第9話「人のウワサも75日」
文字数 2,209文字
思うに、体育大会などというものは、運動系生徒の為にある。
だってせんせー達の会話でも
「うち文科系多いからね~!」とか平気でいってんじゃん。
参加することに意義があるとか、必要ありません。
17にもなれば、自分の向き不向きくらい知ってるって。
あー、憂鬱な一日。
――――――――――
5月30日 14:30 グラウンド
体育大会、午後の部。
柔軟体操で歳をとったことを実感した後、オレは数少ない、自分が出る競技に向かう。
本大会唯一のおちゃらけ競技、部活対抗、障害物持参リレー。
障害物…となるような、部の特色溢れるバトンをつなぎゴールを目指す。
だれ? こんなん考えたバカは!
しかも!4人の選手のうち、後から走るヤツがだんだん長く走る変則ルール。
アンカーは部長と指定されている!ふざけんな!
アンカーは1っ週走る!ふざけんな!
――――――――――
アホな競技が始まった!総合得点に関係ないので、会場全体が気楽モード。
「マコ、がんばれ~!笑いをとれ~!!」
いらない。そんな応援いらない。
トップのバスケ部が、ドリブルしながら通り過ぎる。
早えよ。なんかずるいよ!
2位、ハードル持った陸上部。
お疲れ。
3位、ヘディングのみで進むサッカー部。
ちょっと惚れた。
4位、タイヤを腰につないだ野球部。
何か、聞いた事あるぞ。
5位、ラケットに球のせてスプーンリレーやってる卓球部。
6位…7位…8位…
運動部がすべてオレの前を通り過ぎた。
9位と10位と11位がほぼ同時に来た!
9位、譜面台を持って走る吹奏楽部。重そうだが、奴らは半分、運動部である!
10位、キタ、我が美術部、持っているのは画板。空気抵抗最高。もっと強く反対しとけば…!
悔やまれる!ミーティングで折れたオレが憎い!
11位、校長先生を背負って走る、五呂久!
何だろう、あんたには負けたくない!
「マコ、頼んだ!ウケ取ってね!!」
ユキジがきらりと汗を光らせ、魅力的な笑顔で、画板をオレに託す。
今のはどっちの意味だ!?受け取るのか!?ウケを狙えと言うのか!?
ユキジなら有り得る!!
画板を抱え、オレは走り出す。なにこの強烈な抵抗は!なんて理不尽な!
五呂久がオレに並んできた!
いやだー五呂久に負けるのは嫌だあ~!
なぜか沸き立つ闘争心!
しかし、校長を背負ってフラフラとはいえ、五呂久は知る限り、沖縄でばっちり見ちゃった限り、細いけど筋肉質!音楽教師の癖にちくしょー!
しばし、オレと五呂久は並走する!
「ふ、バカだなマコよ!それでは俺には勝てん!」
「なだとおおお!?ぜえぜえ」
「貴様の画板が、ぜえぜえ、命取りよ!真正面に抱えているのが貴様の敗因だ!」
あ、そっか。横持ちしよ。アホだった。
オレは急速に楽になった空気抵抗で加速した。
「むむ、校長先生!こちらも全力で行きますよ!?」
「何をする気だね!五呂久くん!?」
「背負っていては走りにくいんです!お姫様抱っこで行きましょう!!」
「それは辞めたまえ!! やー めー ろー!!」
何故か、オレの後ろに笑いが集中している様に思うが、何とか五呂久に抜かれずにゴールにたどり着いた!!
マコ―!!まこー!!せんぱーい!! 友と後輩に喝采を浴びるオレ。
何とか面目は守ったあ。そして、振り返ったオレは奇妙な光景を見た。
校長をお姫様抱っこしながらゴールするイケメンという世にも不思議な絵面だった。
うん、一生忘れない。
――――――――
グラウンドの水飲み場。水筒を補充すべくオレは勢いよく蛇口をひねる。
あー、疲れた。でも勝った。いえーい。
「ふう、やられたぜマコ。」
この声。五呂久。
「…敵に塩を送っても、勝ちは勝ちだもんね!へへーん!」
ちぇ、本当はわかってるよ。勝ちは譲って、笑いをとったんでしょ?
