第97話

文字数 506文字

 父と別れた帰り道、あらためて今の状況を考えてみた。
鉄男の子供と阪田さん。
阪田さんはまだおなかの子供の父親は単純に自分だと信じている。
だから純粋におなかの子の父親として私を扱ってくれている。
でももし本当のことがばれたら、果たして阪田さんは今まで通りでいてくれるだろうか。離れていくのだろうか。それは離れていくだろう。
それはそうだよ。他人の子供を孕んでいる女なんて興味の対象じゃあ無い。
その時、倫子、お前それで平気か。
阪田さんと別れてそれでもがんばって鉄男の子供を産む勇気があるか。
確かに、前はそうだった、なんとしても鉄男が大事、一生鉄男と一緒にいたいそれはその通り。
でも実際鉄男のいない日々がこうして積み重なっていくと、そして阪田さんとの素晴らしい日が積み重なっていくと、何となくもう自信がなくなってきた。
もしこれがすべてが阪田さんとの結果であったとしたら、鉄男はひそかに私の中にしまっておいて、勝手な言い方だけれど鉄男とのことがあってその上で乗り越えた私が阪田さんと付き合って阪田さんと世界を築いてきたとしたら、確かにもっと簡単、すっきり、もっと単純に幸せなのかもしれない、何も無考えに。
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