怪奇、血の滴る地獄の七丁目/4,誓意

文字数 621文字

 全治2週間の診断
 待望の給料日、クリスマス前夜をあと3日というところで断念した俺は脱水症状が酷く点滴を余儀なくされた入院生活。心電図の定期的な音が邪魔なのと、鎮痛剤が切れたら恐ろしく病んで眠れない。高熱と痛みに対する恐怖に苦しみながら打ち震える俺の横で、玲音が剥いた果物を食べる男、青輝丸の憎らしいこと。

 「おい、指まで食ってるぞ」 聞こえてるのに無視

 タチの悪さを存分に発揮するこの男が新たなお目付け役。
 社長はどこまでも陰謀を張り巡らせ、俺と玲音を引き離す気でいる。益々もって悪意を抱かずにはいられない。絶対安静に付きお見舞いお断りだってのに…
 室内でバニラ香の爆煙を噴かす、青輝丸。
 尻を触られて困った顔する、玲音。
 そして、居なくてもいい男ワーストワン歌舞伎青嵐(仕事しろ)に毒される病室。
 検温で看護師が入ってくればあくどい悪戯をされ、制服が脱げた状態で廊下に飛び出る姿をもう何度見送ったことか。ああ、早く元気になりたい。

 もうすぐクリスマスなのに…焦燥感。
 幾ら嘆いても時間は戻らない
 刻ときは未来に進みながら、やがて訪れる真実に俺は辿り着く。
 だけど、俺はいつまでも信じていたい
 玲音と過ごした時間
 慈しみの優しい言葉が「嘘」ではなかったことを
 最初で最後の「恋」だった。
 巡る季節を過ごす
 未来の俺がそれを証明してくれることを願わずにいられない。

 数日後
 松葉杖を投げ捨てホームで泣きじゃくる、俺に起きた事実を語るとしよう。
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