序章 

文字数 307文字

 俺はパーカーのポケットに手を突っ込んだまま、道を歩いていた。
 桜の木が風に吹かれて静かに揺れる。
 俺は春の匂いを嗅ぎながら、ゆっくりと歩みを進めた。
 太陽の光が差し込み、桜の木を照らして踊る。

 少し強い風が吹いた。
 桜の花びらが舞い、俺の後ろに向かって飛んだ。
 桃色の雪が降りていくのを俺は振り返って見た。

 そして、俺は彼女を見たんだ。

 はためく花柄のワンピースを押さえ、おろしたこげ茶の髪を(なび)かせていている。

 その姿は桜の花のように儚げで、繊細。

 俺は彼女こそが世界で一番美しいと思った。
 大袈裟かもしれないが、その時は本当にそう思った。

 そんな彼女が俺の席の隣の美少女だっただなんて、次の日になって気づいた。
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