第2話「人という字は支えあう?」

文字数 1,160文字

 世の中に、掃除が好きな男子はいない。断言する。

綺麗好きは居ても掃除好きは居ない!知らんけど。

回転ほーき2本。炉ぼーき1本、黒板消し1コ。

1班5、6人なので、2人は椅子運びの力仕事に回る。と、思うでしょ?

 ちなみに、うちの学校は、田舎ながらそれなりに進学校。ってことに、世間ではなってる。

つまり、一部のやっちまったな~。こじらせちまったな~。な生徒もちょっとは頭いい。
オレもだ。えらい。

 話がそれたけど、働きアリの法則ていうか、必ずサボるヤツが出てくる。

何度か文句は言った。黙ってるほどオレは大人しくない。

しかし、奴らは逃げてくのだ!

 ホーキを持って追いかけるとか、テンプレなことはできない。

したくない。めんどくさい。

でも、この日は違った。


 15:30 お掃除

 「マコ、また吉村逃げるよ!?」
(マコは俺のあだ名だ。本名はマコトだ!マコトでいいじゃん!何故お前らは2文字にしたがるのか。)

「どうせ言っても逃げるじゃん。ほっときなよ」

オレは教卓のプリントを整理しながら、吉村のことも、声をかけてきたマユ(世話好き系女子)の事も見もせず、言った。

 マユは、丁度、オレと背中合わせ的な位置に立っていた新任教師、五呂久先生に助けを求めた。どーせ無駄なのに。

「先生!吉村君がサボって逃げようしています!」

五呂久せんせーは、静かに吉村を見つめた。

「吉村君、君は<人>という字を知っているよな…?」

キタ!知ってるコレ!支えあうやつだよ!今日はまともか!?

ノート出さなきゃノート!!オレのせんせー語録ノート!

鞄に目を向けたオレに、五呂久せんせーは背中越しに、言った。

「わりぃ!ちょっと後ろから支えてみて!」

グえッ

五呂久せんせーは、何と急に、オレにもたれかかってきたのだ。

振り返ることもできなかったオレは、教卓に突っ伏す形で折れ曲がっている。

「吉村君!<人>という字はなぁ!」

「長い方が短い方を踏み台に楽して生きてんだ!」

ちげえだろ!今、オレ完全に折れ曲がってんだろ!

むしろ、斜体の K の方が近いし!

そんな日本社会の縮図みたいな話聞きたくないし!!

「吉村君」

せんせーは、人様によしかかりながら腕組をし(てたらしい)、

「長い方と短い方、どっちがいい?」

いや、そんなアホな質問いらんから早よどけ!

「な、長い方が良いです!」

吉村!普通に答えてんじゃねえ!!

「うん、先生もだ!」

うん!、もういい!どうでもいい!

「だから、犠牲になる人に感謝しないとな。サボるんだろ?吉村君。今、君がしているのはこういうことだ…。」

吉村、この異常な場面を見てつぶやく。

「お、おれ、こんなひでえことを…悪かったよ!」

まて、そんな憐みの目でオレを見るな!!みるなあああー!!


 こうして、わが生涯最大の恥ずかしいお掃除タイムは終わった。


明日の掃除は、絶対にサボろうと思う!
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み