協力しようか
文字数 1,926文字
電車に乗るからと、優海ちゃんと翔くんは先に出た。残された私と和臣くんは、追加注文したデザートを食べている。私はミニチョコパフェ、和臣くんはベルギーワッフルのアイスクリーム添え。
例の如く、隣り合って座っている。いつも私が壁側なんだよね。
「菜乃さんが悪乗りする人とは思わなかった」
さすがに他の人がいたらしないけど、気心の知れた優海ちゃんだから弾けちゃった。これからは気を付けなくては。
「心配だな。菜乃さんは警戒心が強い割に隙だらけだから、変なのに勧誘されそう」
和臣くんは一口サイズにカットしたワッフルに、アイスクリームを載せる。ボリュームのあるおろしダレの掛かった唐揚げランチセットを食べたのに、よく入るなあ。
「セクハラのつもりはないけど、中学の頃、菜乃さんに胸が大きいって印象はなかったな」
「中学までは、ない方だったよ。高校に入って、ピタッと背が伸びなくなったら胸に栄養が行くようになりました」
「菜乃さんって、身長はいくつあるの」
「148センチ。これでも、中学時代は地味に成長していたの。和臣くんは?」
「186。小学六年で160、中学三年間で20センチ伸びたね」
和臣くんは竹なの? そんなお方から見れば、私の成長率なんて無に等しい。私は重く息を吐く。
「胸はいらないから、せめて150センチは欲しかった」
「大きいと大変?」
「まあ、ね」
Eカップは一キログラムらしく、年中肩凝りに悩まされる。人の目を気にして、胸が目立たないデザインの服ばかり着ていた。可愛いと思っても、体のラインが出るからパス、胸元が開いているから無理と諦める。
「まずは食べる量を減らしたけど、効果がなかったな。かえって、アンダーだけが減った」
「不健康な方法は駄目だよ。骨がスカスカになる」
「ネット検索したら、胸は揉み方によって小さくなるという情報を得たんだよね」
「逆じゃないの?」
「私もそう思っていた。でも、エステって、脂肪を燃焼させる為に揉み込むじゃない」
「なるほど。それで、試したの?」
「まあ、うん。でも、自分で胸を揉んでいるうちに、何をしているんだろうって虚無感に襲われてしまった」
結局、一回だけで止めた。和臣くんは二枚目のワッフルにナイフを入れながら、からかうような目線を向ける。
「俺が揉んであげようか? 菜乃さんよりも手が大きいし、単純作業は得意だよ」
パンを捏ねる訳ではないのだから。和臣くんもこんな冗談を口にするのね。
「男の子にされるのは恥ずかしいよ」
「あんな写真を撮らせる方が恥ずかしいと思うけど」
和臣くんは呆れ混じりに息を吐きながら、ワッフルを口に運ぶ。また、黒歴史を擦られた。
「お金の力で胸を小さくする手術を受けるしかないか」
「胸筋を鍛えなよ」
和臣くんは冷静に切り返す。前から思っていたけど、筋肉崇拝者だよね。
「菜乃さんは華奢なのに、胸だけが大きいアンバランスな体型でしょ。筋肉をつければ胸が支えられるし、代謝が良くなって小さくなるよ」
和臣くんは説得力のあることを言ってから、私の両肩を掴んで後ろに引く。胸を開く格好になって、ブラウスのボタンが吹っ飛びそう。
「猫背気味だね。それと、無意識に胸をテーブルに載せる癖がある」
ガチの説教をされた。それにしても、和臣くんはためらいもなく女の体に触れられるものだ。交際歴がある経験値故か、単に私を女として見ていないのか。
和臣くんは私の肩から手を離して、アイスカフェオレを飲む。私はパフェを完食したので、すっかり氷が溶けたお冷を口にした。
「ところで、青葉さんが菜乃さんに送った俺の画像って、どんなやつ?」
私はスマートフォンを操作して、メッセージアプリを開く。ナチュラルに爽やかな笑みが出来るとは羨ましい。
「見た途端、菜乃さんがNGを出した画像がこれか」
「もう勘弁してください。その、私が持っていても嫌じゃない?」
「構わないよ。プリントアウトして藁人形に貼り付けないでしょ」
いくら陰キャでも、そんなことはしない。だからといって、ひっそり眺めてキュンキュンすることだってないんだからね。
「冷静に考えると、不公平だな。俺も菜乃さんの画像が欲しい。青葉さんから削除する前にもらえば良かった」
「嫌だよ。あんな悪趣味なやつをもらってどうするの」
「落ち込んだ時やイライラした時に見て、笑い飛ばす」
一応セクシー路線だったのに、オモシロ画像と同レベルの扱いか。当たり前のことだけど、和臣くんも凹む時があるのね。
「菜乃さんにとってのハルみたいなものかな。君といると、楽しいって気持ちで一杯になるもん」
私は和臣くんといると、様々な感情が混じって情緒がおかしくなる。だから、辛い時に和臣くんの画像を見ても、笑い飛ばせないよ。
