第26話 完結

文字数 399文字

 警察署に連行された松丘は、ことさら懸命に無実を訴えた。九龍奈々子を調べてもらったが、例のビルの屋上は既にもぬけの殻であり、研究所どころかプレハブすらも無かったという。念のために屋上をくまなく調査したらしいが、指紋どころか髪の毛さえも検出されず、九龍奈々子という名の少女の痕跡は何一つ見つからなかったらしい。

 髪の毛? 髪の毛といえば――。

 松丘はある事を思い出す。
確か一緒にイリュージョンショーを見に行った帰り、奈々子から無理やりシャンプーをされた。
記憶を辿ると、四人が集まった食事会にて、城島は手に爪を立てられたと話していたし、永瀬智子はうなじにロウを垂らされ、国武は鼻毛を抜かれたらしい。

 その時、あの研究所を初めて訪れた際、本棚に並んだ、とある一冊の本のタイトルが脳裏に浮かんだ。

 『初心者のための人体複製入門』

 まさか九龍研究所とは、

研究所ということだったのではないだろうか……。
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