第13話<謀略のユキジ>
文字数 1,993文字
私、笹尾雪路。美術部副部長。通称ユキジまたはユッキ。
が、心を込めてセッティングしました。我が親友、部長マコちんの為。
私たちは、夏休みに入りました。
友達と連絡を取り合うのとは勝手が違い、学校の先生と休み中に鉢合わせする確率はずっと低くなります。
偶然の出会いをセッティングしなければなりません。
…いいのです、本人が判らなければ偶然です。
マコは必死に否定していますが、実は、レストラン「ちょっぴり・ピンキー」であの娘の笑顔を見てしまった私としては、確かめたいことがあります。背中を押したい気もします。
7月29日 19:00 お祭り会場 たこ焼き屋台前
苦労した。すっごく。
先生たちの、お祭り<見回り当番表>を、職員室チェックで確認し(堂々と貼ってある)。
マコをこの時間に誘い出し。
自転車のカギをこの辺で落とした!と嘘ついて五呂久せんせえをここに固定。(ごめんね)
「私たち自転車置き場見てくるから、マコとせんせえ、ここをもう少し探してて!」
と、返事を待たず走り出し。
んで、今に至る。が、実は私は、二人のすぐ近くの木の陰に居る。
勿論、撮影している。
頑張れマコ、約束通り浴衣で来たね! すっごく可愛いよ!
あんた、そうやってれば美少女なの!
ガサツな言動と、落ち着きのなさと、背の低さとぺったんこが無ければ、アイドルだって目指せるよ!
頑張れマコ!頑張れな、マコ!頑張れナマコ!
あんたみたいな海産物でも禁断の恋はゲットできる!
ああ、落ち着け、私。
時間だ!ここで、駐輪場に居るはずの<私>から電話だ。
<先生、ごめーん!ゆいちゃん(後輩)のカギ自転車についてましたぁ!今から戻るね! あ、せんせ、今の時間へんなの居るし、私たち行くまでマコについててあげてね!>
ぷちっ。おし、完了。
さぁ、見せてもらおうか。 二人っきりでどうなるのかを!!
ヤレヤレと顔を見合わせる二人。
「そういえばお前、今日は随分着飾ってきたなぁ。似合うじゃないか…。」
良いぞ!よいぞ五呂久せんせ!!
マコのオーラが<ドキドキ>だよ!! 私思うに!
「ば、馬鹿じゃねえ?」 マコ赤くなってる。
「似合うな…浴衣。座敷童みたいで。」
アホ!
アホかアンタ!!
マコのオーラが<怒気怒気>に変化したよ!!
「おじさん、たこ焼き一つ。」
マコの反応スルーだよ!人でなしだよ!!
「ほい、マコ。一緒に食うか?」
わお、食べ物で釣る気!? マコは食べ物に弱いんだよ!! しかも一緒にって!
「さっきからカギ探して屋台グルグル回ってばかりで…はっきり言って迷惑かけただろうからな、たこ焼き屋さんに。」
「そ、そうだね、じゃぁ頂きます」
ふふ、マコ嬉しそうじゃん!
「お前…多分、日本一たこ焼き食うのが似合う女だな。」
五呂久せんせ!!言って良いことと、言って良いことがある!
「なにか、オレを食欲の権化かなんかだと思ってないか?」
「そこはひとつ、美味しそうに食べて、人を幸せにする才能と言っておこう」
「ナニソレ?褒めてんの?ディスってんの?」
「褒めてるぞ?多分な。」
「いつもディスるクセに。意地悪するクセに。」
「お前、からかい易いからな~。からかわれるために生まれてきたような奴だよな。」
「それディスってるよね!?」
「何を言う。ディスるってのは相手を下げようとする能動的な行為だろう。オレがやってんのは小粋な意地悪だ!」
キタ…。(ユキジ)
「キタ…。」(マコ)
「ほら、小学校の男の子は良く女の子をからかっ………」
五呂久先生は、言いかけて、やめる。
「………」
「………」
ここから見えるのはマコの後ろ姿。急に下を向いたあの子は、今どんな顔しているんだろ。
例えを誤った五呂久せんせいの言葉に。何を思っただろう。
だって、小学校の男の子が意地悪する女の子って。よく聞くのは…好きな子に…。
…まぁ、五呂久せんせーは常に生徒をからかってるんだけど。
「オレはなぁ!」
(またキタ)
「人に意地悪すんのが大好きなんだよ!!」
…なに言ってんのこの人!?
――――――――――
8:45 祭りの後で、後の祭り。
自転車組の子たちと分かれ、歩き。 私と、マコの二人。
「ねぇ、ゴクツマ?」
「ユキジ…つぎ、その名を呼んだら殴る。」
はいはいはい…。(姫はやめとこっと。)
多分、他人が聞いても果てしなくくだらない話題で、笑いあいながら、私たちは歩く。
「ねえ、マコ、今日は楽しかった?」
「何、ママみたいなこと聞いてんの?」
マコは一呼吸おいてから、
「楽しかった…うん、サイコーに。」って言った。
はぁ。少し下を向いて、伏し目がちに夢見るようなその横顔で、私の疑惑は確信に変わっちゃった。わかっちゃった。
そんな顔もするんだね。11年の友達付き合いで初めてみるよ。
私は大好きなマコの一番の味方、ユキジ!
なら、絶対に叶えて見せる。私の全力で後押ししてあげる!!
