第1話
文字数 1,075文字
見栄原高校二年、三校時の授業中。
俺は昨日見た美少女のことを思い出した。
こげ茶の髪。スタイルのいい体。
目の奥に焼きついたその姿は俺の頬を綻ばせる。
緩んだ頬を叩いていると、
「なにニマニマしてんの、キモい」
隣の席の桜内蘭花 が俺のことを見定めるように見た。
「うるさい……」
俺は彼女を見て、デジャブのような感じがした。
こげ茶の髪、こげ茶の目。
間違いない、彼女は——
「お前、昨日桜の道にいただろう」
彼女はわかりやすく顔を歪めた。
「いたけど、何か?」
蘭花は鋭い目つきで俺を睨んだ。
「いや、何でもないよ」
隣にいるのは昨日の美少女。
ただ……性格のせいで俺は好意というものが萎 んでいった。
桜内蘭花は学校一の美少女と言われているが、彼女の薔薇の棘のような性格が全ての告白を切っていっているのだ。
曰く、かなり酷いことを言い、振られた人は次の日休むということが起きているのだ。
それなのに成績は優秀で、運動神経も抜群だ。
人のことを考えない人と関わったらろくなことにならなさそうだ。
俺はなるべく蘭花と距離を置きたい。
俺の隣に座ってる偉く美人な子、でいいのだ。
俺は蘭花にはもう用はないといわんばかりに前を向いた。
「……私のこと見たんだよね?」
珍しく蘭花から俺に話しかけた。
「ああ、そうだが?」
蘭花は俺の胸ぐらを掴んできた。
「忘れなさいよ、分かった?」
ノーと答えたら殴られそうな勢いだ。
蘭花の目が本気だ。
見られたら忘れてほしいならそもそも姿を現すなよ、と突っ込みたい。
「早く答えなさいよ」
周りの男子が俺達の様子を見てくすくす笑っている。
後で覚えてろよ! 心の中で叫んでいると、蘭花の力が強まった。
俺が早く答えないことに腹を立てているのだろう。
「はいはい、分かりましたよ」
俺は両手をあげて降参の意を示した。
彼女はふん、と鼻を鳴らすと俺から手を離した。
俺は前を向くと、唖然としているおじさんの先生が俺達のことを見ていた。
「す、進めますよ?」
少し引いた感じで言われ、俺は赤面して頷きながら俯いた。
蘭花が涼しげな顔をしているのが気に食わない。
「そういえばさ」
蘭花が俺にまた話しかけてきた。
こんなに感じが悪い女子なのに何で俺に話しかけてくるんだ?
嫌な予感がしつつ、何だ?と答えた。
「あんた、目立たない顔だし、存在感薄いね」
蘭花が悪戯っぽい笑みを浮かべた。
怒鳴り返したくなる気持ちを押さえ、俺はあっそ、と感心するくらい冷静に返事できた。
よし、あとでボコボコにしてやる。
俺はそう決心して、今度は真面目に授業を受けた。
俺は昨日見た美少女のことを思い出した。
こげ茶の髪。スタイルのいい体。
目の奥に焼きついたその姿は俺の頬を綻ばせる。
緩んだ頬を叩いていると、
「なにニマニマしてんの、キモい」
隣の席の桜内
「うるさい……」
俺は彼女を見て、デジャブのような感じがした。
こげ茶の髪、こげ茶の目。
間違いない、彼女は——
「お前、昨日桜の道にいただろう」
彼女はわかりやすく顔を歪めた。
「いたけど、何か?」
蘭花は鋭い目つきで俺を睨んだ。
「いや、何でもないよ」
隣にいるのは昨日の美少女。
ただ……性格のせいで俺は好意というものが
桜内蘭花は学校一の美少女と言われているが、彼女の薔薇の棘のような性格が全ての告白を切っていっているのだ。
曰く、かなり酷いことを言い、振られた人は次の日休むということが起きているのだ。
それなのに成績は優秀で、運動神経も抜群だ。
人のことを考えない人と関わったらろくなことにならなさそうだ。
俺はなるべく蘭花と距離を置きたい。
俺の隣に座ってる偉く美人な子、でいいのだ。
俺は蘭花にはもう用はないといわんばかりに前を向いた。
「……私のこと見たんだよね?」
珍しく蘭花から俺に話しかけた。
「ああ、そうだが?」
蘭花は俺の胸ぐらを掴んできた。
「忘れなさいよ、分かった?」
ノーと答えたら殴られそうな勢いだ。
蘭花の目が本気だ。
見られたら忘れてほしいならそもそも姿を現すなよ、と突っ込みたい。
「早く答えなさいよ」
周りの男子が俺達の様子を見てくすくす笑っている。
後で覚えてろよ! 心の中で叫んでいると、蘭花の力が強まった。
俺が早く答えないことに腹を立てているのだろう。
「はいはい、分かりましたよ」
俺は両手をあげて降参の意を示した。
彼女はふん、と鼻を鳴らすと俺から手を離した。
俺は前を向くと、唖然としているおじさんの先生が俺達のことを見ていた。
「す、進めますよ?」
少し引いた感じで言われ、俺は赤面して頷きながら俯いた。
蘭花が涼しげな顔をしているのが気に食わない。
「そういえばさ」
蘭花が俺にまた話しかけてきた。
こんなに感じが悪い女子なのに何で俺に話しかけてくるんだ?
嫌な予感がしつつ、何だ?と答えた。
「あんた、目立たない顔だし、存在感薄いね」
蘭花が悪戯っぽい笑みを浮かべた。
怒鳴り返したくなる気持ちを押さえ、俺はあっそ、と感心するくらい冷静に返事できた。
よし、あとでボコボコにしてやる。
俺はそう決心して、今度は真面目に授業を受けた。