第15話
文字数 2,043文字
「授業中だから」や「大したことじゃない」という言葉を駆使していると、昼飯の時間が来た。
食堂に行き、弁当をテーブルの上に広げる。
俺は理星と弘秀と毎日一緒に食べている。
いつも通り楽しく喋りながら食べていると—―
「幹人くん!」
元気な声が後ろからした。
振り返ると、隣の家に住んでいる幼馴染の竹中琴美がいた。
彼女は発育のいい子で、蘭花と同じぐらい胸が大きい。
頭の良さと抜群の運動神経は蘭花に並ぶ。
弁当箱を持って、俺の前の席に琴美が座った。
たまにこうやって琴美は俺の近くに来て、話す。
よく俺の家に遊びにも来ているが、これは他の人に内緒だ。
理星と弘秀は俺と琴美が幼馴染の関係であることを知っているが、それ以上に何かがあると思っているのか、ニマニマしている。
「ねぇねぇ、幹人くんのお弁当って手作りなの?」
「あ、ああ」
俺は冷汗をかきながら周りを見た。
沢山の男の目が、俺を刺すように射ている。
そう、琴美はモテているのだ。
隠れファンが数名いる蘭花と違い、琴美にはファンが大勢いる。
よくナンパをされているところを見かけるが、笑顔で流し、断っている。
自分には好きな人がいるからと。
一度誰なのかを聞いてみたのだが、「教えない☆」と言って教えてくれなかった。
食堂にいるほとんどの男子が弁当箱からナイフとフォークを出し、握りしめている。
いや、何で持ってきているの?箸を持ってくるだけで良くね?
男の嫉妬に恐怖を感じている俺をよそに、理星と弘秀はニマニマしたままだ。
お願いだから助けてくれよ。
「じゃあ私のお弁当を作ってくれる?」
男子が息を飲んだ。
鋭い目で俺を睨みつけている。
「え、えっと……何で?」
「私もお弁当を作っているって知っているでしょう? 幼馴染で近い関係だからね!」
おい、琴美、俺が男に殺されてほしいのか?
「ま、まぁ……」
「でね、私不器用だから幹人くんに作ってほしいの!」
琴美は確かに不器用だ。
料理するときは油をフライパンにしくのではなく、材料と混ぜたりする。
砂糖と塩を逆に入れたりし、かなり酷いものを作る。
お転婆だったり、ドジっ子だということはみんな知っているが、生活力が異常にないことは俺以外この学校にいる者は誰も知らない。
「お、おぅ……」
急に高三の男子が立ち上がり、俺の方に歩み寄ると、俺の腕をつかんだ。
「ちょっと来い」
頬に引っかき傷があり、切れ目の彼は高三の不良だ。
そんな奴に絡まれて俺は焦り出した。
理星と弘秀もおろおろしている。
無理やり立ち上がらされ、乱暴に引っ張られたその時だった。
「ねぇ」
低い声だった。
いつもは柔らかいはずの琴美の声は、矢のように鋭かった。
「どうした? 美しい胸の琴美ちゃん」
ヘニャとほおを緩ませたド変態切れ目不良(仮)が優しい声で返した。
琴美は笑みを顔に張り付け、ド変態切れ目不良に近づいた。
「何をしているの?」
先程よりは少し優しくなった声だが、鋭さはまだ含んでいる。
「琴美ちゃんに害があるから話をしようと思ったんだ」
ド変態切れ目不良は俺の腕をつかむ手に、力を加えた。
俺の心臓はバクバクと鳴っている。
食堂にいる人全員は黙ったまま俺たちを見つめているだけで、何もしていないし、しようとしない。
「へぇ、どんな?」
あれ、もしかして琴美、怒っているのか?
昔、同じ幼稚園だった頃、琴美と遊んでいる俺に嫉妬して喧嘩を売ってきた男の子がいた。
その時に琴美は激怒してそいつを怒鳴り散らしたことがあった。
まさか、と俺は息を止めた。
琴美は激怒して、ド変態切れ目不良と大喧嘩になってしまうのではないのかと。
「俺はあまり調子に乗るなって言いたいのさ。俺はただ琴美をこの害虫から守りたいのさ――」
「ふざけんな!」
その場にいた者全員が琴美の大声に怯んだ。
俺の頭から血の気が引いていく。
ド変態切れ目不良が鼻で笑った。
「だよな、こいつふざけているよな」
ド変態切れ目不良は拳を握ると、俺の頭に振り下ろそうとした次の瞬間、琴美が彼の胸倉をつかんだ。
「おめぇだよ」
優しい顔の面が剥がれ、琴美は恐ろしい形相でド変態切れ目不良を睨みつけた。
「ふざけんな。なぁにが害虫なんだよ?」
食堂の中が凍り付くような冷たい声。
実際人は凍り付いているが。
俺は彼女がどんな目にあってしまうのかという不安で固まっている。
「おい、幹人くんに手ぇ出そうとしたら、どうなるか分るよな?」
ド変態切れ目不良は慌てて言い訳を言い始めた。
「で、でもこいつは悪いやつで……消すべき――」
ゴン、という鈍い音が響いた。
ド変態切れ目不良は俺を放し、赤くはれている頬を押さえて倒れた。
琴美は上からド変態切れ目不良を見下ろし、腹の底から唸るような声で、「失せろ」と言った。
ド変態切れ目不良は慌てて立ち上がると、食堂から走って出て行った。
琴美が手を払っている音だけが響く。そして、
「皆大丈夫? どうしたの?」
突っ込みどころが多い幼馴染であった。
食堂に行き、弁当をテーブルの上に広げる。
俺は理星と弘秀と毎日一緒に食べている。
いつも通り楽しく喋りながら食べていると—―
「幹人くん!」
元気な声が後ろからした。
振り返ると、隣の家に住んでいる幼馴染の竹中琴美がいた。
彼女は発育のいい子で、蘭花と同じぐらい胸が大きい。
頭の良さと抜群の運動神経は蘭花に並ぶ。
弁当箱を持って、俺の前の席に琴美が座った。
たまにこうやって琴美は俺の近くに来て、話す。
よく俺の家に遊びにも来ているが、これは他の人に内緒だ。
理星と弘秀は俺と琴美が幼馴染の関係であることを知っているが、それ以上に何かがあると思っているのか、ニマニマしている。
「ねぇねぇ、幹人くんのお弁当って手作りなの?」
「あ、ああ」
俺は冷汗をかきながら周りを見た。
沢山の男の目が、俺を刺すように射ている。
そう、琴美はモテているのだ。
隠れファンが数名いる蘭花と違い、琴美にはファンが大勢いる。
よくナンパをされているところを見かけるが、笑顔で流し、断っている。
自分には好きな人がいるからと。
一度誰なのかを聞いてみたのだが、「教えない☆」と言って教えてくれなかった。
食堂にいるほとんどの男子が弁当箱からナイフとフォークを出し、握りしめている。
いや、何で持ってきているの?箸を持ってくるだけで良くね?
