第11話

文字数 1,338文字

 週末明け。最もだるい曜日。月曜日の朝。

 俺は、三島沙由里に呼び出されていた。
 なんだか最近よく呼び出しを受けている気がする。
 恵実里の呼び出し。
 蘭花に強制的に引っ張り出されたピンポーンダッシュ。

 そして、人気女子に名指しで呼ばれることによって、俺の胸の鼓動は速くなっていた。
 沙由里はベランダに立っていて、柵にもたれて外を眺めていた。
 長く白い足がミニスカートから伸び、シャツの上には大きなメロンが2つ。
 高く結ばれた茶色の髪がかすかに揺れ、茶の瞳がパッチリ開かれている。

「なんでしょうか?」

 色気のある彼女を見ると、敬語になってしまう。
 流石に蘭花に次ぐ美人なだけあって、俺の胸が騒ぐ。

「ちょっと質問なんだけど」
「は、はいっ!」

 彼女は俺の様子を見て、明るい向日葵のような笑みを浮かべた。

「単刀直入に言うよ。蘭花のこと好き?」

 俺の顔が歪み、は?と剣呑な声が出る。

「ちょっと、怖いよ」

 ふふふ、と沙由里が口の端を上げた。
 俺はすぐに元の顔に戻し、心を落ち着かせる。

「どうしてそう思ったのですか?」
「あら、敬語を使わなくていいのよ?」
「話がずれてます」
「あ、すみません。えっとね、理由はー」

 沙由里がその邪悪な笑みを深めた。

「仲が良いからよ」

 うん、デジャブ。
 俺の顔は硬直した。
 二人から言われるってことは本当にそういう風に見えるからなのか?
 いや、気のせいだ。そんなことはない……

「話によると、蘭花は幹人君の家へ行っていたって?」

 あぁ、ピンポーンダッシュのことか。
 あれは説教しただけだ……って何でこいつ知ってるん?
 俺は理星と弘秀に視線を飛ばした。
 あのアホら、言ったのか?
 彼らはただ俺と沙由里が一緒にいるところを見て笑っているだけで、何もしていない。

「どうして知っているんですか?」

 彼女はいたずらっぽく口の端を上げた。

「女子の情報通信、甘く見ない方がいいよ」

 背中にゾワリと鳥肌が立った。
 女子ってそこらへんにただいるだけじゃなくて、俺らのこと見ているのだ。
 俺は一歩沙由里から離れた。

「まあ、それで蘭花と貴方がどういう関係なのかを知りたいの」

 沙由里の茶の瞳がまっすぐ俺を射た。

「なんもねぇよ。っていうか何でそんなに知りたいんだ?」

 俺の良い言葉使いは砕けた。
 もう、面倒になったからだ。

「応援したいじゃない」

 俺は意味が分からず頭を抱える。
 女子というものはこんなにも理解できないものなのか。

違うの?付き合ってるとか、好きだとか」
「今はをそんなに強調すんな。あと蘭花とは一生絶対そんな関係にはならん!」
「あらそう、残念だわ」

 残念そうに附く彼女は美しいが、俺にはそれが少し怖く見える。
 女子というものは、思ったより恐ろしい生き物らしい。
 俺はいてもたってもいられなくなったので、
 黙ったまま教室に足を入れる。

「またな」

 沙由里と別れ、理星と弘秀のもとに戻った俺は、何を話していたのか、と質問攻めにされた。
 一方先ほど教室に入ってきた蘭花は沙由里のことを睨んでおり、沙由里は何かを考える仕草を見せていた。
 もう、面倒事には巻き込まれたくない。
 でもこれからも蘭花絡みの面倒なことはたくさんあるだろう。
 これから先を見据えて、俺は大きくため息を吐いた。
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