第39話

文字数 543文字

「私は移植外科の教授だ。こんな話お前には初めてするが睾丸の移植は一般には行われていないが技術的には特別難しいことでは無い。およそ15分もあれば終わる簡単な手術だ」
「でも誰にそれを移植するわけ、そんな人どうやって見つけるのよ」
「それだよ、確かに移植を受ける人を見つけるのはとても難しい。普通そんな希望者はいない。でも一人だけ希望者になり得る人がいる」
「誰、希望者って、何を希望しているわけ。私を希望するわけ」
「私だよ」
「パパ」
「そう。私はもう六十を超えている。だから私自身の精子にはほとんど生殖能力はない。そこで私に鉄男くんの睾丸を移植して、パパとお前とでこどもを作る。その時私から出される精子はもちろん鉄男君のものが大多数だ。間違いなく鉄男君の精子とお前の卵子の子供がお前のお腹にできるのだよ」
私はあまりの突飛な話に言葉が出なかった。
それを理解するにしばらく時間がかかった。」
そう、たしかに、父の言葉を頭の中でもう一度繰り返した。
睾丸を移植すれば精子は産生され続ける。父の中でも精子は鉄男のものだ。それを私に入れれば。たしかに話の筋は通っている。話としては可能だが。

 でも私はその考えを頭の中で何度も反芻、だんだん失われていた源の力が蘇ってくるのを感じた。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み