迷える羊
文字数 1,464文字
落とし穴に落ちたっぽい。
そんな事を思いながら、私はベッドの上で寝転がりながら、YouTubeを見ていた。最近は夜眠れなくなり、羊の動画を見ていた。別に羊を数えても眠くなってくるわけでは無いが、モコモコな毛や優しい目を見ていると、少しは癒された。
今は仕事をしていない。前職でパワハラにあった。毎日のように上司から罵倒を受けすっかりメンタルを病んでいた。
朝、身体が動かなくなり、ほぼ強制的に退職となり、実家で引きこもりのような生活だった。無職ニートである。現状、社会には何の役にも立っていない。子供部屋で引きこもっている私は、客観的に見て酷いだろう。ネットで子供部屋おばさんやおじさんの記事を見ると、心を引っ掻かれた気分になった。
こうして仕事が上手くいかないと人間は簡単に落とし穴の落ちるらしい。しかし、その這い上がり方は全くわからず、子供部屋おばさんを続けていた。
そんなある日、叔母が訪ねて来た。両親は仕事に出掛けてしまったので、私が一人で叔母の対処しなければならなかった。
一応客間に通し、お茶なども出す。子供部屋でYouTubeを見ていた私は、お茶を出すだけでも面倒だった。
それに叔母は苦手だった。カルトにハマり、毎日のように勧誘しに来た。また、お金を借りに来た事もあり、全く良い印象はなかった。人の事は言えないが、叔母みたくはなりたく無い。
しかし、今日見る叔母は憑き物が落ちたようにサッパリした顔だった。昔は化粧も濃かったが、今はほとんど塗っていないようだった。服装も白シャツとチノパンで地味だった。昔はブランドものの服を着込んでいたはずだったが。
聞くと、叔母はカルトをやめ、クリスチャンになり、教会で働いているという。全く想像していなかった展開に私は目を丸くする。しかも、今までの事も謝罪してきた。あの叔母が頭を下げているなんて一体どういう事だろうか。驚きで私はしばらく声も出なかった。
「叔母さん、ぜいぶんと変わったね」
「変わったのは、神様のおかげ。変えてくれたんだよ」
叔母は優しく微笑みながら、聖書にある迷い出た羊の話をしてくれた。そこでは九十九匹の羊を置いて、迷い出た一匹の羊を探しに行く神様の話が書いているらしい。神様は小さな一匹も大切にしているのだと言う。
「へえ。悪い話では無いけどね」
「うん。この話を見て、自分も見捨てはられてないって気づいたの……。あなたも大丈夫よ」
なぜか叔母に励まされてしまった。正直、叔母の生き方はよくわからないし、宗教に良いイメージは無いし、聖書の事もよくわからないが、その心だけは伝わってきた。なぜか鼻の奥がツンと痛み、泣きたくもなってきた。
「叔母さん、私、大丈夫だと思う?」
「大丈夫。私ですら、人に謝れるようになったからね」
「そっか……」
ついつい全てを悲観的には考え過ぎていたかもしれない。
「子供部屋おじさんのニュースだって、不動産会社がわざと流しているかもよ? そうすれば、一番儲かるものね」
「叔母さん、それ陰謀論じゃない?」
「でも、全てのニュースは広告だと思って見る視線も必要よ。不安になれば経済がよく回るのは事実だから」
そんな視点もあったのか。目から鱗だった。確かに、そう考えれば、肩の荷も降りてきた。
「叔母さん、一緒のお昼でも食べない? 近所の牛丼屋だけど」
「いいじゃない。一緒にいきましょう!」
こうして久々に叔母と外出し、牛丼を食べた。今は少し心を休める時なのかもしれない。とりあえず、何かの広告かもしれないネットの記事は見るのを辞める事にした。
そんな事を思いながら、私はベッドの上で寝転がりながら、YouTubeを見ていた。最近は夜眠れなくなり、羊の動画を見ていた。別に羊を数えても眠くなってくるわけでは無いが、モコモコな毛や優しい目を見ていると、少しは癒された。
今は仕事をしていない。前職でパワハラにあった。毎日のように上司から罵倒を受けすっかりメンタルを病んでいた。
朝、身体が動かなくなり、ほぼ強制的に退職となり、実家で引きこもりのような生活だった。無職ニートである。現状、社会には何の役にも立っていない。子供部屋で引きこもっている私は、客観的に見て酷いだろう。ネットで子供部屋おばさんやおじさんの記事を見ると、心を引っ掻かれた気分になった。
こうして仕事が上手くいかないと人間は簡単に落とし穴の落ちるらしい。しかし、その這い上がり方は全くわからず、子供部屋おばさんを続けていた。
そんなある日、叔母が訪ねて来た。両親は仕事に出掛けてしまったので、私が一人で叔母の対処しなければならなかった。
一応客間に通し、お茶なども出す。子供部屋でYouTubeを見ていた私は、お茶を出すだけでも面倒だった。
それに叔母は苦手だった。カルトにハマり、毎日のように勧誘しに来た。また、お金を借りに来た事もあり、全く良い印象はなかった。人の事は言えないが、叔母みたくはなりたく無い。
しかし、今日見る叔母は憑き物が落ちたようにサッパリした顔だった。昔は化粧も濃かったが、今はほとんど塗っていないようだった。服装も白シャツとチノパンで地味だった。昔はブランドものの服を着込んでいたはずだったが。
聞くと、叔母はカルトをやめ、クリスチャンになり、教会で働いているという。全く想像していなかった展開に私は目を丸くする。しかも、今までの事も謝罪してきた。あの叔母が頭を下げているなんて一体どういう事だろうか。驚きで私はしばらく声も出なかった。
「叔母さん、ぜいぶんと変わったね」
「変わったのは、神様のおかげ。変えてくれたんだよ」
叔母は優しく微笑みながら、聖書にある迷い出た羊の話をしてくれた。そこでは九十九匹の羊を置いて、迷い出た一匹の羊を探しに行く神様の話が書いているらしい。神様は小さな一匹も大切にしているのだと言う。
「へえ。悪い話では無いけどね」
「うん。この話を見て、自分も見捨てはられてないって気づいたの……。あなたも大丈夫よ」
なぜか叔母に励まされてしまった。正直、叔母の生き方はよくわからないし、宗教に良いイメージは無いし、聖書の事もよくわからないが、その心だけは伝わってきた。なぜか鼻の奥がツンと痛み、泣きたくもなってきた。
「叔母さん、私、大丈夫だと思う?」
「大丈夫。私ですら、人に謝れるようになったからね」
「そっか……」
ついつい全てを悲観的には考え過ぎていたかもしれない。
「子供部屋おじさんのニュースだって、不動産会社がわざと流しているかもよ? そうすれば、一番儲かるものね」
「叔母さん、それ陰謀論じゃない?」
「でも、全てのニュースは広告だと思って見る視線も必要よ。不安になれば経済がよく回るのは事実だから」
そんな視点もあったのか。目から鱗だった。確かに、そう考えれば、肩の荷も降りてきた。
「叔母さん、一緒のお昼でも食べない? 近所の牛丼屋だけど」
「いいじゃない。一緒にいきましょう!」
こうして久々に叔母と外出し、牛丼を食べた。今は少し心を休める時なのかもしれない。とりあえず、何かの広告かもしれないネットの記事は見るのを辞める事にした。
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