第2話

文字数 1,360文字

「今からグループ活動をするためにくじ引きをします」

 新人の女の先生が俺らに言った。

 これからは政治新聞の作成をグループでやる予定で、そのために男二人女二人のグループを作れと言われた。

 俺は友の溝口理星とペアを組んだ。
 理星は能天気で面白いやつだ。
 たまに疲れたり、その能天気さにイラついたりするけど基本的には仲が良い。

 俺は教卓に置いてあるクジを引いた。
 番号は三。

 美島沙由里と一緒になれたらいいな…

 美島沙由里は蘭花に次いで可愛い子で、めちゃくちゃ優しい人だ。
 クラスの大半の男子が彼女に惚れていて、女子とも仲が良い。

 俺は席に着いて、隣にいる理星に聞いた。

「お前さ、小学校と中学校蘭花と一緒だっただろ?」
「そうだ」
「やっぱり、昔から性格が悪いのか?」

 理星は遠くを見るような目をした。

「うん、誰ともうまくいかなくてよ。それがどうした?なんか言われたのか?」

 俺はコクコクと頭を縦に振った。

「目立たない顔だし、存在感薄いね」

 声色を高くして蘭花の声真似をした。
 そんな俺を見て理星が小さく笑った。

「似てるな」

「黒板に男女一緒になったグループを張り出すので、新聞作成に取り掛かってください」

 先生が黒板に名前を書いていく。

「沙由里と一緒になれますように」

 理星は沙由里ファンクラブの一員だ。
 俺も仮の一員だが、こいつほど沙由里愛はない。
 だってこいつ、沙由里の話始めたら一時間話しっぱなしだったもんな。

 俺は黒板を食い入るように見た。

 三番男子の相手は…

『え』

 桜内蘭花と白沢恵実里だった。

 ※

「あんたとやんなきゃいけないの?」

 新聞を作るところで早速蘭花からの愚痴が飛んできた。
 そう、俺だけに。

 恵実里は困った顔で俺と蘭花を交互に見ている。

 恵実里という子は比較的大人しく、優しい子だ。
 なぜそのような子が蘭花という性格が狂ってるやつと一緒にいるのだろうか?

 それより蘭花だ。本当に何なのだ?

「蘭花さん、理星さん、幹人さん、一緒に頑張りましょうね」

 なんて良い子なんだ。蘭花と隣にいるべき人じゃない。

 恵実里の言葉になぜか蘭花が目を見開けた。

「あんたの名前、幹人っていうんだ」
「知らんかったのか?」
「当然でしょ」
「新学期始まって半年経ってんぞ?」

 俺は呆れ顔で蘭花を見たが、本人は何言ってるの?という顔をしている。

「あんたなんかに興味ないし、関わりたいとも思わないわよ」

 俺はカチンときた。
 そんなことは思っても口に出さないのが大切なのだ。
 この女。

「こっちもだよ」

 俺はグッと蘭花を睨みつけた。

 理星は楽しそうに、恵実里は不安そうに俺達を見た。

「ふん、あっそ」

 俺は面倒臭くなって黙っていると、蘭花が勝ち誇ったような笑みを浮かべた。

「蘭花さん、幹人さんにもうちょっと優しくしてあげて…」
「うるさい、あんたには関係ないわ」

 蘭花の声の温度が十度ぐらい下がった。

「おい蘭花お前…」
「喋んないで」

 蘭花が理星にぴしゃりというと、理星が変な顔をして黙りこくった。

「早くやるよ」

 蘭花がシャーペンを手に取り、新聞の下書きを書き始めた。

 こいつは何に怒っているんだ?何が問題なんだ?
 俺はこいつの自己中心的な感じに呆れるしかなかった。
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