食い改めよ

文字数 1,164文字

 コンビニ食、ファストフード、スナック菓子、それに菓子パン……。

 ジャンキーな食べ物が頭に浮かぶが、無理矢理追い払う。

 宅間菜々は、コロナがきっかけに健康的になろうと考え、添加物や牛乳、肉も避けていた。偶然、書店で目にした自然派の本に影響され、実践していた。玄米菜食とも言われとわれる食事だった。

 最初は楽しく実践していた。確かに身体が軽く、肌も綺麗になった。しかし、フルタイムで働いている身だ。玄米菜食を用意するのは、とても大変で、逆にジャンキーなものを食べたくなってしまう。

 今日も会社の帰り、ふらふらとコンビニによる。チルドコーナーにあるプリン、ケーキ、大福などが異様に美味しく見える。

 他にもツナマヨおにぎり、チキン、サンドイッチ、レンジ麺、チョコレート……。

 自然派の本には、添加物やコンビニ食は悪魔のように書かれていたが、今は心が揺れる。そんなストレスを抱えていた菜々子は、最近具合も悪かった。

 玄米菜食を続けているのに、思い通りに健康じゃない。肉も卵もほとんど食べていないのに、なぜ?

 ふと、コンビニのパンコーナーに目をやると、「悪魔のカレーパン」というのも売っている。最近は悪魔と名のつく食べ物も多く、背徳感が刺激され、売れているのだという。

 しかし、このカレーパンは全く悪ない。単にハイカロリーで美味しいだけ。それなのに人間に勝手に悪魔呼ばわりされるとは。むしろ、自制できずに食べる人の心が悪なのでは? 

 そんな事を考えていたら、自分も十分、食べ物をジャッジしていた。添加物の食品も、それ自体は悪でもなんでもない。夜勤や残業が続いてスーパーに行けない人は、コンビニの方が便利なのかもしれない。料理初心者の人は添加物入りの調味料を使った方が簡単かもしれない。お金のない人は、栄養素を考える暇もないかもしれない。人それぞれ事情もあるが、何かの食品が悪とか善とか勝手にジャッジしていたし、そう出来ない人を見下したりもしていた。

 そして、その心は何より自分を苦しめ、玄米菜食に固執し、余裕がなくなっていた。本に書いてある事を真に受け、自分の頭で考えないので洗脳されたようにもなっていた。これだとカルトみたいではないか。菜々子は一人暮らしだが、もし誰かと同居していたら、この食生活を無理矢理押し付けたりしてただろう。

「うーん、私のライフスタイルでは、玄米菜食はユルくやった方がいいかもな……」

 そう呟き、久々にツナマヨおにぎりとチキンを買って帰った。

 久々に食べたジャンキーな食事。でも、いつもより美味しく感じた。確かにツナマヨは味が濃いし。チキンが油でベトベトしていたが、久々に食べたら美味しかった。

 たまに食べるから、美味しいのかもしれない。

 玄米菜食も辞めるつもりはない。ただ、苦しまない程度に適当にやろうと思う。
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