偶像から真のネコへ
文字数 1,074文字
佐々木優吾は、猫が大好きだった。家でも毛並みが美しいアメリカンショートヘアを飼い、配信動画にも一緒に出演する事も多かった。
優吾は大学で心理学などを学んだ後、アメリカに渡り、さらにカウンセリングなどの技術も学んだ。帰国後は心理カウンセラーとして活躍していた。見た目も良く、動画を配信して収入の一部にしていた。撮影場所は家の書斎が多かった。大量の本が背景にあると、知的に見せる心理的効果があった。たまに白衣を着る事もあるが、これも心理的な効果を狙ったものだった。とある実験では白衣も社会的信頼度が上がるというものがあった。医者が無条件に信頼されやすいのも白衣の効果もあるかもしれない。
そんな小手先なテクニックとルックス、それに飼い猫を武器に再生回数を伸ばしていたが、炎上してしまった。
「ぶっちゃけ猫様が一番だよ。障害者を生かしておくなんて税金の無駄だね。●んだ方がいいんじゃない?」
この発言が問題になり、炎上した。決まっていた仕事も全部キャンセルになり、家で引きこもり生活が続く。
顔も動画でバレているので、勝手に写真を撮られる事もあり、外出が怖くなっていた。飼い猫も取り上げられ、今は親戚が飼っているが、悲しくて仕方ない。
「ああ、猫様……」
しかし返事はなく、部屋の中は独りだった。
もしかしたら、自分は何か間違っていたのかもしれない。いや、間違っていた。猫を神様のように崇め、別物にしていた。猫は猫なのに、可愛がりすぎた。何か心を救ってくれる存在だと勘違いもしていた。実際、こんな事になっても猫は自分を救ってくれはしないのに。
優吾は今まっで撮り溜めていた飼い猫の写真や動画を見ていた。見ていると涙が出てきた。全く癒されない。もちろん、心も救われない。
確かに少しは気が紛れていたが、心にぽっかり空洞ができていた。これはカルト信者が教祖を崇めているのと何が違うのだろうか。何の力も無いものを神様にしていた点は、彼らと同じだった。自分がやっていた事は、猫を神様にし、偶像にしていたといえば否定はできない。
そんな虚しさを感じている日々が過ぎ、炎上もおさまっていった。他に芸能人や政治家などのスキャンダルもたくさんあったからというのもあるだろう。
仕事も徐々に戻り、飼い猫も帰ってきた。今見る猫は、とっても可愛いが、神様には見えなかった。
「ごめんよ。もう君を神様にはしないからね」
猫にも頭を下げる。仕事関係者には頭を下げるのは慣れてしまっていたが、今は心から猫に謝っていた。
「にゃ?」
猫はそんな優吾の心など知らず、可愛い鳴き声をあげていた。
優吾は大学で心理学などを学んだ後、アメリカに渡り、さらにカウンセリングなどの技術も学んだ。帰国後は心理カウンセラーとして活躍していた。見た目も良く、動画を配信して収入の一部にしていた。撮影場所は家の書斎が多かった。大量の本が背景にあると、知的に見せる心理的効果があった。たまに白衣を着る事もあるが、これも心理的な効果を狙ったものだった。とある実験では白衣も社会的信頼度が上がるというものがあった。医者が無条件に信頼されやすいのも白衣の効果もあるかもしれない。
そんな小手先なテクニックとルックス、それに飼い猫を武器に再生回数を伸ばしていたが、炎上してしまった。
「ぶっちゃけ猫様が一番だよ。障害者を生かしておくなんて税金の無駄だね。●んだ方がいいんじゃない?」
この発言が問題になり、炎上した。決まっていた仕事も全部キャンセルになり、家で引きこもり生活が続く。
顔も動画でバレているので、勝手に写真を撮られる事もあり、外出が怖くなっていた。飼い猫も取り上げられ、今は親戚が飼っているが、悲しくて仕方ない。
「ああ、猫様……」
しかし返事はなく、部屋の中は独りだった。
もしかしたら、自分は何か間違っていたのかもしれない。いや、間違っていた。猫を神様のように崇め、別物にしていた。猫は猫なのに、可愛がりすぎた。何か心を救ってくれる存在だと勘違いもしていた。実際、こんな事になっても猫は自分を救ってくれはしないのに。
優吾は今まっで撮り溜めていた飼い猫の写真や動画を見ていた。見ていると涙が出てきた。全く癒されない。もちろん、心も救われない。
確かに少しは気が紛れていたが、心にぽっかり空洞ができていた。これはカルト信者が教祖を崇めているのと何が違うのだろうか。何の力も無いものを神様にしていた点は、彼らと同じだった。自分がやっていた事は、猫を神様にし、偶像にしていたといえば否定はできない。
そんな虚しさを感じている日々が過ぎ、炎上もおさまっていった。他に芸能人や政治家などのスキャンダルもたくさんあったからというのもあるだろう。
仕事も徐々に戻り、飼い猫も帰ってきた。今見る猫は、とっても可愛いが、神様には見えなかった。
「ごめんよ。もう君を神様にはしないからね」
猫にも頭を下げる。仕事関係者には頭を下げるのは慣れてしまっていたが、今は心から猫に謝っていた。
「にゃ?」
猫はそんな優吾の心など知らず、可愛い鳴き声をあげていた。
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