第2話
文字数 822文字
ここで私とクガオミトの最初の接点にも触れておきたい。
私は、我々の母校であるこの香津衣(かつい)高校から自宅が自転車で10分の距離と比較的近く、また、同じ中学から2桁の者が進学してきており、知り合いも多かった。
さらに中学時代から慣らしていた、ソフトテニス部に入部し、他の部活生のこともある程度把握していた。
しかし、私は2年A組の生徒として、同じクラスになるまで、クガオミトという男の存在を知らなかった。
「やあ、よろしく」
出席番号順に座らされた教室の席順で、クガオミトは私の前に座り、身体をこちらに向けて、手を差し伸べながら第一声を発した。
私はそれが握手を求めらていることを理解するのに数秒を要した。
なぜなら、学生間の初対面の挨拶で、握手する習慣はよくあることではなかったからだ。
「ああ、よろしく」
私は彼に些(いささ)か気圧(けお)される形で、差し出された彼の右手を握った。
「なるほど。君は良いヤツだね」
「唐突になんだい。なぜ、そう思った?」
「君は本来左利きなのだろう?、なのに、ボクが差し出した右手で握手を返してくれた」
確かに私は左利きであった。
同じクラスになって間もないこの短時間で私のことを観察していたのかをクガオミトに問うた。
「いや、そうじゃない。右手を差し出したとき、ほんの一瞬だけど君が躊躇(ちゅうちょ)したのが見て取れた。」
「躊躇したのは会って間もなく握手を求めらたからだよ」
「そうだね。でも、ボクが振り返ったとき、君は右手で頬杖をついていた。右利きなら頬杖は左手でつく」
左利きについてのクガオミトの見解が正しいものかはさておき、私は彼の洞察するクセを多少なりとも面白いヤツだと思った。
「クロウだ。よろしく」
私はあらためて自己紹介をし、左手を差し出した。
クガオミトは私の差し出された左手を見て、「クガオミトだ。クガでもオミトでも好きに呼んでくれたまえ」と笑みを満面に湛えて言った。
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私は、我々の母校であるこの香津衣(かつい)高校から自宅が自転車で10分の距離と比較的近く、また、同じ中学から2桁の者が進学してきており、知り合いも多かった。
さらに中学時代から慣らしていた、ソフトテニス部に入部し、他の部活生のこともある程度把握していた。
しかし、私は2年A組の生徒として、同じクラスになるまで、クガオミトという男の存在を知らなかった。
「やあ、よろしく」
出席番号順に座らされた教室の席順で、クガオミトは私の前に座り、身体をこちらに向けて、手を差し伸べながら第一声を発した。
私はそれが握手を求めらていることを理解するのに数秒を要した。
なぜなら、学生間の初対面の挨拶で、握手する習慣はよくあることではなかったからだ。
「ああ、よろしく」
私は彼に些(いささ)か気圧(けお)される形で、差し出された彼の右手を握った。
「なるほど。君は良いヤツだね」
「唐突になんだい。なぜ、そう思った?」
「君は本来左利きなのだろう?、なのに、ボクが差し出した右手で握手を返してくれた」
確かに私は左利きであった。
同じクラスになって間もないこの短時間で私のことを観察していたのかをクガオミトに問うた。
「いや、そうじゃない。右手を差し出したとき、ほんの一瞬だけど君が躊躇(ちゅうちょ)したのが見て取れた。」
「躊躇したのは会って間もなく握手を求めらたからだよ」
「そうだね。でも、ボクが振り返ったとき、君は右手で頬杖をついていた。右利きなら頬杖は左手でつく」
左利きについてのクガオミトの見解が正しいものかはさておき、私は彼の洞察するクセを多少なりとも面白いヤツだと思った。
「クロウだ。よろしく」
私はあらためて自己紹介をし、左手を差し出した。
クガオミトは私の差し出された左手を見て、「クガオミトだ。クガでもオミトでも好きに呼んでくれたまえ」と笑みを満面に湛えて言った。
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