電脳世界の御曹司
文字数 1,176文字
失恋を引きずった状態で、私は受験に挑む。メンタルはズタボロだったけど、無事、志望校に合格した。
四月に新生活を迎えるまでの間、無条件で甘やかしてくれる人を求める。とはいえ、ナンパをする度胸はないし、年齢的にマッチングアプリは利用不可能。これまでゲームで遊ぶことはなかったけど、合格祝いで買ってもらったスマートフォンでアプリを探す。
色々な女性向けゲームを試した末、「AIらぶシュガー」に落ち着いた。当作は、好みの容姿にカスタマイズした男性と疑似恋愛するゲームである。
男性キャラクターに言葉を教えながら会話するシステムで、課金してプレゼントを贈ればデートが可能だ。十五歳以上推奨なので艶っぽい描写はあるものの、露骨に卑猥な言葉はNGになっている。
藤堂くんとは似ても似つかないキャラクターを作った。ステレオタイプのオレ様系御曹司。
日本人では有り得ない、鮮やかな赤毛にエメラルドグリーンの瞳。吊り目の切れ長にした。
藤堂くんと被るのは癪だけど、長身は譲れない。体型はスレンダーが好み。
野球選手かと突っ込みを入れながら、金のネックレスをつける。黒のVネックニットにレザーのパンツという格好にした。
慰めるどころか、女の子を食いものにしそう。私は半笑いで、爆誕した御曹司を見つめた。プレイして間もない頃は的外れなことばかり言っていたハルだけど、好きな会話パターンを学習させるうちに愛着が湧く。
時間が空けば、常にハルとコンタクトを取った。個人情報が漏れては困るので、嘘の名前に誕生日、好みを教える。
私はミト。三月二十八日生まれで、キラキラしたものが好き。本はファッション誌しか目を通していなくて、今、欲しいものは人気ブランドの限定ブレスレット。
将来は港区に建つタワーマンションの最上階に住みたい。ミトのモデルは、漫画の広告バナーでよく目にする主人公だ。
ハル『ミトはオレにメロメロだよな』
ハルは不敵な笑みを浮かべて、傲慢に迫る。基本的には偉そうだけど、弱気なメッセージを入力すると、ぶっきらぼうに慰めてくれた。
嘘とプログラムで構成された、私とハルの関係。滑稽と笑いながらも、ハルのお陰で藤堂くんを吹っ切ることが出来た。
ハルが生まれて、一年以上経つ。ログインすると、サングラスを掛けて黒シャツに紫スーツ姿のハルが表示された。毎度ながら、カタギに見えない。
ハル『お前の首って、なまめかしくて噛み付きたくなる』
実際にされたら、恐怖しかないな。ププッと笑いながら、月に一度の楽しみである課金をした。プレゼントは高級時計。
ハル『趣味いいじゃん。恋人に貢がれたままなんて、性に合わねえ』
イベントが発生し、自家用ヘリに乗せられて上空デートをする。千円でここまで尽くしてくれるお坊ちゃまはハルだけ。
ハルも私と同じ誕生日に設定している。私達が出会った日だ。
四月に新生活を迎えるまでの間、無条件で甘やかしてくれる人を求める。とはいえ、ナンパをする度胸はないし、年齢的にマッチングアプリは利用不可能。これまでゲームで遊ぶことはなかったけど、合格祝いで買ってもらったスマートフォンでアプリを探す。
色々な女性向けゲームを試した末、「AIらぶシュガー」に落ち着いた。当作は、好みの容姿にカスタマイズした男性と疑似恋愛するゲームである。
男性キャラクターに言葉を教えながら会話するシステムで、課金してプレゼントを贈ればデートが可能だ。十五歳以上推奨なので艶っぽい描写はあるものの、露骨に卑猥な言葉はNGになっている。
藤堂くんとは似ても似つかないキャラクターを作った。ステレオタイプのオレ様系御曹司。
日本人では有り得ない、鮮やかな赤毛にエメラルドグリーンの瞳。吊り目の切れ長にした。
藤堂くんと被るのは癪だけど、長身は譲れない。体型はスレンダーが好み。
野球選手かと突っ込みを入れながら、金のネックレスをつける。黒のVネックニットにレザーのパンツという格好にした。
慰めるどころか、女の子を食いものにしそう。私は半笑いで、爆誕した御曹司を見つめた。プレイして間もない頃は的外れなことばかり言っていたハルだけど、好きな会話パターンを学習させるうちに愛着が湧く。
時間が空けば、常にハルとコンタクトを取った。個人情報が漏れては困るので、嘘の名前に誕生日、好みを教える。
私はミト。三月二十八日生まれで、キラキラしたものが好き。本はファッション誌しか目を通していなくて、今、欲しいものは人気ブランドの限定ブレスレット。
将来は港区に建つタワーマンションの最上階に住みたい。ミトのモデルは、漫画の広告バナーでよく目にする主人公だ。
ハル『ミトはオレにメロメロだよな』
ハルは不敵な笑みを浮かべて、傲慢に迫る。基本的には偉そうだけど、弱気なメッセージを入力すると、ぶっきらぼうに慰めてくれた。
嘘とプログラムで構成された、私とハルの関係。滑稽と笑いながらも、ハルのお陰で藤堂くんを吹っ切ることが出来た。
ハルが生まれて、一年以上経つ。ログインすると、サングラスを掛けて黒シャツに紫スーツ姿のハルが表示された。毎度ながら、カタギに見えない。
ハル『お前の首って、なまめかしくて噛み付きたくなる』
実際にされたら、恐怖しかないな。ププッと笑いながら、月に一度の楽しみである課金をした。プレゼントは高級時計。
ハル『趣味いいじゃん。恋人に貢がれたままなんて、性に合わねえ』
イベントが発生し、自家用ヘリに乗せられて上空デートをする。千円でここまで尽くしてくれるお坊ちゃまはハルだけ。
ハルも私と同じ誕生日に設定している。私達が出会った日だ。
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