第119話

文字数 1,115文字

「倫子、しばらくあっていないな、ちょっと合わせたい人がいるので今週末ぐらいに家に来てもらえないかな、ウナギ取るから」
もう用はないと言われてそれっきりになっていたのだが約1年ぶりに家に戻ってみるとそこに見慣れない女の人があかちゃんをだっこしていた。
「ただいま、え、こんにちは、初めまして」
「はじめまして、石田と申します。」背の高い、でも出産後なのだろうか何となくふっくらとした感じでとても髪の綺麗な女性だった。
「はじめまして、あの、私父の娘なのですけれど父はいますか」
「はい、承知しております。お父様はもうすぐおかえりになると思いますので、少しの間応接間でお待ちいただけますでしょうか」
私は今までは帰ったらまっすぐ居間に行っていたのだけれど、自分の家の応接間に通されるなどとは全く予想だにしていなかった。まして一体この石田という女性は誰なのだろうか、全く初めてみる顔だ。しかも赤ちゃん付き。赤ちゃん、嫌な予感が通り過ぎた。もしかして、まさか、そんなバカなことがあるわけが。
「お久しぶりですよね、お父様のところに来られるのは。」
「はい、いいえ、最近はほとんど交流していなかったものですから、ちょっと仕事とかたてこんでましたので、はい、すみません。であのう、私初めましてだと思うのですけれど」
そこへ父が帰ってきた。
「いや、ごめん、タイミングが悪かったな、ちょっとでなければいけなかったもので。
びっくりしたかな。知らない女性がいたから」
「はい、今この部屋に通されたところですわ」
「そうか。今日はこっちで話すか、確かに居間は赤ん坊のものがいっぱいだからな」
「ごめんなさい、散らかしてまして」
「まあ、座れや、およそ一年ぶりだな、元気か」
「はい、特別変わったことはありません、阪田さんと仲良くしています」
「それはよかった、もう鉄男君のことは昔物語になったかね」
「そういうわけではありません、今でも核が欲しいとは思っていますけれど現実にはなかなか不可能ですので仕方がないというのが正直な気持ちです」
「そうか、まあ、過ぎてしまったことは仕方がないということだろうけれど。今日は実はこっちからの話があるので読んだのだよ。まあびっくりしないで聞いて欲しいのだけれどこの半年実はここにいる方、石田祥子さんというのだけれど俺はこの人と住んでいるのだよ。それでもってこの子がつい先月生まれたというわけだ」
「えっ、これってパパの子ということ、つまり私の兄弟」
「まあ、そういうことだな、女の子だけれど」
「えっ、失礼ですけれど石田さん、おいくつですか、」
「32歳です、はい、ですのでお父様とは30歳離れております」

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