第37話 自分にがっかり。

文字数 858文字

 私の学生時代、当時はいわゆる「コギャル文化」が隆盛を極めていました。女子のファッションは「金髪・茶髪・ガングロ・細眉・ミニスカ・厚底ロングブーツ」が定番となり、ともすれば「不潔でだらしない」感じ。私の友人にも「コギャル」はいました。それが普通でした。いや~時代ですねぇ(遠い目)。
 
 大学の最寄り駅からキャンパスまでの、住宅街を抜ける道すがら。私の前を一人で歩く、同じ大学の学生と思しき見知らぬ「コギャル」が。例によって「不潔でだらしない」感じ。私はほどよく彼女と距離を取り、後に続いて歩いていました。
 ふいに、我々の横を幼稚園年長さんかな?っていうくらいの男の子が駆け抜けていきました。どうして走っていたのかは分かりません。しかも一人で。まあ、私は特に気にもかけず歩き続けました。
 我々を追い越してしばらく。走っていたその子がいきなりつまづいて転んだんです。私がアッと思った瞬間、前を歩いていた「コギャル」が駆けだしました。走りづらそうな厚底ロングブーツなのに。
 「大丈夫?痛くない?」
なんて言いながらだったと記憶しています。彼女は、転んだ男の子を介抱し始めました。
 「ケガはないね?よし、大丈夫かな?お母さんは?」……

 しゃがんで男の子に対している「コギャル」の脇を、私は無言で、通り抜けました。

 何も「できなかった」自分。
 いえ、違います。
 何も「しなかった」自分が、そこにいたんです。

 自分に対して、激しく幻滅。

 さらに、「コギャル」の彼女を「だらしない」人間で、人のことなんて助けるはずがないと決めつけていた自分に気づき、ますます嫌気が。 「自分は偏見を持って人を見ている」ということを、そのときはっきり自覚しました。そうはなりたくないなぁとか常々思ってたくせに……心底、自分にがっかりでした。自分の醜さと愚かさとが露呈した格好となり、しばらく凹んでいましたね。ああ、情けなや。恥ずかしや。

 あの「コギャル」彼女に謝りたい。今でもそう思っています。

 皆さんもそんな、心えぐられるような経験、ありますか?

 
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