男の嫉妬に恐怖を感じている俺をよそに、理星と弘秀はニマニマしたままだ。
お願いだから助けてくれよ。
「じゃあ私のお弁当を作ってくれる?」
男子が息を飲んだ。
鋭い目で俺を睨みつけている。
「え、えっと……何で?」
「私もお弁当を作っているって知っているでしょう? 幼馴染で近い関係だからね!」
おい、琴美、俺が男に殺されてほしいのか?
「ま、まぁ……」
「でね、私不器用だから幹人くんに作ってほしいの!」
琴美は確かに不器用だ。
料理するときは油をフライパンにしくのではなく、材料と混ぜたりする。
砂糖と塩を逆に入れたりし、かなり酷いものを作る。
お転婆だったり、ドジっ子だということはみんな知っているが、生活力が異常にないことは俺以外この学校にいる者は誰も知らない。
「お、おぅ……」
急に高三の男子が立ち上がり、俺の方に歩み寄ると、俺の腕をつかんだ。
「ちょっと来い」
頬に引っかき傷があり、切れ目の彼は高三の不良だ。
そんな奴に絡まれて俺は焦り出した。
理星と弘秀もおろおろしている。
無理やり立ち上がらされ、乱暴に引っ張られたその時だった。
「ねぇ」
低い声だった。
いつもは柔らかいはずの琴美の声は、矢のように鋭かった。
「どうした? 美しい胸の琴美ちゃん」
ヘニャとほおを緩ませたド変態切れ目不良(仮)が優しい声で返した。
琴美は笑みを顔に張り付け、ド変態切れ目不良に近づいた。
「何をしているの?」
先程よりは少し優しくなった声だが、鋭さはまだ含んでいる。
「琴美ちゃんに害があるから話をしようと思ったんだ」
ド変態切れ目不良は俺の腕をつかむ手に、力を加えた。
俺の心臓はバクバクと鳴っている。
食堂にいる人全員は黙ったまま俺たちを見つめているだけで、何もしていないし、しようとしない。
「へぇ、どんな?」
あれ、もしかして琴美、怒っているのか?
昔、同じ幼稚園だった頃、琴美と遊んでいる俺に嫉妬して喧嘩を売ってきた男の子がいた。
その時に琴美は激怒してそいつを怒鳴り散らしたことがあった。
まさか、と俺は息を止めた。
琴美は激怒して、ド変態切れ目不良と大喧嘩になってしまうのではないのかと。
「俺はあまり調子に乗るなって言いたいのさ。俺はただ琴美をこの害虫から守りたいのさ――」
「ふざけんな!」
その場にいた者全員が琴美の大声に怯んだ。
俺の頭から血の気が引いていく。
ド変態切れ目不良が鼻で笑った。
「だよな、こいつふざけているよな」
ド変態切れ目不良は拳を握ると、俺の頭に振り下ろそうとした次の瞬間、琴美が彼の胸倉をつかんだ。
「おめぇだよ」
優しい顔の面が剥がれ、琴美は恐ろしい形相でド変態切れ目不良を睨みつけた。
「ふざけんな。なぁにが害虫なんだよ?」
食堂の中が凍り付くような冷たい声。
実際人は凍り付いているが。
俺は彼女がどんな目にあってしまうのかという不安で固まっている。
「おい、幹人くんに手ぇ出そうとしたら、どうなるか分るよな?」
ド変態切れ目不良は慌てて言い訳を言い始めた。
「で、でもこいつは悪いやつで……消すべき――」
ゴン、という鈍い音が響いた。
ド変態切れ目不良は俺を放し、赤くはれている頬を押さえて倒れた。
琴美は上からド変態切れ目不良を見下ろし、腹の底から唸るような声で、「失せろ」と言った。
ド変態切れ目不良は慌てて立ち上がると、食堂から走って出て行った。
琴美が手を払っている音だけが響く。そして、
「皆大丈夫? どうしたの?」
突っ込みどころが多い幼馴染であった。