第20話「二者コンに叫ぶ」

文字数 1,281文字

 11月。二者懇談だ。緊張するなぁ。

だって、ゴロクと二人だよ? 至近距離だよ?

どきどきしたらどうする? バレたらどうする?


 15:00、3-E教室。

 …って思ってたらさー。

ムカつく―!

何でそんな事務的な話なのさー!

何でオレが目の前なのに、もうちょい楽しい話題しないのさー!

いつもみたいに突っ込んでこないのー!?


 こんなの、ゴロクじゃない!

「総合芸術はいいと思うが。何故、絵画専攻やめたんだ?マコ?」

「だって…。」

あーつまんない! そんな真面目な話すんなよー!

…って無理なのは判ってるんだよー!仕事だもんー!

「せんせいとしてはなぁ~」

かちーん。なんかわかんないけど、かちーん。

「ごろくんとしては?」

「はい?」

「ゴロくんとしては、どう思うの?」

「オマエ何言ってん…」

「普段オレを散々バカにして、からかってくるゴロクんとしての意見が聞きたいの!」

 あー、オレ何言ってん!?

気持ちが先走っちゃって。何、拗ねてんのオレ!?

「無責任でいいから言ってみてよ…」


 ふう、とため息をつくゴロク。

「お前の画力とかが本物かどうか何て俺には分からん。上手なのは知ってる。でもプロになるような奴らと、どう違うかは判らない。」

あ、ゴロクだ…。

「お前は人を集めるし、可愛い…とも言われるだろうし、人前にでる仕事もいいだろう。話す仕事もいいだろう。話し方を変えられたらの話な!」

 かわいい…かわいい…かわいい…かわいい…

やべ!赤くなる!だめ!赤くなるな!

「ででで、なら、どんな事がオレには向いてると思う?」

「………絵以外なら…」

「何!?」

考え込む、ゴロク。

「食レポ…とか!?」

…志ネ。


 「ま、決めなきゃならん訳でもない。総合から専攻へ移る手段もあるだろう。迷ってるけど芸術に関わりたいなら、そういう選択もアリだな。先延ばしも悪い事じゃない。」

「…ごろくんは、音楽諦めたの?」

「俺は今も音楽に関わってるし、歌ってる。ついでに、お前みたいな…変なのとも出会って、教えるのも結構好きだ。後悔はしていない。」

変は余計として。

「そっか。」

「俺の音楽も、お前の絵も。人に見せたいと思ったらいろんな方法があるじゃないか。総合。悪くないと俺は思うよ。マコ。」

「そっか…ありがと…ごろくん」

「それ、そろそろ辞めろ。」

「ありがと…ゴロク…せんせい。」


 失礼しました~。

教室の入り口で礼。まぁこれはTKO。

教室から出たら、目の前に、次の懇談の美月。

「…フツー、二者コンで、あんな風に大声出す??」

「え?大声??オレ?」

「うん、まるで夫婦ゲンカ。さすがゴクツマ。」

「き、聞こえてた?」

「いや、内容まではわかんなかったけど…ちょっと…? 聞かれたら困る内容なワケ?」

「ち、ちが! 進路話しただけ!」


 「進路ねえ…マコ。進路ってのはねえ!」

学級代表語録!?

「進路相談ってのは、将来を相談することだよ!」

「…いや、それ、まんまですけど…?」

「…ん~、じゃあマコ、ゴロクと2人で「将来」について相談したんだ~。へぇ。応援してるね、マコ。じゃ、行くわ~。」


 その理屈じゃ、オマエも、ってことになるだろうがぁ!

…美月。お前も志ネ。
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