第10話

文字数 770文字

ボールか陣地を選ぶコイントスには、クガオミトと長先輩が出てきた。

守屋先生が握りこぶしを作って間もなく、親指で弾いたコインの裏表を選ぶ選択権はクガオミトに譲られたようだった。

守屋先生は宙を舞い落ちてきたコインを空中でつかみ、反対の手の甲にそれを置いた。

裏表のどちらかを選択したまではコートの外にいる私のところまで聞こえなかったが、クガオミトの選択は的中したようで、彼は陣地を選んだ。

「ほう」

クガオミトにしては意外な選択だと思った。

確かにときおり強い風が吹いていており、クガオミトは風上の陣地を選択したが、平素対戦型の格闘ゲームをゲームセンターで嗜(たしな)むときなどは、クガオミトは先手必勝の姿勢を隠そうとしない。

私はてっきり先攻であるボールをクガオミトは選択すると思っていた。

さらに私を驚かせたのは、クガオミトのディフェンスポジションだった。

クガオミトはゴールキーパーらしく、ゴールマウス付近でピョンピョンと跳ね、体をほぐしていた。

確か、クガオミト本人から聞き及んでいた話では、部活動では彼はコートプレイヤーを担っているはずだった。

三年生チームのオフェンス側はすでにセンターラインに並び、ボールを持った長先輩の隣には丸先輩がいた。

守屋先生が時計を見て、試合開始の笛が鳴るのと同時にゾーンで守っていたディフェンス陣からラグビー部所属の弧科(コシナ)が飛び出し、長先輩と適当な距離を保ちつつ、マン・ツー・マンでマークについた。

弧科は長先輩が丸先輩にパスを回し、ボールを持っていない状態でもマークについたままだった。

というより、ボールを持っていないときの方がより距離をつめてマークをし始めた。

「なるほど。長先輩にボールを触らせない作戦か。最初から仕掛けていくのだな、クガオミト」

私は彼の練った戦略と戦術に胸を昂(たかぶ)らせていた。

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