第35話 「お子ちゃま」ではなくなった日。

文字数 570文字

 四十路も半ば、もはや人生折り返し。

 そんなお年頃になると、ふと今までのことをいろいろと思い返してみることもあるわけで…… 

 私が幼稚園年長組の頃から、毎年夏になると、父の車に乗って家族総出で、近くの海水浴場に出かけていました。私は無邪気で、外で遊ぶことしかしない暴れん坊(汚れるような外遊びが大好き)な「お子ちゃま」だったので、海でももちろん大はしゃぎ。唇が青紫色になるまで海中に入って遊んだものです。懐かしいですね。
 帰り際、砂浜から駐車場まで歩き、父の車に乗り込みます。足は砂まみれ。両親ともにおおらかな人なので、砂を落としてから車に乗れなんて、口うるさく言いませんでした。なので私も、足の砂なんてまったく気にせず車に乗り込んでいました。
 
 覚えています。小学5年生の夏でした。

 例のごとく海水浴場に出かけた帰り際。父の車に乗り込むときでした。足についてる砂を見て、
「うっとうしいなぁ」
と軽く舌打ちをしてしまった、そう、あの瞬間。

 何とも言えない、あの違和感。

 今までそんなこと一度だって思わなかったくせに!
 どうした、私?

 ハッとしました。衝撃が、私の心を襲いました。

 じわじわと、自分が何か「変わってしまった」ということを強烈に感じました。あの衝撃はなかなか忘れられるものではないですね。

 はるか30数年前の、晩夏の思い出でした。
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