本日のオペレーション、作戦名「ほ○いとべりぃ」、完了!!
が、心を込めてセッティングしました。我が親友、部長マコちんの為。
私たちは、夏休みに入りました。
友達と連絡を取り合うのとは勝手が違い、学校の先生と休み中に鉢合わせする確率はずっと低くなります。
偶然の出会いをセッティングしなければなりません。
…いいのです、本人が判らなければ偶然です。
マコは必死に否定していますが、実は、レストラン「ちょっぴり・ピンキー」であの娘の笑顔を見てしまった私としては、確かめたいことがあります。背中を押したい気もします。
7月29日 19:00 お祭り会場 たこ焼き屋台前
苦労した。すっごく。
先生たちの、お祭り<見回り当番表>を、職員室チェックで確認し(堂々と貼ってある)。
マコをこの時間に誘い出し。
自転車のカギをこの辺で落とした!と嘘ついて五呂久せんせえをここに固定。(ごめんね)
「私たち自転車置き場見てくるから、マコとせんせえ、ここをもう少し探してて!」
と、返事を待たず走り出し。
んで、今に至る。が、実は私は、二人のすぐ近くの木の陰に居る。
勿論、撮影している。
頑張れマコ、約束通り浴衣で来たね! すっごく可愛いよ!
あんた、そうやってれば美少女なの!
ガサツな言動と、落ち着きのなさと、背の低さとぺったんこが無ければ、アイドルだって目指せるよ!
頑張れマコ!頑張れな、マコ!頑張れナマコ!
あんたみたいな海産物でも禁断の恋はゲットできる!
ああ、落ち着け、私。
時間だ!ここで、駐輪場に居るはずの<私>から電話だ。
<先生、ごめーん!ゆいちゃん(後輩)のカギ自転車についてましたぁ!今から戻るね! あ、せんせ、今の時間へんなの居るし、私たち行くまでマコについててあげてね!>
ぷちっ。おし、完了。
さぁ、見せてもらおうか。 二人っきりでどうなるのかを!!
ヤレヤレと顔を見合わせる二人。
「そういえばお前、今日は随分着飾ってきたなぁ。似合うじゃないか…。」
良いぞ!よいぞ五呂久せんせ!!
マコのオーラが<ドキドキ>だよ!! 私思うに!
「ば、馬鹿じゃねえ?」 マコ赤くなってる。
「似合うな…浴衣。座敷童みたいで。」
アホ!
アホかアンタ!!
マコのオーラが<怒気怒気>に変化したよ!!
「おじさん、たこ焼き一つ。」
マコの反応スルーだよ!人でなしだよ!!
「ほい、マコ。一緒に食うか?」
わお、食べ物で釣る気!? マコは食べ物に弱いんだよ!! しかも一緒にって!
「さっきからカギ探して屋台グルグル回ってばかりで…はっきり言って迷惑かけただろうからな、たこ焼き屋さんに。」
「そ、そうだね、じゃぁ頂きます」
ふふ、マコ嬉しそうじゃん!
「お前…多分、日本一たこ焼き食うのが似合う女だな。」
五呂久せんせ!!言って良いことと、言って良いことがある!
「なにか、オレを食欲の権化かなんかだと思ってないか?」
「そこはひとつ、美味しそうに食べて、人を幸せにする才能と言っておこう」
「ナニソレ?褒めてんの?ディスってんの?」
「褒めてるぞ?多分な。」
「いつもディスるクセに。意地悪するクセに。」
「お前、からかい易いからな~。からかわれるために生まれてきたような奴だよな。」
「それディスってるよね!?」
「何を言う。ディスるってのは相手を下げようとする能動的な行為だろう。オレがやってんのは小粋な意地悪だ!」
キタ…。(ユキジ)
「キタ…。」(マコ)
「ほら、小学校の男の子は良く女の子をからかっ………」
五呂久先生は、言いかけて、やめる。
「………」
「………」
ここから見えるのはマコの後ろ姿。急に下を向いたあの子は、今どんな顔しているんだろ。
例えを誤った五呂久せんせいの言葉に。何を思っただろう。
だって、小学校の男の子が意地悪する女の子って。よく聞くのは…好きな子に…。
…まぁ、五呂久せんせーは常に生徒をからかってるんだけど。
「オレはなぁ!」
(またキタ)
「人に意地悪すんのが大好きなんだよ!!」
…なに言ってんのこの人!?
――――――――――
8:45 祭りの後で、後の祭り。
自転車組の子たちと分かれ、歩き。 私と、マコの二人。
「ねぇ、ゴクツマ?」
「ユキジ…つぎ、その名を呼んだら殴る。」
はいはいはい…。(姫はやめとこっと。)
多分、他人が聞いても果てしなくくだらない話題で、笑いあいながら、私たちは歩く。
「ねえ、マコ、今日は楽しかった?」
「何、ママみたいなこと聞いてんの?」
マコは一呼吸おいてから、
「楽しかった…うん、サイコーに。」って言った。
はぁ。少し下を向いて、伏し目がちに夢見るようなその横顔で、私の疑惑は確信に変わっちゃった。わかっちゃった。
そんな顔もするんだね。11年の友達付き合いで初めてみるよ。
私は大好きなマコの一番の味方、ユキジ!
なら、絶対に叶えて見せる。私の全力で後押ししてあげる!!
本日のオペレーション、作戦名「ほ○いとべりぃ」、完了!!