あなたの飼い主をおぼえよ

文字数 741文字

 私は真白な文鳥を飼っていた。もちろん、ペット可のマンションでだ。

 お餅みたいに真っ白で、とても可愛い子だ。名前は、サラだ。実は私はクリスチャンで、聖書の登場人物からとった名前だった。

 楽しい文鳥ライフを送っていたが、姉が遊びに来た。

「サラちゃん可愛い!」

 心なしかサラは、姉に懐いているような。初対面である姉の肩や指に乗り、何だかあっという間に仲良しになってる。

「サラ?」

 私は声をかけても、無視してきた。これにはカチンとする。

 確かに姉は美人で、都内で社長秘書というオシャレな仕事をしていた。だからサラも懐いているのだろうか。

 飼い主は私だよ、無視しないでって思う。

 そんな事を感がながら、聖書で神様が偶像を拝む者に怒っているシーンなどを思い出す。

 こんな気持ちだったのかもしれない。好きだからこそ、自分だけ見てほしいって思う。

 逆に偶像の神々は「浮気しても何でもいいっす♪」というノリだ。確かに寛容だ。しかし、何でも適当に許す人みたいな気持ち悪さも感じてしまった。浮気ばっかりしているパートナーでも「全然オッケー☆」と適当にあしらっている感じというか。

 サラを通してだが、神様の事を考えてしまう自分もやっぱり腐ってもクリスチャンなのだろう。

「サラちゃん」

 姉が帰ると、再びサラに声をかけた。

「ちっち」

 鳴き声が聞こえた。首を傾げているようだが、私の事を忘れてはいなかったようだ。

「サラ〜!」

 何だか今日はいつも以上にサラが可愛く見える。もっちりとしたお餅みたいなことボディももちろん、大きな目、桜色のくちばしも可愛く見える。

 もう飼い主の私を忘れないでね。

 同時に他の神なんて絶対浮気したくないと心に決めた。

「ちっち、ちっち」

 私の決意に同意するように、サラは再び鳴いていた。
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