ある男の改心
文字数 1,175文字
「陰謀論者は似非科学好きのカルト信者っと」
ポチポチ。
博之は、SNSに書き込んだ。こうやってオカルト的な陰謀論者や反ワクチンに論破するのが、楽しかった。
「タタンメン食った後に交通事故に遭ったら、タンタメンが死因ですかー?」
こうやって煽る言葉を書き、彼らが顔を真っ赤にして反論してくるのが快感だった。反ワクチン派を論破している俺すごい、頭いい、サイコー! SNSをやっていると、脳内から幸福物質がブシャーと吹き出すようだった。
しかし、時は流れ2023年になった。五類になり、マスクも自由化。ワクチンを打ち、家族を失った人の声などSNSに上がるようになったが。
「みんな、またマスクしようぜ!」
そうSNSに書き込んだが、思った以上の反応がない……。インプレッシュも伸びず、アンチも何も言ってこない。スルーされている状態だった。
「なんだよ」
ぶつぶつ文句を言いながら、外に出る。SNSでは大きな顔をしている博之だが、いい歳でも彼女をいた事もなく、コロナ騒動の前は女叩きを一生懸命やっていた。
イライラしながら家に近所の道を歩く。この辺りは田舎だが、畑の横に変な看板があるのに気づく。
わざわいなるかな たかぶる者
そう書いてある。黒字に白抜き文字で、なんか怖い。
「はあ?」
思わず反発したくなる。思わずこの変な看板に小石を投げた。意外と力が強かったのだろうか。看板は細かな傷がつく。
そして翌日。そんな事はすっかり忘れていたが、SNSが炎上していた。
過去に女叩きしていた裏垢がバレ、フェミニスト達がこぞって炎上させたようだった。自殺したアイドルに悪口を送っていた事も晒され、職場にも電話がかけられていた。
「た、助けてくれ!」
悲鳴をあげた。
同時に目が覚めた。自分はベッドの上にいて、どうやら悪夢だったらしい。自分のSNSを見ても、相変わらずフォロワーもいて、反ワクチン派を煽っているコメントが目につく。
こんなコメントを書く自分は、疫病が終息し、心から世界が平和になる事を願っていか? 他人が幸せになる事を願っていたか?
ふと、そんな考えも浮かぶ。そんな動機はなかった。むしろ、自分の正しさをごり押ししていただけのような……。
タイミングが悪い事に薬害で家族を失った人のインタビュー記事もSNS上に流れていた。これ以上犠牲者が出ないよう必死に訴えていた。
「いや、何かくだらねぇな……」
博之はそう呟き、SNSを削除し、再びベッドに潜り、目を閉じる。
今日は何だかよく眠れた。
SNS上とはいえ、誰かを叩いたりするのは、想像以上にストレスだったらしい。他人ではなく、何より自分の心を傷つけてる行為だったのかもしれない。悪口は自傷行為だったと気づく。フォローがたくさんいるSNSを手放したのは、少し後悔したが、ぐっすり眠れた方が幸せなのかもしれない。
ポチポチ。
博之は、SNSに書き込んだ。こうやってオカルト的な陰謀論者や反ワクチンに論破するのが、楽しかった。
「タタンメン食った後に交通事故に遭ったら、タンタメンが死因ですかー?」
こうやって煽る言葉を書き、彼らが顔を真っ赤にして反論してくるのが快感だった。反ワクチン派を論破している俺すごい、頭いい、サイコー! SNSをやっていると、脳内から幸福物質がブシャーと吹き出すようだった。
しかし、時は流れ2023年になった。五類になり、マスクも自由化。ワクチンを打ち、家族を失った人の声などSNSに上がるようになったが。
「みんな、またマスクしようぜ!」
そうSNSに書き込んだが、思った以上の反応がない……。インプレッシュも伸びず、アンチも何も言ってこない。スルーされている状態だった。
「なんだよ」
ぶつぶつ文句を言いながら、外に出る。SNSでは大きな顔をしている博之だが、いい歳でも彼女をいた事もなく、コロナ騒動の前は女叩きを一生懸命やっていた。
イライラしながら家に近所の道を歩く。この辺りは田舎だが、畑の横に変な看板があるのに気づく。
わざわいなるかな たかぶる者
そう書いてある。黒字に白抜き文字で、なんか怖い。
「はあ?」
思わず反発したくなる。思わずこの変な看板に小石を投げた。意外と力が強かったのだろうか。看板は細かな傷がつく。
そして翌日。そんな事はすっかり忘れていたが、SNSが炎上していた。
過去に女叩きしていた裏垢がバレ、フェミニスト達がこぞって炎上させたようだった。自殺したアイドルに悪口を送っていた事も晒され、職場にも電話がかけられていた。
「た、助けてくれ!」
悲鳴をあげた。
同時に目が覚めた。自分はベッドの上にいて、どうやら悪夢だったらしい。自分のSNSを見ても、相変わらずフォロワーもいて、反ワクチン派を煽っているコメントが目につく。
こんなコメントを書く自分は、疫病が終息し、心から世界が平和になる事を願っていか? 他人が幸せになる事を願っていたか?
ふと、そんな考えも浮かぶ。そんな動機はなかった。むしろ、自分の正しさをごり押ししていただけのような……。
タイミングが悪い事に薬害で家族を失った人のインタビュー記事もSNS上に流れていた。これ以上犠牲者が出ないよう必死に訴えていた。
「いや、何かくだらねぇな……」
博之はそう呟き、SNSを削除し、再びベッドに潜り、目を閉じる。
今日は何だかよく眠れた。
SNS上とはいえ、誰かを叩いたりするのは、想像以上にストレスだったらしい。他人ではなく、何より自分の心を傷つけてる行為だったのかもしれない。悪口は自傷行為だったと気づく。フォローがたくさんいるSNSを手放したのは、少し後悔したが、ぐっすり眠れた方が幸せなのかもしれない。
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