第98話

文字数 763文字

 現実はそうではない。
だって私は決心したはず、おなかの中の鉄男と実際の阪田さんとで行くのだと。
でもでも少しその決心が揺らいでいる。
それにこれってよく考えれば、よく考えなくてもとても自分勝手、阪田さんや鉄男の立場からは受け入れてもらえるはずない。
いつかはすべてが明らかになって、そうすれば鉄男からも阪田さんからも嫌われてしまう。
破滅だよ。倫子、お前それでもおなかの子と二人だけで生きていくことできるのか。
そうよね、今は昭和の時代ではないわ、一生を一人の男にささげるなんて今時ではない。それぞれにそれぞれの事情があって別れたりくっついたりするので、いわんや死んだ元カレの子供を宿しているなんて全く演歌の世界よ。時代遅れ。
そんな言葉で切り捨てられてしまいそうだ。
だけどそんなこと今頃言ったってもう遅い、私にはすでにおなかの赤ちゃん。
赤ちゃんごめんね、本当に困ったママね、いったいどうしたらいいのかしらね、もしかしたら赤ちゃんの方でママに愛想を尽かして出て行ってしまうかもしれないわよね、こんな状況だと。
でもそれだと八方丸く収まるともいえるかもしれない。
最後にはこんな突拍子もないことまで考えていた。

 頭の中を堂々巡り。きっと明日からもこの先ずるずると日が続いていくのだろう。
ふと思い出した、昔流行った言葉にケセラセラなるようになるというのがあった、実際そうだよ、人って、いろいろ考えているようで現実の状況の方がとても大きいからそれに流される。
少なくても私はそう、だってどう考えたって結論なんて出せないもの。
あとは本当に流れるままだ、どうにでもなるようになるしかない。
所詮最後はみんな死ぬのだから。そもそも最終結論て何。
悩んで生きているのも楽しんで生きているのもその過程が人生そのものだわよ。

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