 なんでそんな簡単に切り捨てられるんだ?

 ……
 お前には今の(はるか)の言葉が──気持ちが、届かなかったのか?


 (はるか)はお前が必要だって言ってるんだぞ!

 ライ……、相変わらずハル様第一ですね
 相変わらずかどうかは覚えてねえ
 あなたはそれでいい


 ハル様を頼みます

 鈴心(すずね)!!
 静かに扉が閉まる。


 蕾生(らいお)の叫びは空を切って散っていった。

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登場人物紹介

唯 蕾生(ただ らいお)


15歳。男子高校生

怪力なのが悩みの種

九百年前の武将、英治親の郎党・雷郷の転生した姿


周防 永(すおう はるか)


15歳。男子高校生

蕾生の幼馴染

九百年前の武将・英治親の転生した姿


御堂 鈴心(みどう すずね)


13歳。銀騎家に居候している少女

英治親の郎党・リンの転生した姿

永と蕾生には非協力

銀騎 星弥(しらき せいや)


16歳。高校一年生

銀騎詮充郎の孫で、銀騎皓矢の妹

鈴心を実の妹のように可愛がっている

永と蕾生に協力して鈴心を仲間に入れようとする


銀騎 皓矢(しらき こうや)


28歳。銀騎研究所副所長

詮充郎の孫

銀騎 詮充郎(しらき せんじゅうろう)


74歳。銀騎研究所所長

およそ30年前、長らく未確認生物と思われていたツチノコを発見、その生態を研究し、新種生物として登録することに成功した


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