例の如く、隣り合って座っている。いつも私が壁側なんだよね。
「菜乃さんが悪乗りする人とは思わなかった」
さすがに他の人がいたらしないけど、気心の知れた優海ちゃんだから弾けちゃった。これからは気を付けなくては。
「心配だな。菜乃さんは警戒心が強い割に隙だらけだから、変なのに勧誘されそう」
和臣くんは一口サイズにカットしたワッフルに、アイスクリームを載せる。ボリュームのあるおろしダレの掛かった唐揚げランチセットを食べたのに、よく入るなあ。
「セクハラのつもりはないけど、中学の頃、菜乃さんに胸が大きいって印象はなかったな」
「中学までは、ない方だったよ。高校に入って、ピタッと背が伸びなくなったら胸に栄養が行くようになりました」
「菜乃さんって、身長はいくつあるの」
「148センチ。これでも、中学時代は地味に成長していたの。和臣くんは?」
「186。小学六年で160、中学三年間で20センチ伸びたね」
和臣くんは竹なの? そんなお方から見れば、私の成長率なんて無に等しい。私は重く息を吐く。
「胸はいらないから、せめて150センチは欲しかった」
「大きいと大変?」
「まあ、ね」
Eカップは一キログラムらしく、年中肩凝りに悩まされる。人の目を気にして、胸が目立たないデザインの服ばかり着ていた。可愛いと思っても、体のラインが出るからパス、胸元が開いているから無理と諦める。
「まずは食べる量を減らしたけど、効果がなかったな。かえって、アンダーだけが減った」
「不健康な方法は駄目だよ。骨がスカスカになる」
「ネット検索したら、胸は揉み方によって小さくなるという情報を得たんだよね」
「逆じゃないの?」
「私もそう思っていた。でも、エステって、脂肪を燃焼させる為に揉み込むじゃない」
「なるほど。それで、試したの?」
「まあ、うん。でも、自分で胸を揉んでいるうちに、何をしているんだろうって虚無感に襲われてしまった」
結局、一回だけで止めた。和臣くんは二枚目のワッフルにナイフを入れながら、からかうような目線を向ける。
「俺が揉んであげようか? 菜乃さんよりも手が大きいし、単純作業は得意だよ」
パンを捏ねる訳ではないのだから。和臣くんもこんな冗談を口にするのね。
「男の子にされるのは恥ずかしいよ」
「あんな写真を撮らせる方が恥ずかしいと思うけど」
和臣くんは呆れ混じりに息を吐きながら、ワッフルを口に運ぶ。また、黒歴史を擦られた。
「お金の力で胸を小さくする手術を受けるしかないか」
「胸筋を鍛えなよ」
和臣くんは冷静に切り返す。前から思っていたけど、筋肉崇拝者だよね。
「菜乃さんは華奢なのに、胸だけが大きいアンバランスな体型でしょ。筋肉をつければ胸が支えられるし、代謝が良くなって小さくなるよ」
和臣くんは説得力のあることを言ってから、私の両肩を掴んで後ろに引く。胸を開く格好になって、ブラウスのボタンが吹っ飛びそう。
「猫背気味だね。それと、無意識に胸をテーブルに載せる癖がある」
ガチの説教をされた。それにしても、和臣くんはためらいもなく女の体に触れられるものだ。交際歴がある経験値故か、単に私を女として見ていないのか。
和臣くんは私の肩から手を離して、アイスカフェオレを飲む。私はパフェを完食したので、すっかり氷が溶けたお冷を口にした。
「ところで、青葉さんが菜乃さんに送った俺の画像って、どんなやつ?」
私はスマートフォンを操作して、メッセージアプリを開く。ナチュラルに爽やかな笑みが出来るとは羨ましい。
「見た途端、菜乃さんがNGを出した画像がこれか」
「もう勘弁してください。その、私が持っていても嫌じゃない?」
「構わないよ。プリントアウトして藁人形に貼り付けないでしょ」
いくら陰キャでも、そんなことはしない。だからといって、ひっそり眺めてキュンキュンすることだってないんだからね。
「冷静に考えると、不公平だな。俺も菜乃さんの画像が欲しい。青葉さんから削除する前にもらえば良かった」
「嫌だよ。あんな悪趣味なやつをもらってどうするの」
「落ち込んだ時やイライラした時に見て、笑い飛ばす」
一応セクシー路線だったのに、オモシロ画像と同レベルの扱いか。当たり前のことだけど、和臣くんも凹む時があるのね。
「菜乃さんにとってのハルみたいなものかな。君といると、楽しいって気持ちで一杯になるもん」
私は和臣くんといると、様々な感情が混じって情緒がおかしくなる。だから、辛い時に和臣くんの画像を見ても、笑い飛ばせないよ。
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