第1話 リーダーへ。

文字数 1,421文字

 ここ数年に渡って、ある大国とその近隣の一国家が争いを続けています。すぐ終わると思われたこの「戦争」ですが、なかなかその終着点にはたどり着けていないようです。

 大国に屈せず、戦うことを選んだ一国家の大統領は、世間から「勇敢なリーダー」として英雄視されているようです。でも、申し訳ないけども、私にはそうは思えないんです。

 「勇敢なリーダー」へ。
 あなたが戦うことを選んだばっかりに、あなたが愛する自国の国民が命を落としているという、まぎれもない現実があるんです。その死んでいった命をどう考えるのでしょうか?「英霊」として、「尊い犠牲」として、何の意味もない「名誉」を与えて終わりですか?もし、あなたの子供が、「戦いに行って、人を殺してくる」と言ったら……あなたは笑顔で送り出せますか?あなたは、本当に自国民を愛していますか?正義の、つもりですか?あなたには「戦わない勇敢さ」を示してほしかった。

 「ある大国のリーダー」へ。
 何があなたをそんなにも駆り立てるのでしょうね?私には分かりません。ただ言えることは、あなたの判断基準は、自分の生い立ちや歴史認識によって醸成された殺伐・鬱屈とした精神、つまり、「怨念」によって左右されているということ。極めて個人的な理由でもって、あなたは「戦争」を始めましたね。とても、つまらないことだと思います。残念なことだと思います。あなたの「魂」が救われる日が、どうか訪れように。

 「我が国のリーダー」へ。
 行動してください。「非常に遺憾です」と非難しただけでは、何も変わりません。あなただってそのくらい知っているでしょう?仲良しグループの「友好国」とグルになって、むしろ焚きつけてどうするのですか?なぜ、自国開催の国際会議の場に、「勇敢なリーダー」は招き、「大国のリーダー」は招けなかったのですか?絶好の機会だったのに。あなたが自負する「聴く力」を発揮する、これ以上ない場だったのでは?「車座で聴く」とか言ってませんでしたっけ?それこそ「遺憾」でしかありません。国際会議期間中に、当事者のリーダーとみんなで温泉にでも入り、裸の付き合いでもすれば……まあ、無理でしょうね。

 「すべての国のリーダー」へ。
 軍事支援金や軍事品の提供をするということは、この「戦争」に参加しているのと同じことなのではないでしょうか?「戦うことへの支援」ではなく、「戦いを終わらせることへの支援」をするべきだと思うのですが……。話し合いの場を設けるでもいいし、自ら説得に行くでもいいし。「殺し合い、やむなし」という今の雰囲気、これは、誰が考えてもおかしいのでは。あと、この機会に、「何かを試そう」としてませんか?新しい兵器の威力とか?国際関係の強固さとか?どうすれば儲けられるか、とか?


 私がいうことは無責任だし、当事者の二国間には地理的・歴史的・民族的・宗教的・経済的な複雑な事情があることも、また、我が国を含め、他の「先進国」といわれる国々との絡みや思惑があることも察せられます。武力行使をしないように、交渉を続けていた時期もあったでしょう。努力はしたけども、結果としてこうなってしまった……ということなんだと思います。

 でも、だからといってそれでいいとは、あなたたちの選択が正しかったとは、私にはとても思えないのです。

 残念ながら、私にはこの戦争を止めるための力も策も知恵もありません。ごめんなさい。

 一方的な放談、失礼しました。

 
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