第9話

文字数 914文字

両チームがハンドボールコートのセンターラインに並ぶ。

相手の三年生の面子は丸先輩と長先輩以外、知らない顔の面々だった。

身体つきや日焼け跡のない感じから、おそらく運動部系の部活動生ではないだろうと思った。

これなら我がクラスのハンドボールチームにも勝算はあるかと思ったが、我がクラスの面子を眺めれば、クガオミトを除けば、ラグビー部でも小柄な弧科(コシナ)と柔道部で重量級の鳥場(トバ)しか運動部所属の人間はいなかった。

私が参加しているソフトボールに、クラスの運動部所属の連中はごっそり参加していたからだった。

我がクラスのハンドボールチームの他の四人は、背は高いがそれ以上に横にぶ厚い、つまり肥満体型の連中ばかりだった。

戦力としては遜色ないように見えた。

つまり勝負の行方は、ハンドボール経験者のクガオミトと長先輩の出来次第と想像できた。

主審はハンドボール部顧問の守屋先生だった。

「長(オサ)、校内の球技大会とはいえ、入部したての後輩に負けるわけにはいかないな」

守屋先生の言い方と表情は冗談めいていたが、それを受けて「はい」と短く返事をした長先輩の表情は硬いものだった。

辞めた同学年のハンドボール部員たちから、運動理論より精神論を優先しがちだと聞き及んでいた守屋先生指導の下、三年間練習に勤しんできた長先輩からすれば守屋先生の言葉はプレッシャーでしかないのだろう。

一方でクガオミトはニコニコと笑っていた。

大量の退部者を出した後、守屋先生の指導の仕方が軟化したらしいと、これも辞めた同学年のハンドボール部員たちから聞き及んだ。

それなら、クガオミトに守屋先生から受けるプレッシャーは少ないのだろうから、彼の笑顔が対照的なのも理解できた。

「それにしても酷なものだ」

私が先ほどまで戦っていたソフトボールのグランドとは打って変わり、ハンドボールコートに我がクラスの応援の姿はなかった。

一方で相手三年生クラスには、男子も女子も多くの人間が応援をしにきていた。

各クラスの各球技の時間帯は競技者以外は応援に行けるように、時間を調整して運営されているのだから、これは露骨にハンドボールに参加した人間たちがクラスで人気がないことの表れといえた。

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