第8話

文字数 510文字

 そしてハワイの夜の二人の合奏が始まった、曲は例のシェーヌ作曲の 協奏曲 トランペット・コンチェルト。
この瞬間、私ははっきりとわかった、欲求不満の理由が、これだ、この一体感、体の奥で感じる一体感、体の奥の奥でそれは一週間ぶりの快感だった。
本当にとろけるような快感。あの結婚式の演奏以来だ。
私は大手を広げて夫のペットの波に漂った。これ、これだ、やはりこれがないとダメ、これなしではやっていけない体になってしまっているのだ。

 親切なバンドリーダーの計らいでさらに三曲続けて演奏を披露した。
飛び入りにもかかわらずフロアーのお客さんも大歓迎してくれ、私たちには忘れられない演奏会になった。
アンサンブルは本当に相手を選ぶ。同じ曲を合わせてもその微妙なタッチの違いで全く気分が乗らなくなったりもするとてもデリケートなものだ。
だからこの彼との根本がぴったり合っている感、これはものすごく大事、めったに得られるものではない。
合わせるたびに彼への信頼が膨らんでいく。私の居場所はここなのだと。合わさって次から次へと生まれてくる波に漂っていた。
二人の間にたとえ何かの諍いがあっても合わさればすべては解消していった。

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