第6話

文字数 563文字

全校球技大会は春の大型連休の終わった直後に開催された。

私はクガオミトとは分かれ、ソフトボールの方に出場した。

「貴君の健闘をベンチ裏から拝見させてもらうよ」

「ああ。君の誇りを賭けた試合の前哨戦だ。弾みをつけてもらえるような活躍をするとしよう」

クガオミトは笑みを浮かべて、「頼もしい限りだ」と言った。

我々2年A組ソフトボールチームの初戦の相手は一学年下の1年C組だった。

我々のチームには野球部でレギュラーをはる人間が2人おり、彼らの活躍で危なげない試合展開で初戦を制した。

試合後、私は観覧していたクガオミトに歩み寄った。

「次は君の番だ」

「ああ。そうだね」

たいした活躍も見せることができなかった私に皮肉の一つでも述べるかと思ったが、クガオミトはどこかうわの空のような様子だった。

「おい、そんなふうで大丈夫か?」

試合前にしては、その時のクガオミトは緊張感が足りないように感じられた。

「いや、まったく君の言う通りだ。今はひとまずボクは試合に集中することにするよ」

「では、これで」、と言って、クガオミトは片手を上げて、挨拶をし、ハンドボールコートの方に掛けて行った。

地に足がついていないかのような、クガオミトらしくないそのときの彼の態度の理由は、後に彼自身の口から語られることになるが、今はクガオミトの初戦の時間が迫っていた。(第7話へ)
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