…いや、違うな。五呂久は本気で走ったんだろうな。アドバイスの後。そういうヤツ。
そういう所、き、嫌いじゃないよオレ…。
「ふ、それでもマコになら勝てるはずだったんだがな! 思ったよりオマエの空気…」
「…………」
「今なんて言おうとしたぁ!?」
「お前の空気感が、勝者のオーラが出ていたなと!」
「嘘つけオラアー!!空気抵抗って言おうとしたろオオオ!?」
オレは五呂久の背中を全力で5,6っ発引っぱたいた。
「オ、オレはまだ成長中なんだからな!!今に見てろコラア!」
五呂久は器具室に逃げて行った!
周囲からは、「五呂久せんせいまたマコに怒られてるよ~仲いいね~」とか聞こえていたが、断言する!今のだけは絶対違うからな!バカやろー!!
――――――――――
帰りのHR。
さて、疲れ切ったオレたちだが、こんな時にも普段はやたら元気なはずの五呂久は何故か微妙な笑顔だった。
「みんな、いいいか!?」
「アダ名は相手を傷つけないモノであるように心がけよう!みんな大人だからな!頼むぞ!」
ん?語録じゃねえなー。何が言いたいのか謎だ。
帰り道で、その謎はすぐに解けた。
校長はこの日から暫く、「姫」と呼ばれる羽目になった。オレも呼ぼうっと。
さて、これは後から知った話。
「キミのおかげでエライ恥をかいたよ、五呂久くん!考えたまえ!!校長に恥をかかせて楽しいのかね!!」
職員室で五呂久は怒られていたらしいけど、周りの先生は皆笑っていたという。
「校長先生!」
キタ。と多分校長も思っただろう。職員室の先生方も思っただろう。
「人のアダ名も七十五日ですよ!!」
「75日間も姫と呼ばれるのかねワシはぁ!?」
だってせんせー達の会話でも
「うち文科系多いからね~!」とか平気でいってんじゃん。
参加することに意義があるとか、必要ありません。
17にもなれば、自分の向き不向きくらい知ってるって。
あー、憂鬱な一日。
――――――――――
5月30日 14:30 グラウンド
体育大会、午後の部。
柔軟体操で歳をとったことを実感した後、オレは数少ない、自分が出る競技に向かう。
本大会唯一のおちゃらけ競技、部活対抗、障害物持参リレー。
障害物…となるような、部の特色溢れるバトンをつなぎゴールを目指す。
だれ? こんなん考えたバカは!
しかも!4人の選手のうち、後から走るヤツがだんだん長く走る変則ルール。
アンカーは部長と指定されている!ふざけんな!
アンカーは1っ週走る!ふざけんな!
――――――――――
アホな競技が始まった!総合得点に関係ないので、会場全体が気楽モード。
「マコ、がんばれ~!笑いをとれ~!!」
いらない。そんな応援いらない。
トップのバスケ部が、ドリブルしながら通り過ぎる。
早えよ。なんかずるいよ!
2位、ハードル持った陸上部。
お疲れ。
3位、ヘディングのみで進むサッカー部。
ちょっと惚れた。
4位、タイヤを腰につないだ野球部。
何か、聞いた事あるぞ。
5位、ラケットに球のせてスプーンリレーやってる卓球部。
6位…7位…8位…
運動部がすべてオレの前を通り過ぎた。
9位と10位と11位がほぼ同時に来た!
9位、譜面台を持って走る吹奏楽部。重そうだが、奴らは半分、運動部である!
10位、キタ、我が美術部、持っているのは画板。空気抵抗最高。もっと強く反対しとけば…!
悔やまれる!ミーティングで折れたオレが憎い!
11位、校長先生を背負って走る、五呂久!
何だろう、あんたには負けたくない!
