第25話

文字数 1,015文字

 インターフォンが鳴った。九龍奈々子のお陰で、さらに親密になった恋人かもしれない。
 勢い勇んで玄関をあけてみると、そこに立っていたのは見知らぬ男だった。彼は松丘の名前を確認すると、バッジを見せ、警察だと名乗る。一体何の用だろう?
 まったく身に覚えがなかったが、だといって断る事も出来ず、嫌々ながら招き入れた。男は一人ではなく、全部で六人だったので、なおも驚かずにはいられなかった。
「……失礼ですが、この日はどこにおられましたか?」そう言ってリーダー格の刑事は、玄関に立ったままメモ紙を見せた。
 メモを受け取ると、三つの日付が殴り書きしてある。確か三日とも食事会に行っていたはずなので、正直にそう答えた。
 食事会に集まったのは、奈々子の世話になった四人――松丘本人と、友達の城島、そして彼の知り合いの永瀬とかいう女性と、その同級生の国武だった。
 四人は国武の事件のあと、定期的に集まり、飲み会をしていたのだ。
 定期的といっても最近の事。九龍奈々子との出会いから一年以上に渡って音沙汰がなかったにもかかわらず、彼女の方から、突然、連絡があったというわけである。
 本当はあまり参加したくなかったのだが、奈々子の奢りということもあり、只酒に酔いしれていたことを思い出した。

 話が終わると、刑事は再び口を開く。
「最近話題の宝石強盗はご存知ですかな? あなたたちが飲み会と称して集まった日は、ちょうど強盗団の現れた日付と一致しています。偶然でしょうか?」
 驚きのあまり、松丘は腰が抜けそうになった。
 偶然に決まっている。どうして宝石強盗団と疑われなくちゃいけないんだ。
 しかし、警察がこうして訪問してくるということは、何らかの証拠を掴んでいるに違いなかった。
 足がすくむ松丘に、刑事は一枚の写真を差し出してきた。監視カメラに映った犯人グループの写真だと告げられる。
 写真を持つ松丘の手が震える。
 なんてこった。自分が映っているじゃないか。しかも見覚えのある三人の姿まで映っていた。
「松丘さん。これはあなたですね」首を振るものの、どう見ても松丘自身としか思えない。それでも心当たりがないと否定し続けるが、現場に残された指紋も一致したとの説明が入った。
「観念するんだ。署までご同行願おう」
 幸いな事に(?) 手錠を掛けられずに済んだのだが、何のことやら見当もつかない。まさかと思うが、九龍奈々子と名乗った見破りの達人と、何か関係があるのだろうか。
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