第10話

文字数 300文字

 実際音楽の前戯なしでセックスをしても何にも盛り上がらず、何にも得られず、とても気まずい白けた空気が支配するだけだった。

 たいていのことにはそれほど頓着しない鉄男であったが、このときは素早かった。
直ちに施工会社に電話をかけてマンションの一室を防音室に作り替えて貰った。
少なからず費用は掛かったが、私たちには絶対他のことには代えられない最重要事項だ。出来上がるまでの三週間がとても長かった。お預けを食った犬のようで日増しに不機嫌になっていくのが自分でよく分かった。
晴れて自分の部屋で気兼ねなく自分たちだけの世界に浸れた時の幸せ感は、ほかの何もいらないこれだけで十分だと改めて二人で確認した。
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