第76話

文字数 607文字

「確かに、そうだ、このことは確認済みだったな」
私はここで大きなため息をついた。
ガンベローニ、お願い、私の中のモヤモヤを消して。
私は本当に一途だった、口から思うより早く全てのことが吐き出されていく。
全ての手順が絵に描かれているように次々と頭の中に浮かんでそれが言葉になっていく。極めて鮮明な画像だ、どこにも曇りはない。
お父さま、今週末はご予定ありますか。
「いいや、幸いにも何もない、全く自由だ」
「わかりました。
では軽井沢のグランドホテルに部屋をとります。
私の名前で。
お父さまは金曜日の夜お仕事のあとそのまま軽井沢に行ってください。私も同じ頃に参ります。金曜日の夜はホテルのイタリアレストランで楽しみましょう、今はガンベローニの季節なのできっとそれが出てくるかもしれませんわ」
「ガンベローニって、それなんだね」
「まあ、それはいいの、どうでもいいこと。
で私はちょうどその頃がベストタイミングなのでその週末に事の実行をしましょう。金曜の夜から日曜の夜まで時間はたっぷりありますわ。
娘と父親ですから、誰に見られたところでどうということはありませんから」
父はゆっくり無言で頷いた。その顔にはあの当時の困ったような迷いはもうなかった。
父も決心をしっかりつけたようだった。
それからしばらくはとりとめのない話、どうしても鉄男のことに話題はなってしまうのだが、でも阪田さんの事は流石に話さなかった。
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