「マコ、頼んだ!ウケ取ってね!!」
ユキジがきらりと汗を光らせ、魅力的な笑顔で、画板をオレに託す。
今のはどっちの意味だ!?受け取るのか!?ウケを狙えと言うのか!?
ユキジなら有り得る!!
画板を抱え、オレは走り出す。なにこの強烈な抵抗は!なんて理不尽な!
五呂久がオレに並んできた!
いやだー五呂久に負けるのは嫌だあ~!
なぜか沸き立つ闘争心!
しかし、校長を背負ってフラフラとはいえ、五呂久は知る限り、沖縄でばっちり見ちゃった限り、細いけど筋肉質!音楽教師の癖にちくしょー!
しばし、オレと五呂久は並走する!
「ふ、バカだなマコよ!それでは俺には勝てん!」
「なだとおおお!?ぜえぜえ」
「貴様の画板が、ぜえぜえ、命取りよ!真正面に抱えているのが貴様の敗因だ!」
あ、そっか。横持ちしよ。アホだった。
オレは急速に楽になった空気抵抗で加速した。
「むむ、校長先生!こちらも全力で行きますよ!?」
「何をする気だね!五呂久くん!?」
「背負っていては走りにくいんです!お姫様抱っこで行きましょう!!」
「それは辞めたまえ!! やー めー ろー!!」
何故か、オレの後ろに笑いが集中している様に思うが、何とか五呂久に抜かれずにゴールにたどり着いた!!
マコ―!!まこー!!せんぱーい!! 友と後輩に喝采を浴びるオレ。
何とか面目は守ったあ。そして、振り返ったオレは奇妙な光景を見た。
校長をお姫様抱っこしながらゴールするイケメンという世にも不思議な絵面だった。
うん、一生忘れない。
――――――――
グラウンドの水飲み場。水筒を補充すべくオレは勢いよく蛇口をひねる。
あー、疲れた。でも勝った。いえーい。
「ふう、やられたぜマコ。」
この声。五呂久。
「…敵に塩を送っても、勝ちは勝ちだもんね!へへーん!」
ちぇ、本当はわかってるよ。勝ちは譲って、笑いをとったんでしょ?
…いや、違うな。五呂久は本気で走ったんだろうな。アドバイスの後。そういうヤツ。
そういう所、き、嫌いじゃないよオレ…。
「ふ、それでもマコになら勝てるはずだったんだがな! 思ったよりオマエの空気…」
「…………」
「今なんて言おうとしたぁ!?」
「お前の空気感が、勝者のオーラが出ていたなと!」
「嘘つけオラアー!!空気抵抗って言おうとしたろオオオ!?」
オレは五呂久の背中を全力で5,6っ発引っぱたいた。
「オ、オレはまだ成長中なんだからな!!今に見てろコラア!」
五呂久は器具室に逃げて行った!
周囲からは、「五呂久せんせいまたマコに怒られてるよ~仲いいね~」とか聞こえていたが、断言する!今のだけは絶対違うからな!バカやろー!!
――――――――――
帰りのHR。
さて、疲れ切ったオレたちだが、こんな時にも普段はやたら元気なはずの五呂久は何故か微妙な笑顔だった。
「みんな、いいいか!?」
「アダ名は相手を傷つけないモノであるように心がけよう!みんな大人だからな!頼むぞ!」
ん?語録じゃねえなー。何が言いたいのか謎だ。
帰り道で、その謎はすぐに解けた。
校長はこの日から暫く、「姫」と呼ばれる羽目になった。オレも呼ぼうっと。
さて、これは後から知った話。
「キミのおかげでエライ恥をかいたよ、五呂久くん!考えたまえ!!校長に恥をかかせて楽しいのかね!!」
職員室で五呂久は怒られていたらしいけど、周りの先生は皆笑っていたという。
「校長先生!」
キタ。と多分校長も思っただろう。職員室の先生方も思っただろう。
「人のアダ名も七十五日ですよ!!」
「75日間も姫と呼ばれるのかねワシはぁ!?」