第15話

文字数 998文字

カウンターアタックが防がれ、クガオミトらの速攻の芽は摘まれた。

しかし、パラパラと陣地に戻る長先輩らのチームが、各人、ゾーンで守る定位置についているなか、クガオミトは弧科、鳥場に続く、第三、第四の刺客にヒソヒソと策を授けていた。

会玄(カイゲン)と能古(ノコ)。

・・・という名前だったと思う。

二人とも帰宅部で、私は同じクラスになって初めて存在を知った。

そして、私は所属するグループが異なるため、彼らと言葉を交わしたことはなかった。

会玄と能古はクガオミトからの策を聞き終わると、うなづき、二人してゾーンで守る相手ディフェンスと相手ディフェンスの間にポジションを取った。

二人は手を使い反則を取られないように、大きな身体を使って、相手ディフェンスを押し、ポジション争いを試みていた。

ここでも主な標的は長先輩だったが、もう一人、丸先輩も狙われた。

長先輩はクガオミトの授けた策の意図を読み取り、適当にディフェスをいなしていたが、丸先輩は自分の体をグイグイと押してくる、面識もない年下の巨漢にあきらかにイライラしていた。

ボールにからむプレーの一環なら、丸先輩も我慢できただろう。

しかし、ボールがないところで汗のひとつもかいているだろう身体を押しつけられるのだ、丸先輩がキレるのも間もなくだった。

パス回しが丸先輩が守る反対側で行われているとき、能古は仕掛けた。

能古は主審である守屋先生の目を盗み、故意に尻で丸先輩の身体を突き飛ばした。

弾みで丸先輩は足をもつらせ、コートに尻もちをついた。

フリーになった能古にパスが渡り、見栄えは良くないものの、能古はゴールエリアラインを踏んで反則を犯さないように気をつけながらシュートの体勢に入った。

「押すなよ」

丸先輩はすばやく立ち上がり、能古の身体を突き飛ばした。

守屋先生が長めに笛を吹き、丸先輩は反則を取られた。

「チャージング」

「ちょっと待って下さい!、この男が先に自分の身体を押したんです」

丸先輩は猛然と抗議した。

守屋先生は真剣な目をして事の成り行きを見守っていた。

長先輩は丸先輩を諫めた。

「ダメだ、丸(マル)。貴君の言い分は理解できるが主審は絶対だ」

丸先輩は納得できない様子だったが、頭を冷やすためにサイドラインの方に腰に手をそえて顔を背けながら歩いていた。

「7mスロー」

守屋先生の告げた反則名を聞くと長先輩は厳しい表情になり、クガオミトは歓喜の表情を見せた。

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