第17話

文字数 889文字

見せ場はその程度で、間もなく前半も終わろうとしていた。

一対零。

ロースコアな試合は、野球やバスケットボールなどメジャーなスポーツでも面白味に欠ける場合が多いのに、ハンドボールというマイナーなスポーツであれば、それはさらに言わずもがな、である。

立つ瀬がないのは相手チームの長(オサ)先輩である。

後輩のクガオミトはキーパーというポジションにも関わらず得点し存在感を示しているのに対し、長先輩はハンドボール経験者でもない、ラグビー部所属の弧科(コシナ)の徹底したマークに苦労していた。

前半を通して長先輩に見え隠れするのは、本職のハンドボール部所属としてのプライドと遠慮である。

おそらくクガオミトが同学年だったり、ハンドボールの経験が遜色なければ長先輩は遠慮することなく、もっと伸び伸びとプレイを出来るのだろう。

さらに長先輩のボトルネックはハンドボール部顧問の守屋先生が主審であることである。

旗から見ていれば、長先輩は守屋先生の顔色をうかがいなから、どうプレイすれば守屋先生の意向に沿うのか、はかっているかのようにプレイして見える。
 
それほど守屋先生という存在はハンドボール部員からして見れば特別な存在なのかもしれないが。

入部から日の浅く、守屋先生の恐さもまだ知らないこともクガオミトには有利にことが運んでいる。

本職として、ガツガツとした姿勢を見せることなく、それでいて存在感を示すプレー。

長先輩が今、思い描いているだろう、それ。

長先輩のクラスのチームがボールを所持し、パスが回される。

長先輩はピッタリとマークしてくる弧科を引き連れて、ボールのある方にジョギングでもするような速度で近づく。

ボールを所持している長先輩のチームメイトはなんとか長先輩にボールを渡そうとパスを試みるが、弧科と、ボールの所持者のマッチアップ者の二人掛かりでそれを阻む。

ボール所持者は長先輩へのパスをあきらめ、近くの味方にパスを出す。

すると、長先輩はまたユラユラと弧科を引き連れて、ボールのある方に移動する。

長先輩が反撃の糸口を見出そうとしているのはあきらかだった。

ただ、前半終了の時間も迫っていた。

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